2017 Fiscal Year Research-status Report
アルコール化合物を用いる発泡フェノール樹脂材料の再資源化
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16K05862
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
多賀谷 英幸 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (10154931)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 発泡フェノール樹脂 / 加溶媒分解 / 脂肪族アルコール / 再資源化 |
Outline of Annual Research Achievements |
発泡フェノール樹脂材料は、熱硬化性のフェノール樹脂を構成素材としており、高い耐熱・断熱性と優れた機械的強度を有している。さらに発泡体として空孔容積が高くて軽く、成形性も高いため、近年建材用部材として広く用いられるようになった。今後耐用年数の過ぎた廃有機資源として大量に排出されることが予想されるが、その高い物理的・化学的安定性のため、廃棄された後の再利用法は確立されていない。 これまでフェノール樹脂の液相分解反応について炭素-炭素結合の開裂から進行する分解反応について知見を得てきたが、発泡フェノール樹脂中には添加剤として可塑剤等の添加剤が含まれている。本研究ではそれらの特性を明らかにして分離・回収を試みるとともに、アルコール化合物などを溶剤に用い、従来のプラスチック化学リサイクル法に比べて比較的温和な条件での分解反応を試みた。その際、分解反応機構を明確にする目的でフェノール樹脂の反応に関与すると考えられるエーテル結合を有するモデル化合物の加溶媒分解反応を検討し、可溶化反応における化学的・物理的機構を提案して効果的な再資源化を可能とする溶剤について知見を得た。 本研究における廃発泡フェノール樹脂処理法は、従来の高温熱分解法よりも比較的温和な条件での液相処理で発泡フェノール樹脂の大量再資源化を可能とするものであり、資源化効率や経済性が充たされれば焼却や埋め立てに頼らない発泡フェノール樹脂の再資源化法プロセスとして確立できることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発泡フェノール樹脂からなる廃建材部材を粉末化し、熱的性質などを明らかにして単体の熱分解特性を明らかにすると共に、ソックスレー抽出や高温流体を用いた溶剤処理を行い、可塑剤等の添加物の抽出条件を明らかにした。さらに添加剤を抽出した後の樹脂を対象とした液相反応を試みた。この液相反応においては、従来法である400℃前後の熱分解反応に加え、炭素―炭素共有結合の開裂(分解反応)が起こりにくい350℃までの比較的温和な条件を設定した。反応においては顕著な溶剤効果が見られ、また250℃程度の温度でも可溶化が進行することが明らかになった。ラジカルを安定化できるような水素供与性溶剤を用いた反応においては、明確な水素供与反応は確認できず、また脂肪族アルコール中の反応において最適な炭素鎖の長さが確認された。これらの比較的低い反応温度における分解反応は、溶剤による加溶媒分解反応の進行を示唆していることが明らかになった。 これまでのアルコール類を用いた温和な条件における架橋結合の切断機構を明らかにするため、フェノール樹脂中に含まれると考えられる架橋結合と同様な結合を有するモデル化合物について検討を行ったが、モデル化合物の反応性の検討においては、反応温度等の条件の設定が重要であることが明確になった。
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Strategy for Future Research Activity |
28、29年度に引き続いて高温流体を用いた可塑剤の抽出条件の確立と熱硬化性樹脂である発泡フェノール樹脂架橋部分を切断する条件の明確化を行う。具体的には(1)可塑剤等の添加剤を抽出した後の発泡フェノール樹脂を対象とし、モデル化合物の反応結果を参考に、300℃までの温和な条件での加熱処理を試み、反応機構を明確にする。(2)モデル化合物の反応結果から、樹脂と溶剤の相溶性が反応の効率性に関係していることが分かったことから、架橋結合の切断の促進を目指し、異なる作用を有する溶剤を混合して、より効果的に反応が進行する溶剤の選定と最適な反応条件を確定する。(3)廃樹脂を成形時に添加することでスラー粘性が高くなることが明らかになったため、高温流体で処理して得られた樹脂を用いてスラリー原料を調整し、発泡成形への適用性を明らかにする。さらに(4)これまでよりも大きな2Lオートクレーブを用いて反応のスケールアップを試み、装置特性や反応条件の生成物へ与える影響の定量化を試みる。
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Research Products
(4 results)