2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K05926
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
藤井 義久 三重大学, 工学研究科, 准教授 (70578062)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プラズマCVD / ナノ細孔 |
Outline of Annual Research Achievements |
サブナノレベルの細孔構造は、原料ガスの組成およびプラズマのエネルギー密度(すなわち、原料ガスに1モルあたりのプラズマ放電出力)に依存することが明らかとなったため、炭化水素の種類、組成、および、真空度をパラメータとして、細孔のサイズの制御を検討した。原料ガスには、これまでのアセチレンに加え、液体モノマーを気化させる手法を取り入れ、ベンゼンやヘキサンもモノマーガスとして使用した。いずれの場合も、エネルギー密度の増加に伴い、成膜速度が著しく増加した。しかしながら、チャンバー内でモノマーガスの圧力(単位体積あたりの濃度)が上がらない液体モノマーでは、エネルギー密度が相対的に上昇することで、モノマーガスが最小単位まで小さなプラズマ状態となり、それらが重合することで極めて緻密な膜が形成された。さらに、X線反射率測定および偏光解析測定に基づき各成膜時間におけるシリコン基板上のカーボン膜の厚みの評価を試みたが、膜は硬くて脆い、靱性の無い膜で、製膜後基板から剥離する現象が見られた。このことから、得られたカーボン膜が基材との密着性が低いことだけで無く、大きな残留応力が存在することが示唆された。 また、昨年度課題であった多孔性高分子膜の階層的構造として、細孔径と細孔の膜厚方向への分布および膜厚方向の密度プロファイルを明らかにした。その結果、膜表面付近では膜の密度が低下しており、細孔量が多いことが明らかとなった。さらには、水素および酸素、炭素の組成比が膜厚方向で異なる結果が得られ、膜厚方向における分子構造の差異も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
液体分子を気化させることでモノマーガスの種類が選択の範囲が格段に向上し、多くの可能性を探索できるようになった。また、基材との密着性を向上させるための官能基を有したモノマーガスも使用でき、成膜性が改善された。そのため、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果において、残留応力の大きなカーボン膜を作製することが出来、残留応力を利用した構造緩和による細孔サイズの制御に着手する。平成30年度は、前年度に検討することが出来なかったプラズマの放電周波数制御(放電周波数を低周波数(50 kHz)から高周波数 (13.56 MHz)に変化)による細孔形成メカニズムについても検討する。基材への密着性の改善と残留応力を利用した構造緩和による細孔制御の両立を目指し、高選択分離膜の創出を実現する。高選択性のためには細孔径分布の制御も重要であり、標識分子による濾過実験だけでなく、ガス吸着に基づく細孔径評価試験なども取り入れて、着実に検討して行く予定である。
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Causes of Carryover |
学内にある評価装置の有効利用、ならびに、外部施設での実験を組み合わせ測定を行った。さらに、学内の加工実験施設を利用したサンプルの自作、および、連携先での受託加工などにより、当初の計画額との差が生じた。差額は、次年度使用額として、より精度の高い計測、結果をサポートするための実験に有効に使用する予定である。
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