2017 Fiscal Year Research-status Report
急速混合法による層状複水酸化物の合成とそのドラッグデリバリー材料への応用
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16K05928
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
會澤 純雄 岩手大学, 理工学部, 准教授 (40333752)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 層状複水酸化物 / ドラッグキャリア / ドラッグデリバリーシステム / 抗がん剤 / メトトレキサート / インターカレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
化学療法で用いられる抗がん剤は,がんの働きを抑制する薬剤であるが,副作用の発現が問題である.一方,層状複水酸化物(LDH)は,高い生体親和性などを有することから,薬剤を患部へ輸送するドラッグキャリアに応用可能な材料として注目されている.ドラッグキャリアが血中を循環し,がん組織へ集積させるためには,その大きさを100-200 nmに制御する必要がある.しかし,LDH粒子の大きさの制御は,凝集体を形成するため難しい.平成29年度は,抗がん剤としてメトトレキサート(MTX)を用い,MTX/LDHの合成を試み,その結晶構造や粒径,MTXの取り込み量に及ぼす合成条件の影響について検討した.また,MTX/LDHの分散性に及ぼす分散剤の影響を調べるために,MTX水溶液に所定濃度のポリエチレングリコール-2000(PEG)を混合し,同様の方法でMTX/PEG/LDHの合成も試みた. XRDの結果より,MTX/LDHの面間隔値は2.24 nmとNO3/LDHの面間隔値0.78 nmよりも拡大した.FT-IRの結果より,MTX/LDHに観察されるCOOH基の非対称伸縮振動(1600 cm-1,1560 cm-1)は,MTX(1643 cm-1,1602 cm-1)に比べ低波数側へシフトした.これは,アニオン化したMTXのCOOH基がLDHと静電相互作用によると考えられる.以上の結果より,MTXはLDHの層間に取り込まれたと考えられる.DLS測定とSEM観察より,MTX/LDHの粒径は数μmであり,凝集体を形成することがわかった.そこで,MTX/PEG/LDHの合成を検討したところ,層間へのMTXの取り込みが確認されたが,粒径は数μmの凝集体を形成することが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度,急速混合法により粒径を50~200 nmに制御した抗がん剤5-フルオロウラシル(5-FU)/LDHの合成方法の確立を目標に検討を行った結果,その目標をおおむね達成可能な合成条件(粒径100~200 nm)を見出すことができた.そこで得た知見と同条件下において,抗がん剤メトトレキサート(MTX)/LDHの合成を検討した. その結果,MTXはLDHの層間に取り込むことができたが,DLS測定およびSEM観察より,MTX/LDHは数μmの凝集体を形成することが明らかとなった.そこで,MTX/LDHの分散性を改善するために,MTX水溶液へ所定濃度のポリエチレングリコール-2000(PEG)を混合し,同様の方法でMTX/PEG/LDHの合成も試みた.その結果,MTX/PEG/LDHの粒径は,MTX/LDHに比べ改善されたが,2~4μmの凝集体を形成していた.この結果から,PEGの効果が認められたため,粒径の制御と分散性の向上に対する課題はあるものの,年度内の目標を達成しており,おおむね計画通りに進行している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度において,抗がん剤/LDHの凝集抑制にPEGの効果が見られたが,その効果は不十分であった.平成30年度はMTX/PEG/LDHの粒径におよぼすPEGの混合条件(濃度や容積など)の影響について検討し,粒径を100~200 nmに制御した高分散性抗がん剤/LDHの合成を目標とする.また,これらの細胞毒性を調べることにより,ドラッグキャリア材料としての利用についても挑戦する. 高分散性抗がん剤/LDHの合成に関しては,LDHを培地に分散させた際のLDHの表面への生体分子の吸着が凝集の原因となっている.そこで生体分子やPEGの吸着挙動の観察することで,凝集を抑制するための表面修飾の方法を本研究室が所有するAFM-IRを用いて検討する予定である.さらに,蛍光色素を取り込ませた蛍光色素/LDHの合成も挑戦する予定である.蛍光色素/LDHは共焦点レーザー顕微鏡を用いることで,細胞内におけるLDHの動態,すなわちLDHの溶解,蛍光色素の放出,pH緩衝作用に伴うプロトンスポンジ効果の発現を観察できると考えている.これは,細胞への薬剤の輸送におよぼすLDHの粒径の影響や細胞内におけるLDHからの薬剤の放出挙動,さらに細胞毒性などを観察する方法でありこれまで明らかになっていない成果が得られると予想している.
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Causes of Carryover |
理由:その他(装置使用量)が計画に比べ低額で済んだため.
使用計画:来年度の物品費で利用する予定である.
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Research Products
(5 results)