2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K05897
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Research Institution | Saitama Institute of Technology |
Principal Investigator |
木下 基 埼玉工業大学, 工学部, 准教授 (40361761)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 液晶 / 配向 / 色素 / 光 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機半導体を用いるデバイスは分子配列の差異により電荷移動度特性が大きく変化することから、いかに電荷移動に有利な分子配列を材料に付与できるかが鍵である。本研究では、光で分子配列配向を制御可能な有機半導体材料の探索を進めており、昨年度、オリゴチオフェン誘導体をネマチック液晶に少量を混合し、レーザー光を照射するだけで、化合物の光配向性を簡便な方法で検出できることを見出した。本年度は太陽電池用有機半導体として実績のある2,5-di-(2-ethylhexyl)-3,6-bis-(5''-n-hexyl-[2,2',5',2'']terthiophen-5-yl)-pyrrolo[3,4-c]pyrrole-1,4-dione (SMDPPEH)および2,5-dioctyl-3,6-bis-(5''-n-hexyl-[2,2',5',2'']terthiophen-5-yl)-pyrrolo-[3,4-c]pyrrole-1,4-dione (SMDPPO) を用いて、液晶中における光配向特性について検討した。SMDPPEH を各種濃度で含むサンプルにレーザー光を照射したところ、ある一定以上の光強度でゆらぎを伴った干渉縞が観測され、SMDPPEH が光配向性を示すことが明らかとなった。また、SMDPPEH の濃度が0.05 mol%のときは干渉縞数は1 であったが、0.1 mol%および0.075 mol%の場合は6 となり、SMDPPEH の濃度が増大すると配向変化を大きく誘起できることが明らかとなった。これは色素濃度が高くなるにつれて、励起される色素が増加し、配向変化を誘起するトルクが増大するためと考察した。さらに、レーザー光の入射角度が20°から30°のとき、いずれの濃度においても最大となり、照射方向を変えることによって配向変化が大きく誘起できることが明確になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においては,従来の有機半導体から光配向性を示す分子骨格を見つけることが重要課題である。このため、簡便な手法により有機半導体の光配向特性方法を確立し、いくつかの有機色素について光配向性を評価・検討し、液晶分散系において光配向性を示す有機半導体をいくつか見出すことに成功している。今年度は、有機半導体として実績のある化合物に焦点を絞り、光配向性について検討したところ、液晶と相溶性の低いSMDPPOにおいては光配向性については検討できなかったが、同様の分子骨格を有するSMDPPEHにおいては、液晶に分散可能で、液晶中において光配向性を示すことが明らかとなった。従来のオリゴチオフェン系と同様に比較的光配向にかかる閾値強度が低く、また、光照射角が20°から30°程度にすると、さらに閾値強度および配向変化の度合いを大きく誘起できることがわかった。これは有機半導体の光配向プロセスにおいて省エネルギー化に寄与し、有意義な結果であることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度検討した光配向性有機半導体は、長波長に吸収帯を有しており、これまでに用いてきたアルゴンイオンレーザからの波長488nmあるいは514nmの励起では、有機半導体の励起濃度が高く、熱失活による影響が無視できなかったため、半導体レーザー635nmにて評価を行った。しかしながら、安価な半導体レーザーで、最大光強度が10mW程度と出力が低いため、有機半導体の配向度合いについて詳細に検討できなかった。それゆえ、次年度においては、光配向性有機半導体の高感度化のために、新しい分子骨格を有する有機半導体の探索および混合有機半導体ホストの検討を行うほか、必要に応じて半導体レーザーの購入を検討し、実際にバルクでの有機半導体の空間光配向を試みる。また、実験的な手法だけでなく、分子軌道計算による有機半導体の分子構造計算も行い、光配向性の有機半導体に共通する特徴を明確化し、光配向特性と分子構造との相関関係についても検討する。
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Causes of Carryover |
昨年度当初は多くの有機半導体における光配向性について検討を予定していたが、研究開始まもなく光配向性を示すオリゴチオフェン誘導体SMDPPEHが見出されたため、SMDPPEHに関する光配向挙動や分子特性解析を先に進めた。このため、その他の高価な有機半導体の購入に至らなかったことや、評価装置としてアルゴンイオンレーザーでなく、半導体レーザーを代用したため、懸念事項であったアルゴンイオンレーザーの消耗がほとんどなく、レーザーの修理・交換あるいは新規購入などの費用がかからなかったため、未使用額が生じた。 本年度は、有機半導体の高感度化のための新しい色素の購入や、レーザーの新規購入を検討するとともに、レンズ,ミラー,プリズム,偏光子,光量計,移動ステージ、冷却・加熱ステージなどの関連物品も購入する。また、昨年度に引き続き、サンプル調製に必要な、溶剤、カップリング剤、ガラス基板,スペーサー、デバイス作製にかかる水槽振動子や電極基板などの購入を予定している。さらに,これまでと同様に,展示会,シンポジウム,学会などにおける発表,情報収集,および論文投稿を計画している。
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