2016 Fiscal Year Research-status Report
ヘテロ原子間相互作用を活用する分子アクチュエーターの構築と機能材料への展開
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16K05898
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
仲程 司 近畿大学, 理工学部, 講師 (10375371)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 環状セレン化合物 / コンフォメーション制御 / ハイパーバレントジカチオン / 分子アクチュエーター / 光学的センシング機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
「分子アクチュエーターを利用した光学的センシング機能を有する分子の合成と機能評価」(平成28年度) 立体的に近接できる位置で、中心のセレン原子を2つのヘテロ原子が挟みこめるように設計された環状セレン化合物は、2電子酸化することで中心のセレン原子が超原子価結合を形成し、ハイパーバレントジカチオンを生成する。この時、環状セレン化合物のコンフォメーションが大きく変化するという研究結果が報告されている。このように高度に分子設計された環状セレン化合物は、酸化還元反応により分子のコンフォメーションを可逆的に変化させることが可能である。また、このコンフォメーション変化を活用することで、酸化還元反応に応答して稼働する分子アクチュエーターが構築できる。そこで本研究では、中心にセレン原子を含みその近接可能な位置に2つのヘテロ原子を配置し、さらに蛍光性官能基を導入した化合物(SeAPy)を合成する。SeAPyは、光照射により光励起されることで電子供与性が増し、貴金属イオンなどの電子アクセプターに電子を受け渡す起こすことが可能であると予想される。この性質を活用し、還元剤を用いることなく光照射のみで金属ナノ粒子を生成し、また生成した金属ナノ粒子表面を保護できる分子として活用することを目指す。さらに還元作用を持つチオールや、ホスフィン等の有機分子を同時に添加することで、環状セレン化合物を光触媒的に利用した金属ナノ粒子合成への展開を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環状セレン化合物に1-Aminopyreneを2つ導入した化合物(SeAPy)を合成した。また、その酸化還元反応に伴う構造変化の様子を単結晶X線結晶構造解析により明らかにするとともに、酸化還元反応前後で化合物の蛍光特性が著しく変化する様子も確認した。これらの結果から、合成したSeAPyは、電子の受け渡しを可視的にセンシングできる材料となることが確認できた。続いて、SeAPyとテトラクロロ金(III)酸四水和物を混合したTHF溶液に対して365nmの紫外線照射を行うことで、Auイオンが還元されると同時に、Auナノ粒子が生成することを確認した。TEM-EDS(透過型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析)による観察と各種スペクトルを用いた観察から、SeAPyのパーバレントジカチオン体が生成したAuナノ粒子の保護基として機能していることも確認できた。SeAPyのパーバレントジカチオン体は、チオール類の存在により容易に還元され、コンフォメーション変化を伴って中性状態のSeAPyへ戻ることが確認できている。この反応を利用することで、Auナノ粒子表面のリガンド交換反応がスムーズに進行する様子も確認した。以上の結果から、従来のような強力な還元剤を必要としない新たなAuナノ粒子の合成法と、様々なチオール類を用いた保護基の交換反応が達成できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、SeAPyに導入する蛍光性官能基の種類を変えることで、蛍光色や蛍光強度をコントロールしていくことや、導入したヘテロ原子の種類(SeAPyではNを用いた)を変えることで、その酸化還元応答電位もチューニングできると考えており、これによりセンシング材料としての機能性向上を計っていく。またこれとは別に、酸化還元反応によりコンフォメーションを可逆的に変化させることの出来る「新規ベルト状ポリセレノシクロファンの合成とその酸化還元反応を利用した構造制御」を目指し研究を行っていく。新規ベルト状ポリセレノシクロファンの合成においては、既知の環状セレノチオフェン類の合成例を参考に、チオフェン環をベンゼン環に変換する反応の検討を重ねていく。また、ベンゼンはπ共役系を通じた電子の受け渡しができることから、新たな機能を有する化合物群の創生を目指して研究を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度の研究において、\50,166の次年度使用額(繰越金)が生じた。この理由を以下に述べる。 研究開始当初に直接経費として学会発表に参加するための旅費として、\100,000をあらかじめ計上していた。昨年度参加した学会の出張において、急遽発表者として参加したものや、座長としての依頼を受けたものがあり、これらの旅費は研究者が所属する研究機関(大学)の個人研究費で賄うことができた(大学の規定による)。 これにより、研究計画当初よりも研究費が節約でき、試薬や研究消耗品に関しても幾らか余分に購入することもできた。以上が、次年度使用額の生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額(\50,166)に関しては、今後購入予定の機器消耗品や合成用試薬金額に合わせて使用することや、金属ナノ粒子界面の有機物の分布状況を調べる目的のため新たに研究計画に取り入れるDOSY NMR測定に用いる特殊NMRチューブの購入に割り当てていく予定である。
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Remarks |
研究者の所属する研究室のホームページ 研究概要欄に、今回の研究テーマである分子アクチュエーターが紹介されている。
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Research Products
(6 results)