2016 Fiscal Year Research-status Report
凍結保存材料への応用を目指した生体吸収性ナノファイバーの物性解析と生体適合性評価
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16K05908
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
藤田 聡 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (60504652)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エレクトロスピニング / ナノファイバー / 高分子構造 / 生体吸収性 / 凍結保存 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,細胞凍結保存用の培養足場材料への応用を見据え,ポリ(3-(R)-ヒドロキシ酪酸-3-(R)-ヒドロキシヘキサン酸)(PHBH)ナノファイバーの高分子物性と生体適合性に関して,以下の項目の研究をすすめている。 (1) PHBHナノファイバーの結晶構造と熱的性質について,ポリ-L-乳酸(PLLA)を比較対照としてすすめ,電子顕微鏡(SEM, TEM),X線回折(WAXD),熱分析(DSC)をおこない,以降の評価に必要なPHBHナノファイバーの高分子構造・物性に関する基礎情報を得た。これによるとナノファイバーとフィルム状に成形した場合では高分子の結晶構造に顕著な差がないと考えられた。一方でPLLAは両者に大きな違いが見られ,エレクトロスピニング法がもたらす高分子構造の影響が大きいことが示された。 (2) PHBHナノファイバーの生分解性・生体吸収性・炎症性について,ラットへの6ヶ月間の埋込試験を実施し,中・長期の生体中での挙動(分解性・吸収性・炎症性)を,GPC,WAXD,DSC,免疫染色により,分子量分布、結晶化度、炎症性について評価した。この結果から,生体中ではPHBHでは生体中で高分子主鎖がランダムに開裂していくという分解様式に関する知見が得られた。 (3) PHBHナノファイバーを利用した凍結可能な細胞足場材料について,3T3細胞を用いた凍結・融解後の生存率評価の解析より,これまでに当研究室が検討してきたPUナノファイバーと同様に凍結保存足場材料として利用できることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた計画の通り,研究を遂行している。その結果,PHBHの物性解析により,ナノファイバー化することで構造化が進行するとの期待とは逆の結果が得られつつある。PLLAとの比較により,この点を切り口として,さらに詳しく解析を進めることでPHBHの特徴をさらに明らかにできるのではないかと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
物性解析については,PLLAとの比較という点に着目してさらに詳細に解析をすすめる。生体での分解性についてはメカニズムに関して,予定していた解析を完了した。今後は,生体と細胞の界面での接着性などを詳しく調べていく。また,凍結保存材料の検討に重点を置き,当初予定していた通り,高密度細胞保存技術の展開に進めていく。
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