2016 Fiscal Year Research-status Report
火山降灰微粒分の成分分析によるPM2.5発生源プロファイルの作成
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16K05870
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
大木 章 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (20127989)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 常憲 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (70284908)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 火山降灰 / 微粒分 / 無機元素成分 / PM2.5 / 発生源プロファイル |
Outline of Annual Research Achievements |
桜島が噴火したときに火山降灰を採取し、ふるい振とう器を用いて分級し、500-75、75-53、53-38、<38 μmの4種の粒子径に分級した。さらに細かい粒子径まで分級を行うことを試みたが、20 μm以下の微粒分は1%以下であった。平成28年度は桜島火山の噴火が少なく、十分な量の降灰試料を入手できなかったので、20 μm以下の微粒分の分析を行わず、上記4種に分級した試料について、分析を行った。 環境省水・大気環境局による「微小粒子状物質(PM2.5)の成分分析ガイドライン」に準じて、無機元素成分の分析を行った。本研究者らがすでに確立している条件を用いて、降灰試料のマイクロ波支援酸分解とICP-MS分析を行い、測定対象の元素について、全体試料における濃度と分級した試料における濃度との整合性を確認した。 分級した降灰試料の分析の結果、Se、Pb、Asなどのように微粒分ほど濃度が高くなる元素と、Mn、Co、Cr、Niなどのように濃度が粒子径にあまり依存しない元素が存在することがわかった。火山灰と同時に噴出する火山ガス中に含まれる元素を吸着する場合は、粒子径によって元素濃度が連続的に変化する。吸着に関与しない元素については、マグマ成分の濃度が反映するので、濃度は粒子径によらず一定である。粒子径別試料の分析において、試料および元素によっては、このような規則的な変化を示さず異常値が観測される場合があった。この現象が、単に分析値のバラツキによるものか、他の発生源由来の微粒子が混入しているためなのかを今後検討する。 以上の結果をもとに、無機元素成分についての桜島火山の暫定的発生源プロファイルを作成した。鹿児島市役所より平成28年度におけるPM2.5無機元素成分の分析結果を入手し、作成した暫定的発生源プロファイルを用いて、PM2.5発生源への火山寄与の可能性を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的には、以下の2項目を記している 1)桜島から噴出される火山降灰を採取し、ふるい法により分級することで微粒分を得る。降灰は広い粒子径分布をもち、粗粒分と微粒分では一部元素の組成が異なる可能性がある。得られた最小粒子径の画分(微粒分)について、環境省によるPM2.5成分分析ガイドライン(無機元素成分分析)に準じて分析することで、火山のPM2.5発生源プロファイルを作成する。 2)大気中よりPM2.5サンプラーで採取されたPM2.5粒子の発生源寄与率解析において、本プロファイルの有用性を検証する。 平成28年度は、1)において、粒子径別に分級した降灰試料中の無機元素成分分析法を確立した。また、元素によって微粒分ほど濃度が高くなる元素と、濃度が粒子径に依存しない元素があることを明らかにした。以上をふまえて、火山の暫定的なPM2.5発生源プロファイルを作成した。すなわち、平成28年度に計画した事項はほぼ達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
前述したように平成28年度は桜島の噴火が少なく、降灰試料を効果的に採取できなかった。しかしながら、桜島地下のマグマだまりは膨張が続いており、平成29年3月25日には8ヶ月ぶりに爆発的噴火を起こした。今後は噴火活動が活発化すると考えられるので、降灰試料を採取し、無機元素成分の分析を行い、火山の暫定的発生源プロファイルの改良を行う。もし、降灰試料が十分に採取できないときには、研究室に過去の降灰試料が保存してあるので、これらを用いて分析を行う。降灰への他発生源微粒子混入の識別法を確立し、明らかに混入が見られるときは、発生源プロファイルの作成における平均値算出の場合に除外する。 また、火山降灰への火山ガス酸性成分(亜硫酸ガス、塩化水素、フッ化水素など)の吸着も、降灰のキャラクタリゼーションに重要であることがわかってきたので、降灰試料に含まれる硫酸イオンや塩化物イオンなどのイオン成分の分析も行い、PM2.5発生源プロファイルに付け加える。 鹿児島市環境保全課において得られたPM2.5の成分分析結果について、通常の発生源プロファイル(自動車排ガス、重油燃焼、廃棄物焼却、海塩粒子、道路粉じん、ブレーキ粉じん等)に、本研究で作成した火山発生源プロファイルを追加して解析を行い、鹿児島市で観測されるPM2.5への桜島火山の寄与率を明らかにする。桜島の噴火規模とそのときに得られるPM2.5への火山寄与率との関係を検討し、本研究で作成した発生源プロファイルの有用性を検証する。
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Research Products
(1 results)