2016 Fiscal Year Research-status Report
置換型ポリ乳酸ステレオコンプレックス形成の法則性の解明および高性能化材料開発
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16K05912
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
辻 秀人 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60227395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒川 優樹 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30757365)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 置換型ポリ乳酸 / ステレオコンプレックス / 共晶 / バイオベース高分子材料 / 生分解性高分子材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
置換型ポリ乳酸であるポリ(2-ヒドロキシブタン酸)[P(2HB)]およびポリ(2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸)[P(2H3MB)]のL体とD体の1:1ブレンド試料のヘテロステレオコンプレックス結晶化およびホモ結晶化、熱的特性と熱分解に関する詳細な検討を行った。このヘテロステレオコンプレックスの平衡融点は234.5℃であり、各非ブレンド試料の平衡融点よりも高いことが明らかとなった。溶融結晶化においてブレンドはregime IIおよびregime IIIで結晶化することが分った。また、1:1ブレンドの熱分解活性化エネルギーは、非ブレンド試料の間にあった。このことは、溶融状態において、異なる分子間の相互作用と同一の分子間の相互作用に差異がないことを示している。 さらに、ポリ乳酸(PLA)、P(2HB)、およびP(2H3MB)のD体、L体、D体の間で3成分ステレオコンプレックスが形成されることを初めて見出した。今まで最多で4成分ステレオコンプレックス形成に関する報告をしたが、P(2HB)およびP(2H3MB)のそれぞれのL体とD体のブレンドであり、分子構造的には2種類の分子構造を有するステレオコンプレックスであった。これに対して、今回発見したステレオコンプレックスは、異なる3種類の分子構造を有する分子間の初めてのステレオコンプレックスである。また、PLA、P(2HB)、およびP(2H3MB)のD体どうしのブレンドにおいては共晶が形成されないことより、L体のP(2HB)がD体のPLAおよびP(2H3MB)をつける分子接着剤としての役割を有していることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度の研究成果で着目すべきものは、ポリ乳酸(PLA)、P(2HB)、およびP(2H3MB)のD体、L体、D体の間で3成分ステレオコンプレックスが形成であり、これは、異なる3種類の分子構造を有する分子間のステレオコンプレックス形成の初めての例である。L体のP(2HB)がD体(PLA)およびP(2H3MB)をつける分子接着剤としての役割を有していることは非常に興味深い点である。この実験結果を利用することにより、今まで不可能であった多種多様な光学活性高分子の組合わせによる共晶化が可能となり、幅広い物理特性および生分解性を有する高分子材料の作製が可能になることが期待される。本研究成果は、Nature publishing Groupが発行するScientific Reports (2017, 7, Article number: 45170)に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
新規置換型PLAランダムコポリマーのL体およびD体を合成し、ホモポリマーと同じ方法で合成を確認するとともに、モノマーのランダム配列を13C NMRにより確認する。SC形成の確認は基本的には、ホモポリマーと同じであるが、モノマーの組み合わせが多数存在するため、先に、単独のL体あるいはD体のランダムコポリマーで結晶化能の可否の確認を行い、まず、単独で結晶化能を有するランダムコポリマーについて、その鏡像異性体のランダムコポリマーを合成して、ブレンドを作製し、そのSC形成の可否を確認する。確認されなかった場合は、ホモポリマーと同様の結晶化手順・条件を変更して検討を行う。次に、単独で結晶化能を有さないランダムコポリマーについても、同様の検討を行う。これは、SC結晶化能は、単独の場合の結晶化能よりも高いため、単独で結晶化能を示さない場合も、SC結晶化能を有する可能性があるためである。SC形成の確認された試料に関しては、ホモポリマーと同様の方法をもちいて、結晶化挙動・モルホロジー、耐熱性を評価する。分子量の高い試料の得られた場合は、力学的特性の評価も行う。
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Research Products
(2 results)