2017 Fiscal Year Research-status Report
その場測定技術を基盤としたFRP積層板の成形誘起残留応力分布の予測手法
Project/Area Number |
16K05985
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
高坂 達郎 高知工科大学, システム工学群, 准教授 (80315978)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 有限要素解析 / 複合材料 / 成形誘起応力 / 熱硬化性樹脂 / 硬化度 / 硬化収縮 / 光ファイバセンサ / FBGセンサ |
Outline of Annual Research Achievements |
熱硬化性樹脂基複合材料の成形では,温度変化や樹脂の硬化収縮によって生じる強化繊維と樹脂の変形のミスマッチによって,残留応力分布が生じることはよく知られている.従来では硬化収縮の影響は無視できるほど小さいと考えられていたが,筆者は光ファイバを強化繊維としたモデルGFRPを用いて繊維に生じる成形誘起ひずみを実際に測定することで,硬化収縮によるひずみは全体の残留ひずみの20%弱程度であり,無視できないことを示してきた.この影響を予測するために,前年度までの研究の成果として,一様温度で硬化度を時間関数として与えた場合の成形誘起残留応力を解析する熱・構造・硬化度の連成有限要素解析コードの開発を行ってきた.前年度までは硬化度分布を一様としており,分布が生じた場合の解析は出来なかった.今年度は,各要素において硬化度計算を行い,温度,硬化度,ひずみ分布の予測が可能な解析コードの構築を行った.そして,それを用いて圧力や温度分布の影響についても調査を行った.また,温度パターンが残留応力に与える影響については,実験的にも明らかにした. まず,二段昇温パターンにおける一段階目の温度と温度保持時間が成形誘起残留ひずみに与える影響について,前年度の解析と同条件での実験を行った.そして,複数の条件での解析結果と実験結果を比較し,良い一致を得ることができた.これにより,本予測手法の有用性を確認し,その結果を用いて温度パターンの最適化を行った.さらに,成形圧力の影響を調べるために,一方向GFRPにプレス圧を加えた解析を行った.その結果より,プレス圧の影響は,成形後の除圧でほとんど取り除かれることが分かった.最後に,温度分布を与えた時の成形誘起ひずみ分布の解析を行い,硬化度に分布が生じることによって硬化収縮による繊維のひずみにも分布が生じ,成形後もそれが残留することが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熱・構造・硬化度の連成解析コードの開発と,硬化温度条件が成形誘起残留ひずみに与える影響の定量的な評価に関しては,予定した進捗通り進んでおり,本年度は分布がある場合の解析を行うことができるようにコードを発展させることができた.これによってマルチスケール解析へのステップが確立され,これらのテーマについてはおおむね順調に発展していると評価する. 温度条件,成形圧力と金型が成形誘起残留ひずみに与える影響の評価については,温度条件と成形圧力の影響を明らかにすることができた.特に温度パターンが残留ひずみに与える影響については,実験結果と解析結果が良く一致し,本手法の有用性を改めて検証することができたと評価する.一方で金型と積層構成が成形誘起残留ひずみに与える影響については,マルチスケール解析の構築後に行った方が良いこともあり,実験的な検証方法の検討を含めてまだ予備的な研究段階であり,本年度は,マルチスケール解析への発展のために分布がある場合の解析コードの開発を優先した. 界面処理の影響については,予備的な検討において影響が見られず,現在のマルチスケールのサイズでは意義が低いことから研究テーマの中から外すこととした.以上により,実験を含んだ解析コードの検証については,温度条件と成形圧力,さらに温度分布の影響については十分な結果が得られ,一方で,金型と積層構成による影響についての検証はマルチスケール解析の構築を優先とした.以上より,これらのテーマに関しては,はおおむね順調に発展していると評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降はマルチスケール解析手法の開発を主要なテーマとし,得られたコードを用いて金型と積層構成による影響についての検証を行う.前年度までで,温度・硬化度分布が生じた場合の解析を硬化度0の状態から行うことができる解析コードの開発は終了しており,これを用いてズーミング法による解析を行っていく. 本年度の研究においての課題としては,実験による検証方法である.これまでは非常に小さいサイズの試験片を作製して,検証に用いてきた.しかし,マルチスケール解析では,試験片サイズをある程度大きくする必要がある.実験的な検証法の難易度は高いと考えているが,前年度での予備実験において見通しを立てることができているため,この課題については十分達成することが可能であると予想している.
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