2017 Fiscal Year Research-status Report
無機/有機複合超格子の電子・フォノン輸送制御による高熱電性能化
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16K05947
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Research Institution | Toyota Physical and Chemical Research Institute |
Principal Investigator |
河本 邦仁 公益財団法人豊田理化学研究所, フェロー事業部門, フェロー (30133094)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 熱電変換材料 / 無機有機複合超格子 / フレキシブル / デインターカレーション / 熱電出力因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、TiS2/organicsハイブリッド超格子の熱電性能向上のためのキャリア濃度制御法の開発を目指して研究を行った。まず、これまで用いてきた電気化学的インターカレーションにより有機カチオンをフルに挿入した後、電極の向きを変えてデインターカレーションする方法を試みた。XRD測定による構造変化とHall効果測定によるキャリア濃度変化およびゼーベック係数変化を同時追跡することにより検討した結果、電気化学的デインターカレーションでキャリア濃度を制御することは事実上困難であることが分かった。そこで、2種類の有機カチオンをフルにインターカレーションした試料を高温真空中でアニールすることにより、熱安定性の低い有機カチオンを優先的にデインターカレーションして熱安定性の高い有機カチオンを残留させる方法を試みたところ、キャリア濃度の最適化が可能であることが判明した。この方法でキャリア濃度を最適化した複合超格子材料は、室温出力因子(パワーファクター)が約900 W/mK^2に達し、これまで我々が報告したn型フレキシブル熱電材料の最高値450 W/mK^2の2倍に相当する性能を実現した。また、デインターカレーションにより有機層が部分的に消滅して無機/有機交互積層構造が若干崩れるため、in-plane熱伝導率は元より逆に大きくなったものの、性能指数ZTは室温で0.24、140℃で0.33と、フレキシブル熱電変換材料としては世界最高レベルの性能実現に成功した。今後は、この熱的インターカレーション法をLESAプロセスで作製したフィルムに適用して、フィルム材料の熱電性能向上に繋げることが必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
室温性能向上のためキャリア濃度の制御を目指していたが、熱的デインターカレーション法を開発できたことにより、世界最高レベルの熱電性能を実現できた。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度に開発したLESAプロセスにより作製したフィルム(薄膜、フォイル等)の性能向上のために、熱的インターカレーション法を適用してキャリア濃度を制御・最適化する。これをn型フレキシブル熱電素子とし、新たに開発するCNTコンポジットのp型フレキシブル熱電素子用いてフレキシブル薄膜熱電モジュールを構築することを目指す。
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Causes of Carryover |
物品費に関しては、所属機関の研究費から支出できたため、科研費を使用するのを控え次年度(平成30年度)に異動する予定だった現所属機関での研究経費として繰り越した。また、旅費については、当初予定していた国際会議等への参加を健康上の理由により一部控えたため、全額が執行できなかった。最終年度である30年度は、新しい所属機関において研究推進する予定であるが、中国、韓国、サウジアラビアの大学等との国際共同研究を積極的に進めて成果を上げていきたいと考えている。
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