2017 Fiscal Year Research-status Report
光/化学エネルギー変換によるリチウムイオン貯蔵放出現象の開拓
Project/Area Number |
16K05929
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
平山 雅章 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (30531165)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 電気化学材料 / インターカレーション電極 / リチウム電池 / 光電気化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度当初は,28年度に構築したアナターゼ型酸化チタン/有機電解液モデル界面およびエネルギー準位図を基に,光波長,印加電圧を変えた光電気化学測定から,光充電反応因子の抽出を目指した.しかしながら,光照射時の電流値の再現性に乏しく,系統的な議論が困難であった.原因として,1) 光変換効率が低いこと,2) 光照射時に副反応として有機電解液の分解が生じること,3) 熱による反応促進の寄与を分離できないことが挙げられた.なかでも2)の解決が必須と判断し,(i)固体電解質の利用(全固体電池化)および(ii)水溶液の利用に検討対象を変更した.(i)について,多結晶アナターゼ型酸化チタンを正極とし,電解質および負極にリン酸リチウム膜,リチウム金属膜とする薄膜電池をパルスレーザー堆積法およびスパッタリング法で構築し,暗所における定電流充放電測定から,可逆的な充放電反応を確認した.紫外光照射前後でも充放電容量が低下せず,光照射時に試料温度上昇も無視できる程度であり,詳細な解析を妨げる原因2)および3)を排除できた.さらに,得られた薄膜電池の光電気化学測定の結果,電池電圧2.2 V以上で光酸化電流が観測され,Li脱離が促進されることを見いだした.この電圧は交流インピーダンス曲線をモット・ショットキー解析することで,得られるフラットバンド電位と一致した.定量的な光電気化学実験が可能なモデル系の構築に成功したことから,最終年度にリチウム貯蔵放出に深く関わる因子を明らかにする.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は, 【1】インターカレーション電極の界面構造制御,【2】光インターカレーション現象の実証,【3】光充電の可能性追求を目指して,以下を推し進めている.(i)電極/電解質界面の構築, (ii)構造評価, (iii)光電気化学特性評価, (iv)構造変化のその場観察, (v)界面反応機構解明, (vi)デバイス形態の模索.このうち,平成28年度は主に(i)-(iv)について実施,測定手法を確立したうえで,29年度以降に(v)(vi)を加速し,現象開拓を目指すことを当初計画とした.平成29年度は,「研究実績の概要」のとおり,28年度に構築したモデル固液界面は,光照射に不安定であり系統的な解析が困難であることが課題となった.方針を転換し,固固界面でモデル系の再構築を行った.得られた固固界面は極めて良好に電気化学反応が進行し,光照射にも安定であった.固液界面の光応答性,安定性という障壁が解決されたことで,光電気化学反応解析は確かに進捗したことで,年間通じての進捗状況は計画通りといえる.30年度に光電気化学特性の定量解析,構造解析を進めることで,(v)-(vi)についても達成できると考える.以上より,「おおむね順調に進展している」.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に完成したモデル界面を活用して,研究実施計画で示した実施項目(v)界面反応機構解明, (vi)デバイス形態の模索について取り組む.具体的にはいずれも研究実施計画で示した実施項目であり,これらを着実に進めることで目的が達成されると考える.(v) 界面反応機構解明:界面構造観察で作成したエネルギー準位図と光インターカレーション活性の相関を解析することで,光インターカレーション反応の検証および材料探索に必要な指針を明らかにする. (vi) デバイス形態の模索:光インターカレーションを利用した蓄電池の可能性を検証する.光電極の光起電力,対極の電極反応電位,反応過電圧を評価の基軸として,光充電可能な電極の組み合わせを模索する.対極には金属,酸化物電極(インターカレーション電極)を,電解質には電位窓が広く酸化還元耐性に優れた有機電解液を検討する.
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