2017 Fiscal Year Research-status Report
Sonic-IR法を応用した閉口欠陥の高精度高能率非破壊検出に関する基礎的検討
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16K05983
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
田邉 裕貴 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (00275174)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 非破壊検査 / 超音波 / 赤外線 / 閉口欠陥 / 固有振動 / 摩擦発熱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,従来の非破壊検査技術では困難な閉口欠陥の検出が可能なSonic-IR法に着目し,検査対象物の固有振動を利用した,簡便,高精度,高能率で大型の検査対象にも適用可能な新しい検査方法の確立を全体構想における最終目標とする.本年度は,研究対象を昨年度の擬似欠陥から実欠陥に変更し,Sonic-IR法における欠陥部での摩擦発熱挙動と検査対象物の固有振動との関係を調べた.実欠陥には主に疲労き裂を利用した.まず,超音波加振位置を種々変化させてき裂部での摩擦発熱挙動を調べた.その結果,振動の腹の位置を加振すると摩擦発熱は大きくなり,逆に節の位置を加振すると摩擦発熱は小さくなることがわかった.使用した試験片では,振動の節の位置を加振した場合でも検出可能な十分な摩擦発熱が生じたが,より検出が困難な欠陥や大型構造物中の欠陥を検査対象とする場合などには,加振位置の適切な選定が重要になると考えられた. また,超音波加振時の振幅を種々変化させて,き裂部での摩擦発熱に及ぼす加振振幅の影響を調べた.その結果,加振振幅の増加とともに摩擦発熱が大きくなることがわかった.さらに,振動計測結果に対して高速フーリエ変換処理を行うことで試験片の各位置での振動を周波数ごとに分離し,これと有限要素法による固有振動モード解析結果との比較から,試験片に生じた振動のモードを特定した.まず,加振振幅を増加させると,加振周波数での振動には変化が生じないものの,ある特定の高調波振動が増加することが明らかとなった.このことから,加振振幅を増加させた際の摩擦発熱の増加は,この高調波振動の増加に起因すると考えられた.しかし現時点では,なぜ特定の高調波振動が摩擦発熱に強く影響を及ぼすのかについては明らかにできていない.今後そのメカニズムを明らかにすることで,高能率,高精度な検査方法の確立につなげたい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,実欠陥として疲労き裂(片側貫通き裂)を導入した試験片を主に使用し,加振位置,加振振幅,超音波ホーンの押付け圧力等の加振条件や試験片の拘束条件を変化させた際の振動挙動の測定およびその際の欠陥部での発熱挙動の観察を実施した.また,有限要素法による固有振動モード解析を実施した.それらの結果として,Sonic-IR法における欠陥部での摩擦発熱に固有振動が深く関与していることを改めて確認でき,摩擦発熱の影響因子やメカニズムについての考察を進めることができた.このように,実欠陥での摩擦発熱メカニズムの検証という平成29年度の主たる目的は概ね達成できた. さらに,本年度の研究により,疲労き裂部での発熱に,特定の固有振動モードが強く関与していることがわかり,単に振動を大きくするだけでは欠陥部での発熱を大きくできない可能性があることが明らかになった.発熱に関与する固有振動モードが欠陥の形状,寸法,位置によってどのように変化するのかは,高精度,高能率で欠陥を検出可能な新技術の開発において重要な課題である.このような平成30年度に検討すべき課題が明確となったことも本年度の大きな成果である. また,疲労き裂以外にも,実欠陥として溶接部欠陥,複合材料の層間はく離,膜の界面はく離などを対象とした実験も実施し,いずれも欠陥検出が可能であることが明らかになった.さらに,当初計画していなかった大型の被検体を対象とした実験も実施し,Sonic-IR検査を行うための加振条件等に関する検討も進めることができた. 以上のように,主たる目的が概ね達成され,次年度に取り組むべき課題が明確となり,研究対象についての実験の準備等も進めることができたことから,現在までの進捗状況は,おおむね順調に進展していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究により,疲労き裂部での発熱に特定の固有振動モードが強く関与していることが明らかとなったことから,平成30年度には,まず発熱に関与する固有振動モードが欠陥の形状,寸法,位置によってどのように変化するのかを明らかにする.また,その結果も含めて考察を進め,疲労き裂部での発熱の影響因子やメカニズムを明らかにする. 次に,溶接部欠陥,複合材料の層間はく離,膜の界面はく離,応力腐食割れなどの疲労き裂以外の欠陥に対しても検討を進め,欠陥の種類によって発熱の挙動やメカニズムに相違が生じるのかどうかを明らかにする. 以上の結果をもとにして,Sonic-IR法の新技術に関する検討を開始する.加振周波数をはじめとする超音波加振条件および試験片の拘束条件の調整によって,検査対象物や欠陥に応じた適切な固有振動を発生させ,欠陥を高精度,高能率で非破壊的に検出する新技術の可能性について検討する.
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Causes of Carryover |
平成29年度に,粘弾性フィルムを試験片に貼り付け,超音波加振時の粘弾性フィルムの発熱により検査対象の振動の様子を観察する方法を新たに考案し,この方法により実験の効率的な実施が可能となった.その結果,平成29年度の消耗品の購入費用を抑えることができ,平成29年度予算に残額が生じた. 一方,平成29年度の研究により,欠陥部での発熱に特定の固有振動モードが強く関与していることが明らかとなったため,平成30年度は,欠陥の形状,寸法,位置によって発熱に関与する固有振動モードがどのように変化するのかについての検討を追加実施することとした.平成29年度に生じた残額は,本研究のための消耗品購入費用として使用する予定である.
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Research Products
(1 results)