2018 Fiscal Year Research-status Report
有機ビラジカル単結晶を用いた両極性トランジスタの開発
Project/Area Number |
16K05956
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
金井 要 東京理科大学, 理工学部物理学科, 教授 (10345845)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤池 幸紀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (90581695)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 有機ビラジカル / 有機電界効果トランジスタ / 有機半導体単結晶 / 電子状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では半導体特性を示す有機ビラジカロイドであるPh2-IDPLの単結晶の育成とその応用に焦点を当てている。これまでに、我々は、Ph2-IDPL結晶性薄膜を利用した両極性トランジスタの報告もしているが、単結晶を安定して育成する方法が確立していないことから、単結晶を利用したトランジスタの作製には成功していない。そこで、2018年度は、安定した単結晶の育成方法を確立し、得られた単結晶の物性測定を行うことと、両極性トランジスタへの応用を目的とした。 まず、気相からPh2-IDPL単結晶を育成するため、トレインサブリメーション装置によって単結晶の育成を試みた。しかし、Ph2-IDPL分子の本来持つ緑色ではなく、赤い結晶が析出した。紫外可視吸収分光とFT-IRの測定により、この結晶はPh2-IDPLの酸化物であることが判明した。そこで、液相からの育成を目指し、溶液拡散法を用いた実験を行った。2017年度までで、同様の手法によってPh2-IDPL単結晶の育成に成功しているが、育成条件と結晶形状の関係は明らかになっていなかった。そこで、2018年度では、育成条件を変えて実験を行い、結晶の形状との関係を明らかにした。また、得られた結晶を用いて物性評価を行った結果から、溶液拡散法を用いて結晶面内にb軸を持つPh2-IDPL単結晶を育成できることを明らかにした。 さらに、2018年度では、先の手法を応用してPh2-IDPLとTCNQを、一定の割合で混合したジクロロメタン溶液を調整し、低温で育成を行ったところ、オレンジ色の結晶が析出した。この析出物を溶かした溶液の吸光度を測定するとPh2-IDPLとスペクトルが一致し、TCNQの影響は見られなかった。すなわち、Ph2-IDPLとTCNQの混合溶液を用いることによって、Ph2-IDPL単結晶を育成する新たな手法を開発することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験計画は順調に進んでおり、これまでに、Ph2-IDPLの電子状態に関する研究成果や関連物質に関する研究成果も上がっている。そのため、研究課題の進捗状況としては、おおむね順調に進展していると言える。 2018年度は、Ph2-IDPLの単結晶を安定的に育成するための、新たな方法を開発することに成功している。この方法では、得られる単結晶の面指数をコントロールすることができるために、今後、応用に向けて有望な成果と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究計画は以下の通りである。(1) 4月~10月: 気相、液相から育成したPh2-IDPL単結晶のXRDによる構造評価、赤外分光、光電子分光などによる電子状態評価を行う。これらの結果を、投稿論文にまとめ、当該分野の専門誌に発表する。(2) 9月~3月: 得られたPh2-IDPL単結晶を用いたOFETの電気特性の精密な評価を行い、平成29年度に、予備実験として得られている高い性能についての再現性を取る。さらに、角度分解光電子分光を用いて、理論的に、IDPL単結晶で実現していると考えられている、広い分散幅を持つエネルギーバンド構造の直接観測を行う。2019年度の後半には、以上の研究成果について、国内外の学会、研究会にて発表するとともに、プロジェクト全体の研究成果を投稿論文にまとめ、当該分野の専門誌に発表する。
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Causes of Carryover |
研究の進展に伴い、実験計画の再調整を行ったため、消耗品の購入計画において、時期のずれが生じた。2019年度の早期にて、当初計画された実験を遂行するため、適切に使用する計画である。
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[Journal Article] Effects of Molecular Orientation of Fullerene Derivative at Donor/Acceptor Interface on Device Performance of Organic Photovoltaics2018
Author(s)
Kouki Akaike, Takumi Kumai, Kyohei Nakano, Shed Abdullah, Shun Ouchi, Yuuki Uemura, Yuta Ito, Akira Onishi, Hiroyuki Yoshida, Keisuke Tajima, Kaname Kanai
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Journal Title
Chemistry of Matrials
Volume: 30
Pages: 8233-8243
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] トポロジカル絶縁体Bi2Se3表面へのドナー性有機分子TTNの吸着による電子状態の変化2019
Author(s)
北澤辰也, 下澤皐介, 矢治光一郎, 石田行章A, 黒田健太A, 原沢あゆみ, 近藤弘, 山中隆義, 矢口宏, 間瀬一彦, 辛埴, 赤池幸紀, 金井要
Organizer
日本物理学会 第74回年次大会
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