2018 Fiscal Year Research-status Report
環境調和型プロセスによる植物バイオマス由来炭素繊維の開発
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16K05863
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
石井 大輔 東京農業大学, 生命科学部, 准教授 (70415074)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | バイオマスプラスチック / 芳香族ポリエステル / ポリカフェ酸 / 溶融紡糸繊維 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は単独重合による分子量向上のための条件検討を行って得られた、分子量4万9千のポリカフェ酸に関して、溶融紡糸による繊維化のための条件検討を実施した。(1)炉体および押出口の温度(2)押出口と巻き取りローラー間の距離(3)ローラーによる繊維の巻取速度のそれぞれに関して最適化を行い、炉体および押出口温度:それぞれ200℃、押出口と巻き取りローラー間の距離:2cm、巻取速度:毎分10mという条件の下で、ポリカフェ酸の連続紡糸に成功した。 得られた繊維は直径約240マイクロメートルで、金色の光沢を有するものであった。強度試験を行った結果、引張弾性率が1.3GPa、破断強度が53MPa、破断伸びが5%であった。破断伸びについては市販の熱可塑性芳香族ポリエステルであるポリエチレンナフトエートと同様の値であったが、弾性率と強度についてはなお改善の余地を有するものであった。この原因を調べるためポリカフェ酸繊維のX線回折測定を行ったところ、繊維内部での分子の配向の程度がなお低い段階にとどまっているためであることが明らかとなった。これを改善するため、ポリカフェ酸の軟化温度より少し低い温度である90℃における熱処理を行ったところ、弾性率は2.0GPaと向上が見られたが、破断伸びは4%と逆に低下した。また破断強度は51MPaとほぼ変化しなかった。これは熱処理による結晶化度の増大を反映していると考えられるが、高強度化につながる分子配向の増大のためには、溶融状態からの紡糸時において高い分子配向を形成させることが必要であることも同時に明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
炭素繊維前駆体として十分な強度と弾性率を示すポリカフェ酸繊維の作製条件検討に時間を要しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は炭素繊維前駆体として用いるために十分高い弾性率と強度(それぞれ10GPaおよび300MPaを目標値とする)を示すポリカフェ酸繊維の作成のため、紡糸条件の更なる最適化や、紡糸後の熱処理による構造制御や化学架橋導入に取り組む。
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Causes of Carryover |
本課題の最終目標であるバイオマス由来炭素繊維の開発のため、前駆体として得られたポリカフェ酸溶融紡糸繊維の更なる物性向上のための条件検討を行う必要があるため。次年度繰越分の基金は、上記の条件検討のための消耗品(試薬および器具)購入および、得られた成果に関する学会発表および学術雑誌論文発表のための費用として用いる予定である。
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