2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K05913
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
登阪 雅聡 京都大学, 化学研究所, 准教授 (10273509)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 融点 / 伸長結晶化 / 表面自由エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
架橋密度の低い天然ゴムを高速で伸長すると、半結晶性の準安定状態となって形状を記憶することが見出された。この準安定状態をもたらす要因を明らかにする事が、本研究の目的である。 天然ゴムを引っ張ると、形態エントロピーの作用で伸張結晶化が起こる。準安定状態は、引っ張ったゴムを離してもこの結晶が溶けず、そのまま残ることによってもたらされると考えられる。そこで先ず、通常の天然ゴムにおける伸長結晶化と、準安定状態の相違点を調べるため、各々の試料中に生成した結晶がどの様な状態にあるか、X線回折により調べた。高分子の結晶は、分子鎖方向に大きいほど融点が高くなるという特性がある。通常の伸張結晶化において、この大きさは12~18 nmであるのに対し、形状記憶状態でも13~16 nmという大きさが観察された。これは、単に結晶の大きさから考えても、両者に融点の差はないということを意味する。 しかしながら、結晶の融点はその大きさだけではなく、結晶と非晶の界面における自由エネルギーにも左右される。そこで、結晶の大きさと融点の関係から表面自由エネルギーを求める、Gibbs-Thomsonプロットという手法を、色々な倍率まで延伸した、様々な架橋密度の天然ゴム試料について実施した。その結果、伸長によって生じた結晶の融点は、架橋密度にかかわらず延伸倍率によって決まり、かつ、表面自由エネルギーは測定限界以下に小さくなっている事が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は2016年10月下旬に追加分として採択された後で開始した。そのため、当初の計画とは異なる順番で実施している。予定していた放射光施設での実験について、年度内に実施する新制は出来なかったため、次年度から開始している。これらの事を勘案しても、表面自由エネルギーに関する重要な知見が得られたため、研究はおおむね順調に進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
通常のNRにおける伸長結晶化と、準安定状態の相違点について、複屈折や配向度の測定を含めてさらに実験を行う。また、伸長の後に準安定状態が形成される過程のダイナミクス、および、収縮過程での結晶構造変化について、放射光施設での実験を実施する。放射光実験の申請は既に採択が決定しており、H29年4月に実施予定である。 加えて、研究室に設置のX線装置を利用し、昇温により、準安定状態から回復する過程などについても検討を行う。 これらの実験により得られた結果を総括し、表面自由エネルギーと高分子の形態エントロピー効果を考慮しながら、配向した高分子の結晶化に関する新しい機構の提案と準安定状態の形成機構解明に繋げることを目指す。
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Causes of Carryover |
本研究は、平成28年10月末に追加採択された。その後から研究を開始し、当該年度に必要な支出を行ったが、開始時期が遅かったため若干の計画変更があり、上記金額の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
器具類や試薬の購入に用いる物品費、実験と情報収集・成果発表の旅費などについて、次年度分と合わせて使用する。
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