2017 Fiscal Year Research-status Report
マルチカソード構造を用いた高演色・広視角および高色純度・指向性有機EL素子の開発
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16K05957
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
三上 明義 金沢工業大学, 工学部, 教授 (70319036)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 有機EL / エレクトロルミネッセンス / 光学シミュレーション / 光取り出し / 表面プラズモン / マイクロキャビティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は申請者が独自に開発したマルチカソード構造を用いて、高色純度・高指向性の高効率有機EL素子および高演色性・広視野角特性の白色発光という相反する発光特性の実現を目指としている。2年目に当たる今年度は、計算機能を更に高めた光学解析システムを用いて、前年度に実施した緑色発光有機ELの高性能化に関する成果をフルカラー化に展開し、赤色および青色発光の効率および色純度の改善に取り組んだ。具体的な結果は以下のようである。 (1) マルチカソード構造における光学補償層を透明膜とした外付け型マイクロキャビティ構造を背面側に設置し、光学補償層の材料、膜厚、光学定数の制御による高色純度・高指向性の最適設計を試作実験に基づいて検討した。具体的には、基板および有機薄膜の光学異方性が光学モード分布に及ぼす影響を解析および最適化した緑色燐光有機ELに適用した。その結果、発光層の有機膜に水平方向の分子配列を付与することで、光取り出し効率の増大が認められ、理論的には50%以上の高効率化を示唆する結果が得られた。 (2) マルチカソード構造の解析結果に基づく設計指針を、赤色(R)、緑色(G)および青色(B)発光カラー有機EL構造に適用し、発光スペクトル、配光分布、発光効率などの発光特性に対する陰極および陽極構成に対する最適設計の効果を検証した結果、発光スペクトルの半値幅は約1/2に低減し、RGB発光の色度座標はそれぞれ(0.657, 0.307)、(0.161, 0.685)および(0.136, 0.118)に改善されるとともに、光取り出し効率は25~35%の範囲に向上した。また、配光分布の指向性が高まることが同時に確認できた。 以上の結果は次世代4K8K-TVが定めるBT.2020規格に近い色域であり、色再現範囲の広い高色純度・高効率カラー有機ELディプレイの開発に寄与することが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従い、近接場光学に基づく表面プラズモン解析および波動光学によるマイクロキャビティ解析を可能とするマルチスケール光学解析システムを用いて、有機EL素子の光学現象を定量的かつ視覚的に解析することができた。また、表面プラズモン損失の低減に重要な要因を明らかにし、光学損失を大幅に低減できるカラー有機ELの光学設計への指針を得ることができた。特にRGBカラー材料に依存せず、本研究のマルチカソード構造が有効に寄与することを示せた意義は大きい。これらの成果は色域の広いフルカラー有機ELディスプレイの開発に繋がる基本技術であるとともに、最終年度に予定している光散乱効果を付加した高演色性白色発光の開発による照明分野への応用が期待される。今年度はほぼ計画に沿った成果が得られているものと思われ、研究は概ね順調に推移していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
高色純度・高効率カラー有機ELの開発については、今年度に実施したカラー有機ELの構造設計の成果を更に発展させ、外部マイクロキャビティ構造の最適化を進めて色再現範囲の広いフルカラー有機ELディスプレイへの応用に繋げる。また、基板および有機薄膜の光学異方性が光学モード分布に及ぼす影響を解析して最適な光学構造を明らかにし、更なる高色純度化および高効率化に繋げると共に、ディスプレイ用途に適した発光の視覚依存性への適合化を継続する。 高演色性・広視野角を特徴とする照明用有機ELの開発については、今年度の研究で得られた非伝搬波から伝搬波へのモード転換を利用して、マルチカソード構造内部に光散乱機能を備えた高屈折率ナノ粒子の分散を導入し、伝搬波の効果的な光散乱現象を利用することで高視野角化の可能性を検討する。 これらの研究を推進するため、高屈折率ナノ粒子の光散乱現象を定量的に観察する測定・評価システムを導入すると共に、光散乱効果を効果的に解析可能なソフトウェアの購入あるいは開発を進める。
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Causes of Carryover |
端数の発生による次年度への移行
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Research Products
(7 results)