2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K05975
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
稲葉 忠司 三重大学, 工学研究科, 教授 (70273349)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | バイオメカニクス / 脊椎固定術 / 骨粗しょう症 / 力学的評価 / 6軸材料試験機 / 脊椎不安定性 / 体内固定具 / 引抜強度 |
Outline of Annual Research Achievements |
身体運動の軸機関および支持機関である脊椎の疾患に対する診断・治療において,脊椎の剛性を定量的に把握することは,適切な治療方針・手術手技を決定する上で極めて重要である.そこで本研究では,脊椎の剛性を力学的観点より明らかにすることを目的とし,複雑な脊椎変形挙動を6軸材料試験機を用いて実験的に調査する.特に,本科学研究費申請年度においては,損傷や疾患により生じた脊椎不安定状態を解消するための脊椎固定術において,現在の手法では十分な固定が困難とされている骨粗しょう症の脊椎を固定する上で,いかなる固定術が有効であるのかについて焦点を絞って検討する. 骨は外側を取り囲む皮質骨とその内部の海綿骨で構成されており,海綿骨は骨梁が縦横に組み合わさった綱目構造となっている.骨粗しょう症とは,この海綿骨の骨梁組織の密度が低下して骨に鬆が入ったような状態になり,骨強度が低下する疾患である.一方,脊椎不安定状態を解消するための脊椎固定術において現在最も一般的に使用されているpedicle screw system(以下PS)法は,椎体の海綿骨部をアンカーとする固定術であるため,骨粗しょう症患者に適用するとスクリューの脱転を引き起こす.これに対し,手術中に脊髄を傷つけるリスクを軽減する目的で近年新たに開発されたcortical bone trajectory(以下CBT)法は,椎体の皮質骨部をアンカーとする固定術であるため,スクリュー引抜強度の観点から骨粗しょう症患者に適した固定術と考えられる.そこで本研究では,スクリューの引抜強度評価試験および固定術を施した脊椎の剛性評価試験を実施することにより,骨粗しょう症患者に適用可能な脊椎固定術の確立を目指す.今年度は,これら試験の内,CBT固定術を施した脊椎の剛性評価試験を中心に行い,CBT固定術はPS固定術と同等の脊椎固定性を有することを実証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にて述べた通り,本研究では,本科学研究費申請年度において,損傷や疾患により生じた脊椎不安定状態を解消するための脊椎固定術において,現在の手法では十分な固定が困難とされている骨粗しょう症の脊椎を固定する上で,椎体皮質骨部をアンカーとするCBT法が有効であるのかについて焦点を絞って検討する.そのためには,「CBT法を装着した脊椎の剛性評価試験」および「CBTスクリューの引抜強度評価試験」の2種類の力学試験の実施が必要となる. 今年度は上述の2種類の力学試験の内,CBT固定術を施した脊椎の剛性評価試験を試みた.この剛性評価試験には,平成16・17年度科学研究費若手研究(B)の補助を開発した脊椎強度測定用6軸材料試験機を活用した.この試験機は,6組の垂直直動型アクチュエータによるパラレルメカニズムとエンドエフェクタ(手先部)に内蔵した荷重-モーメントセンサにより,任意の自由度において変位および荷重制御下での精密な力学的負荷試験が可能である.力学試験を行うための試験体として,イノシシおよびシカ屍体脊椎を用いて,正常モデル,種々の疾患を想定した損傷モデル,および損傷モデルにCBT法あるいは従来のPS法等の体内固定具を装着した固定具装着モデルを製作した.製作した試験体に,前屈,後屈,側屈,および回旋のそれぞれの運動に対応したモーメントを負荷し,これらの負荷に対する試験体の変形挙動を計測した.この各々の運動を想定したモーメント負荷試験により,各種体内固定具の装着が損傷により生じた不安定性の解消にどの程度寄与しているのかについて検討した.その結果,CBT固定術はPS固定術と同等の脊椎固定性を有することが分かった.以上の結果は,骨粗しょう症に適用可能な脊椎固定術を確立する上で極めて有用な知見と考えられる.よっておおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,昨年度実施した「CBTスクリューの引抜強度評価試験」および今年度実施した「CBT法を装着した脊椎の剛性評価試験」をさらに進めて実験データを蓄積する.これら2種類の力学試験結果を検討することにより,CBT法が骨粗しょう症を伴う椎体においても十分な引抜強度を持ち,かつ従来のPS法を同等の脊椎固定性を有する術式であること,すなわち,本研究の目的である骨粗しょう症患者に適用可能な脊椎固定術の確立が達成されると考えられる. さらに次年度は,脊椎固定術の固定性評価において,これまでの実験的手法に加えて数値解析的手法を導入する.数値解析は,実験・理論と並ぶ第3の基本的方法論として様々な研究分野で認知されるようになってきており,本研究への導入により,例えば,至適な体内固定具装着位置の検討や新しい脊椎固定術の開発といった実験的アプローチが困難な研究課題についても取り組むことが可能になると考えられる.
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Causes of Carryover |
「今後の研究の推進方策」に示した通り,本研究の目的である骨粗しょう症患者に適用可能な脊椎固定術の確立には,「CBTスクリューの引抜強度評価試験」および「CBT法を装着した脊椎の剛性評価試験」の2種類の力学試験が必要となるが,これらの実験的アプローチについては今年度までに主要なデータが得られた.そこで本研究では,脊椎の剛性を力学的観点より評価する研究をさらに進展させるため,次年度以降は,これまでの実験的手法に加えて数値解析的手法を導入する.数値解析は,実験・理論と並ぶ第3の基本的方法論として様々な研究分野で認知されるようになってきており,本研究への導入により,例えば,至適な体内固定具装着位置の検討や新しい脊椎固定術の開発といった実験的アプローチが困難な研究課題についても取り組むことが可能になると考えられる.そのためには,脊椎の複雑な形状や椎間板の非線形的材用特性等を考慮した数値シミュレーションが可能な解析システムが必要となる.よって,今年度の予算の一部を次年度に繰り越し,次年度の予算と合わせて解析システムを導入したいと考えている.
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Research Products
(1 results)