2016 Fiscal Year Research-status Report
味蕾細胞モデルを模したVOCセンサーシステムの開発
Project/Area Number |
16K05869
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
中村 修 九州工業大学, 安全衛生推進室, 准教授 (00400466)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立野 勝巳 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 准教授 (00346868)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 揮発性有機溶剤 / ノイズ同期 / 確率共鳴 / 化学センサー / リアルタイム計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロジェクト1-1で予定していた印刷作業場の追加調査は日程の都合上の理由で延期した.H29年度に実施するよう計画している. プロジェクト2-1として,神経モデル素子の非線形特性を有したままで単純化することを目標としていたが,まず,現行モデルの詳細な特性を明らかにした.神経モデル素子から成る出力部から発せられる2つの出力波の周期性と同期率を確かめた.同期が確認され,その同期率はランダムパルス入力においてはガンマ分布の形状母数に依存した.周期パルス入力では同期率は低かった.ランダムパルスと周期パルスの混合波を入力すると,同期率が著しく向上するNoise induced synchronizationの挙動を示した.同時に確率共鳴現象も観察された.これらの非線形特性の一部は国際会議NCSP'17およびICCCS2016において発表した.しかし,Noise-induced synchronizationと確率共鳴現象に同時に起こす簡易神経モデルとして現行モデルと同じ分岐特性を持つCanonicalモデルを検討したが,再現しなかった. そこで,プロジェクト1-2と位置づけていた研究を先行して進めた.半導体ガスセンサーの抵抗変化を電圧の変化として記録する受容部アナログ回路を作製し,エタノールガス濃度とノルマルヘキサンガス濃度を記録した.メタン用とアルコール用の半導体ガスセンサーを用いることにより,エタノールガスとノルマルヘキサンガスの混合ガス濃度の推定実験を行い,適用できる濃度範囲に制約はあるが、ガス種ごとに濃度を推定できることを確認した。成果の一部は,国際会議SAES2016において発表した.神経モデル素子の簡約化はH29年度に引き続き取り組む.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
以下の理由により,やや遅れていると判断した. プロジェクト1-1を延期したことと,プロジェクト2-1の目標であるモデルの簡約化までは至らなかった.これらは遅れていると考える.その一方で,プロジェクト2-1において現行モデルの詳細な特性を明らかにした.加えて先行してプロジェクト1-2を実施し,特性の異なる複数のセンサーを同時に用いてそれらの出力を演算することで,推定可能な有機溶剤の気中濃度範囲を明らかにした.これらの成果により,「やや遅れている.」と認識している. プロジェクト1-1を延期した理由は,日程の調整ができなかったためである.以前に調査を行った印刷業の作業場の追加調査を準備していた.印刷業では気象条件(特に湿度)が大きく品質に影響するため,追加調査でも同様の季節(9月下旬)に調査を行う必要があると考えた.しかし,平成28年度は前回調査時期の日程調整が難しい状態であったので延期した.
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度も前年度に引き続き,空気中の混合揮発性有機溶剤蒸気(VOC)を実測するプロジェクト1と数理神経モデルを用いた化学センサーシステム開発のプロジェクト2に分けて推進する.プロジェクト1では,H28年度に未実施であった「有機溶媒併用作業章における現地調査」(プロジェクト1-1)を確実に実施する.並行して,先行実施していた「受容部の電子回路作製およびVOC測定における波形挙動の確認」(プロジェクト1-2)を引き続き行い,回路の改良を試みる.複数の異なる市販の半導体式ガスセンサー素子と受容部電子回路を組み合わせ,混合VOCの測定実験を実施する.受容部電子回路の出力波形を記録し,ガス種ごとの気中濃度の推定解析を行う.電子回路の測定の安定性や精度を上げるため,回路設計を見直す.電子回路作製おいては、九州工業大学戸畑・若松技術部の支援を仰ぐ予定である. H28年度に引き続き,現行のHodgkin-Huxley型神経細胞モデルをアナログ回路に実装できる形まで,数理神経モデルを簡約することに取り組む予定である(プロジェクト2-1).数理神経モデルを簡約した後,その挙動を再現するようなアナログ神経細胞回路を作製する(プロジェクト2-2).アナログ神経細胞回路が数理神経モデルの挙動を再現することを確認した後,プロジェクト1-2で使用した市販の半導体センサーとアナログ神経細胞回路を組み合わせて,濃度応答特性を調べる実験を行い,出力神経パルス解析を行う.
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Causes of Carryover |
予算に繰り越しが生じた理由は旅費である.プロジェクト1-1の現地追加調査を延期したため.その旅費が使われなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度には現地追加調査を実施する予定.
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