2016 Fiscal Year Research-status Report
高いイオン伝導性を示す新規なカルシウムイオン伝導性固体の開発
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16K05936
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田村 真治 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (80379122)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 固体電解質 / ナシコン型構造 / カルシウムイオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高いイオン伝導性を示す新規なカルシウムイオン(Ca2+)伝導体の開発を目指し、三次元網目構造を有するナシコン型構造を選択した。 高いイオン伝導性を実現するため、母体結晶に複数の高価数カチオンを含むHfNb(PO4)3を選択し、Hf4+イオンサイトをCa2+で部分置換した(CaxHf1-x)4/4-2xNb(PO4)3を合成した結果、Ca置換量(x)が0.05までは単相のナシコン型構造が得られたのに対し、xが0.05を超える試料では不純物相の生成が確認され、混相となることが明らかとなった。また、単相領域ではCa置換量の増加とともに導電率も単調に増加し、固溶限界組成である(Ca0.05Hf0.95)4/3.8Nb(PO4)3において最大の導電率を示すことが明らかになった。 また、種々の酸素分圧雰囲気中での交流および直流導電率測定や直流電気分解法により、本試料は電子伝導や酸化物イオン(O2-)は伝導せず、Ca2+イオンのみが伝導していることを直接的に実証することに成功した。なお、本試料で得られたCa2+イオン導電率はこれまでに報告されている純粋なCa2+イオン伝導体と比較すると2桁以上高いだけでなく、伝導の活性化エネルギーも低いことから、ナシコン型構造を選択することでイオン伝導性に優れたCa2+イオン伝導体が得られることが判明した。 一方、Hf4+と化学的性質のみならずイオン半径も近いZr4+を用いても単相のナシコン型構造が得られる可能性が高いことから、Hfの代わりにZrを用いた(CaxZr1-x)4/4-2xNb(PO4)3の合成を試みた結果、現時点では単相試料が得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度はナシコン型Ca2+イオン伝導体の合成とイオン伝導特性の評価を行う予定であり、当初の目的をほぼ達成できてた。また、当初はHfの代わりにZrを用いても単相試料が得られると予想していたが、現時点ではZrを用いた場合には単相試料が得られていない。 化学的性質およびイオンサイズが似通っているにも関わらずZrの系で単相試料が得られていない理由は明確ではないが、本理由を解明することでより高いイオン伝導性の実現が期待されることから、初年度に一つの解決すべき課題が出てきたことは良い傾向であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、平成29年度以降では、まずより高いイオン伝導性を示すナシコン型Ca2+イオン伝導体の開発を行う。また、平成28年度に明らかとなったZrを用いた場合に単相試料が得られない理由の解明および単相試料合成手法の確立を目指す。 ナシコン型Ca2+イオン伝導体の開発に関して目途が立てば引き続き、未だ開発されていないペロブスカイト型構造を有し、高いイオン伝導性を示すCa2+イオン伝導体の開発に着手する。
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