2016 Fiscal Year Research-status Report
超高速レーザー分光法を利用した量子ドット増感太陽電池の高性能化設計
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16K05885
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橘 泰宏 大阪大学, 産学連携本部, 特任准教授 (30359856)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 亮介 大阪大学, 産学連携本部, 特任講師 (70379147)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 半導体量子ドット / 増感太陽電池 / 超高速分光 / 電荷移動反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の課題として、(1)量子ドットの電子準位の解析と制御、(2)量子ドット・酸化チタン界面の電荷分離・再結合反応、(3)量子ドット・電解質界面のホール移動反応に関する評価を設定した。(1)に関しては、サイズ分散度の低いPbS量子ドットの合成法(分散度:~4.4 %)を確立し、バンドギャップエネルギーを正確に変化させることに成功した。また、表面トラップ準位の少ない量子ドットの作製に成功した。(2)については、量子ドット・酸化チタン間に有機分子を挿入することによって、電荷分離効率が低下することが分かった。(3)については、レドックス準位が量子ドット価電子帯端準位よりも負側に位置する限りは、ホール移動反応が効率よく進行し、太陽電池の電流値にほとんど影響を及ぼさないことが分かった。 今後の方針として、上記の(3)について、ホール移動速度と電解質種との関連を明らかにし、太陽電池の性能を最適化するための指針を得る。この項目以外の計画は、申請書作成時に考慮した内容を遂行する予定である。(4)量子ドットタイプ・構造と酸化チタン界面の電荷移動反応。(5)量子ドット増感膜への電位印加による電荷分離・再結合反応速度の最適化。 (4)については、PbS量子ドット・酸化チタン間の距離を拡大することによって、電荷分離・再結合反応両方を2桁程度遅くすることを試みる。再結合反応が遅くなれば、ホール移動効率が相対的に高くなるので、太陽電池効率の向上が期待できる。また、バンドギャップの異なる量子ドットを用いて、同様に電荷分離・再結合反応速度の制御を試みる。 (5)については、太陽電池の電圧に影響を与える因子を探るために、量子ドット増感膜への電位印加時における電荷移動反応速度変化を観測する。具体的には、量子ドットのサイズや構造が、この速度差にどのような影響を与えるか検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の課題として、(1)量子ドットの電子準位の解析と制御、(2)量子ドット・酸化チタン界面の電荷分離・再結合反応、(3)量子ドット・電解質界面のホール移動反応に関する評価を設定した。 まず(1)に関しては、サイズ分散度の低いPbS量子ドットの合成法(分散度:~4.4 %)を確立し、価電子帯と伝導帯のバンドギャップエネルギーを正確に変化させることに成功した。また、合成前駆体を変えることによって、表面トラップ準位の少ない量子ドットの作製に成功した(平成29年2月論文発表)。一方、サイズの異なるPbS量子ドットと酸化チタンを組み合わせて、発光強度を観測することにより、PbS量子ドットのサイズに依存した伝導帯ポテンシャルを割り出すことに成功した。 (2)については、量子ドット・酸化チタン間の構造が電荷分離・再結合反応に及ぼす影響を調べた。その結果、量子ドット・酸化チタン間に有機分子を挿入することによって、電荷分離効率が低下することが分かった。一方、電荷再結合反応速度については、有機分子の有無による影響はほとんどなかった。 (3)については、レドックス準位の異なる電解質種を用いることによるホール移動反応への影響を調べた。その結果、レドックス準位が量子ドット価電子帯端準位よりも負側に位置する限りは、ホール移動反応が効率よく進行し、太陽電池の電流値にほとんど影響を及ぼさないことが分かった。また、このことから、太陽電池の設計において、量子ドット価電子帯端準位に限りなく近く、負側である電解質を用いることによって、開放端電圧を最大化することが可能であることから、最も効率を高くすることが可能であることが分かった(平成28年5月論文発表)。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の(3)について、ホール移動速度と電解質種との関連を明らかにし、太陽電池の性能を最適化するための指針を得る。この項目以外の計画は、申請書作成時に考慮した内容を遂行する予定である。以下、その詳細を説明する。 (4)量子ドットタイプ・構造と酸化チタン界面の電荷移動反応 申請者の予備実験から、PbS量子ドットの電荷分離・再結合反応が高速で進行することが予想されている(ピコ秒以内)。すでに発表したように、PbSの励起子寿命は、最大2.2 usであるから電子注入速度を2ケタ以上遅くしても、電荷分離反応効率は90%以上であることが予想される。このため、PbS量子ドット・酸化チタン間の距離を広げることによって、電荷分離・再結合反応両方を2桁程度遅くすることを試みる。再結合反応が遅くなれば、ホール移動効率が相対的に高くなるので、太陽電池効率の向上が期待できる。具体的には、PbS/CdSのコア・シェル構造を構築し、CdS層の厚さを変化させることによって距離を制御する。PbS/CdSコア・シェル構造は、合成済である。また、硫化銅・アンチモンや硫化アンチモン量子ドットなどのバンドギャップの異なる量子ドットを用いて、同様に電荷分離・再結合反応速度の制御を試みる。 (5)量子ドット増感膜への電位印加による電荷分離・再結合反応速度の最適化 量子ドット増感太陽電池の性能向上に必要な条件は、量子ドットからの電子並びにホール移動反応が、電荷再結合反応よりも速く進行することである。この速度差が、大きければ大きいほど太陽電池の開放端電圧の向上が期待できる。本研究では、太陽電池の電圧に影響を与える因子を探るために、量子ドット増感膜への電位印加時における電荷移動反応速度変化を観測する。具体的には、量子ドットのサイズや構造が、この速度差にどのような影響を与えるか検討する。
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Research Products
(14 results)