2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K05875
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
赤司 治夫 岡山理科大学, 付置研究所, 教授 (30221708)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 金属錯体触媒 / 酸化反応 / 酸化触媒 / ポルフィリン / クロリン / 糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,環境にやさしい水溶性の新しい酸化触媒を錯体化学の手法で創出することにある.このため,平成28年度は,第一に,ペンタフルオロフェニル基をもつポルフィリンおよびクロリンの誘導体と,これらの骨格に糖を連結することにより,水溶性を付与した,糖連結フッ素化ポルフィリンおよびクロリン誘導体を合成し,これらの化合物を配位子とする新規金属錯体を合成することを目標として研究を開始した.本年度の研究成果として,新たにアルミニウム,チタン,ガリウム,ニオブ,ルテニウムを骨格内に挿入した新しい錯体の合成に成功した.現在,これらの化合物の基礎的物性(光増感剤としての性能評価,触媒能の探索)を明らかにする研究を進めている. これらの研究を平行して,これまでの合成した一連の錯体を用いて,これらの錯体を触媒として応用することが可能な反応の探索を続けてきた.グルコースを連結したフッ素化クロリン誘導体を配位子とするマグネシウム錯体(Mg(TFPC)-SGlc)が1,5-ナフタレンジオールを酸化して,5-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノンを生成する反応の触媒として作用することを明らかにすることに成功している.この反応の詳細について検討を進めているところである.さらに,Mg(TFPC)-SGlcは,酸素のファインバブル存在下の水中で,リアクティブレッドなどの色素を分解することを発見した.この反応は,Mg(TFPC)-SGlcの光増感反応により発生した活性酸素種(主として一重項酸素)が色素を酸化分解する反応である. 一連の研究成果は,本研究の目的である環境調和型の新しい酸化触媒の開発をするために非常に重要な新規化合物の合成と,新しい反応の発見を含んでおり,これらの研究を進めることで目標を達成していくことができると考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究実績の概要に示したとおり,新しい金属元素(アルミニウム,チタン,ガリウム,ニオブ,ルテニウム)を含む,新規錯体の合成に成功し,基礎的な物性に加えて,光増感剤としての能力(一重項発生能)の評価を行うことができた.グルコースを連結したフッ素化クロリン誘導体を配位子とするマグネシウム錯体(Mg(TFPC)-SGlc)が,1,5-ナフタレンジオールを酸化して,5-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノンを生成する反応の触媒として作用することを明らかにすること,光増感反応により生成した一重項酸素を用いて,水溶液中で色素分解の反応を行うことができることを明らかにするなど,当初予定した研究成果を順調に積み重ねることができている.これらのことから,本研究課題の進捗状況をおおむね順調に進行しているものと評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究提案では,水系で酸化反応に適用可能な環境にやさしい金属錯体触媒の開発のための新しい金属錯体を合成することがその中心的目標である.このため,基本的には平成29年度以降も平成28年度から行なっている錯体合成と物性の評価,および,これらの錯体を適用可能な新しい酸化反応の探索を継続的に行なっていく.昨年度までに合成した化合物については,さらに連結する糖鎖の種類を増やし,化合物の物性の糖鎖依存性を調べる.また,化合物の単結晶の合成を目指し,各化合物の結晶構造の決定を行うことを目標とする.これらの実験に加えて,新しい金属元素を挿入した新規化合物の合成も行っていく予定である. 反応については,光増感反応により生成した一重項酸素を利用した酸化反応を中心に,新しい反応の探索を継続して行って行く.特にアミンやアルコール等の酸化反応,および炭素-炭素二重結合の酸化的開裂(エポキシの生成反応)等について適用しつつ,一連の錯体の反応性を検討する.昨年度,新たに研究対象に加えた,一重項酸素の酸化力を利用した色素の分解反応についても反応条件をチューニングしつつ,適応可能な気質反応系の探索を行っていく.
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[Presentation] H. Akashi, K. Moriwaki, T. Sato, J. Konishi, S. Yano2016
Author(s)
SYNTHESIS AND CATALYTIC ACTIVITY OF COBALT(II) COMPLEXES OF FLUOROCHLORIN DERIVATIVES
Organizer
XX th International Winter School on Coordination Chemistry
Place of Presentation
Hotel Karolinka, Linowa 3b, 58-540, Karpacz, Poland
Year and Date
2016-12-05 – 2016-12-09
Int'l Joint Research / Invited
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