2018 Fiscal Year Research-status Report
量子化学計算による色素増感太陽電池の開放電圧支配要因解明と配位子デザイン
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16K05889
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
草間 仁 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 上級主任研究員 (70356913)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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Keywords | p型色素増感太陽電池 / 密度汎関数法 / レドックス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、色素増感太陽電池において理論開放電圧を得るための増感色素構造を量子化学計算から明らかにする。金属錯体増感色素は中心金属、ドナー性配位子、及びアクセプター性配位子から成り、有機増感色素はドナー部位、パイ共役系部位、及びアクセプター部位から成る。本研究課題では、配位子構造等の異なる金属錯体や有機増感色素の量子化学計算を行い、色素増感太陽電池の開放電圧に及ぼす因子を解明する(構造物性相関)。本研究課題によって開放電圧損失がない新たな増感色素構造が明らかになると期待される。 まず、p型増感色素とヨウ素レドックス種との分子間相互作用に関する量子化学計算を行った。三ヨウ化物イオンはヨウ素アニオンラジカルとヨウ化物イオンとに解離して還元型シクロメタル化ルテニウム錯体及びジケトピロロピロール系有機色素と相互作用した。ヨウ素アニオンラジカルも2つのヨウ化物イオンに解離して増感色素還元体と相互作用した。一方、ヨウ素分子は解離せず相互作用したが、ヨウ素アニオンラジカルに変化した。以上の計算結果から、ヨウ素レドックスによる3種類の異なる1電子移動p型増感色素再酸化機構を初めて提案した。 次に、トリフェニルアミン系p型有機増感色素と含硫黄複素環式化合物系レドックス種(チオレート-ジスルフィド)との分子間相互作用に関する量子化学計算を行った。ヨウ素レドックスと同様に3種類の解離/非解離型分子間相互作用により正孔供与することが分かり、含硫黄複素環式化合物系レドックスによるp型増感色素再酸化機構を初めて明らかにした。ここで、増感色素還元体-ヨウ素アニオンラジカル複合体と比較して増感色素還元体-ジスルフィドアニオンラジカル複合体はかなり少なく、ジスルフィドアニオンラジカルは吸着する半導体表面からより遠いことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開放電圧損失がない高性能色素増感太陽電池の実現に向けて、注入正孔と電子供与レドックス種との再結合反応を防ぐためにレドックスの電子供与種とのアンカー部位付近における相互作用し難いというp型増感色素の設計指針を明らかにすることができたので、おおむね順調であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
従来のヨウ素レドックス等とは異なるアンビデントなレドックスについて検討する。量子化学計算プログラムを用いて増感色素やレドックス分子、及びその複合体等を構造最適化する。最適構造のエネルギー、原子間距離、結合角度、分子軌道のエネルギー準位などの情報を収集する。引き続き最適構造のポピュレーション解析を行い、電子密度、双極子モーメント、結合軌道などの情報を収集する。量子化学計算から得られた物性情報と実験で得られた開放電圧等の値とをデータマイニング手法にて解析する。
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Causes of Carryover |
(理由)使用している量子化学計算プログラムのリビジョンアップや投稿論文の英文校閲等を行ったが、いずれも当初の予定金額より安価であったためである。 (使用計画)令和元年度に用いる量子化学計算プログラムのリビジョンアップやサポート費用、英文校閲等に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)