2016 Fiscal Year Research-status Report
ペロブスカイト太陽電池を構成するヘテロ接合薄膜の構造と電子物性の解明
Project/Area Number |
16K05887
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
緒方 啓典 法政大学, 生命科学部, 教授 (10260027)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲見 栄一 千葉大学, 大学院融合科学研究科, 特任講師 (40420418)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 有機鉛ペロブスカイト化合物 / 金属酸化物薄膜 / 固体NMR分光法 / 顕微ラマン分光法 / 熱分析 / 電荷輸送特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機無機複合物質であるハロゲン化鉛系ペロブスカイト半導体は、薄膜形成に優れており、優れた集光能力と高いキャリア移動度を持つことから、太陽電池材料として現在大きな注目を集めている。これらの太陽電池デバイスの高効率化にとって、高い結晶性および均一性の高いペロブスカイト薄膜形成技術は必要不可欠な技術である。今年度は、ペロブスカイト太陽電池を構成するヘテロ接合薄膜の各層中の欠陥構造が同薄膜の電子物性および太陽電池特性に与える影響を明らかにすることを目的として、下記の研究を行った。(1)ペロブスカイト化合物および電子輸送層として実際に用いられているTiO2薄膜の欠陥構造と電子物性の関連性を明らかにすることを目的として、数種類の異なる方法によって作成した金属酸化物薄膜試料について粉末X線回折法、ESR分光法、固体NMR分光法、光電子分光法および各種分光法によって金属酸化物薄膜中の欠陥構造とヘテロ接合薄膜の電子物性の相関について系統的に調べた。(2)CH3NH3PbX3薄膜中の欠陥構造と相挙動の関係およびそれらが太陽電池特性に与える影響を明らかにすることを目的として、同薄膜の熱分析およびラマン散乱分光法および固体NMR分光法を用いてCH3NH3PbX3薄膜の相挙動、欠陥構造および分子運動性について同単結晶試料および粉末試料との差異および特異性を明らかにした。(3)TiO2に代わる金属酸化物層として、数種類の金属酸化物層を用いて作成したヘテロ接合薄膜を作成し、その電荷輸送特性について検証した。その結果、メソポーラスNb2O5薄膜において優れた電子輸送特性を示すことを明らかにした。また、緻密層の作製条件が電荷輸送特性に与える影響についても検証を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度に予定していた研究はほぼ順調に進展していると考えられる。2016年度の研究によって、ハロゲン化鉛系ペロブスカイト化合物薄膜は、同単結晶試料とは異なり、結晶中に多くの欠陥が含有され、それが同薄膜の相挙動および分子運動性に大きな影響を及ぼしていることを明らかにした。また、足場相である金属酸化物層の構造により、ハロゲン化鉛系ペロブスカイト化合物薄膜の結晶性および電荷輸送特性は大きな影響を受けることを明らかにした。さらには、メソポーラス構造を有するNb2O5薄膜が優れた電荷輸送特性を示すことを明らかにした。2016年度の研究テーマの多くに関しては、2017年度に継続して研究を発展的に行い、新たなデータを蓄積し、次年度の研究課題への発展に繋げていく予定である。現在、得られた研究成果は速やかに学術論文として発表すべく準備を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2017年度は,2016年度の研究成果をさらに発展させるとともに、これまでに得られた知見を元にさらに研究を推進させる予定である。具体的には、金属酸化物層がペロブスカイト層の結晶性が、ハロゲン化鉛系ペロブスカイト薄膜の結晶性およびモロフォロジーに与える影響をさらに明らかにすることを目的として、TiO2とハロゲン化鉛系ペロブスカイト薄膜の界面構造が、電荷輸送特性に与える影響の解明を目指し、単結晶TiO2上へ気相成長法によりハロゲン化鉛系ペロブスカイト薄膜を作成し、エピタキシャル成長の可能性を探るとともに、その局所的な電荷輸送特性を解明する予定である。さらに、非平面正孔輸送層として非平面型のモロフォロジーを有するナノカーボン材料を取り上げ、ハロゲン化鉛系ペロブスカイト化合物とのヘテロ接合薄膜を種々の方法で作成し、その電荷輸送特性を明らかにする予定である。
|
Causes of Carryover |
同研究で主要な役割を果たしていた現有の薄膜製造装置(スピンコーター)が2016年度に故障し、研究に支障が生じる状況となったため、備品購入予定の有機蒸着セルから変更してスピンコーターを備品として購入した。(有機蒸着セルは既存のものを改造して使用可能な状態にしたため研究には大きな支障は生じていない。)備品の購入予定額の差額にほぼ相当する額が次年度使用額として生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については、本研究で用いる消耗品費(合成用試薬、各種基板、ガラス器具、合成用ガス類等)として使用する予定である。
|
Research Products
(11 results)