2017 Fiscal Year Research-status Report
化学機械研磨過程の界面電位計測による超精密研磨メカニズムの解明
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16K06009
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
須田 聖一 静岡大学, 工学部, 教授 (50226578)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 化学機械研磨 / ガラス / 水和自由エネルギー / せん断応力 / 電荷移動反応 / セリア / 界面抵抗 / 電位計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
ガラス,サファイア,炭化ケイ素などの基材の表面を短時間で原子レベルまで平滑に加工する「超精密加工研磨技術」は,パワーデバイスをはじめ高集積次世代デバイスの構築に不可欠な技術である。本技術の高度化のためには,研磨中における化学作用(化学研磨)のメカニズムを明らかにすることが不可欠である。本研究では,主としてガラスを研磨対象材料とし,研磨過程における電荷の挙動を定量的に計測することによって,化学研磨のメカニズムを解明することを試みている。 平成28年度については,化学研磨の定量的な評価として,ガラス表面に生成する単位面積あたりの水和量として捉えられることを明らかにできた。ガラス表面における水和量の変化は,研磨時の印加荷重にはほとんど依存しないことがわかった。さらに,印加荷重には依存しないが,荷重印加時の回転,すなわち,ガラス表面に対してせん断応力を印加することによって化学研磨が生じることを明らかにできた。このような水和層を生成する化学研磨の素過程として,砥粒/水界面における電荷移動反応,水溶液中のカチオンによる電荷拡散挙動,水/ガラス界面における電荷移動反応,があげられる。この3種類の素反応のなかで,砥粒/水界面における電荷移動反応が律速反応であることがわかってきた。 もし,化学研磨が水和生成と直接的な関係があるのであれば,研磨によって生じる電位を計測することによって,ガラスにおける水和生成自由エネルギーとの関係を直接定量的な比較が可能となるはずである。そこで,平成29年度は研磨による電位変化を精度良く測定することを目的として,装置改造から取り組んだ。アルカリ含有ガラスを研磨対象として検討した結果,ガラスの水和生成自由エネルギーとほぼ一致する電位を再現性良く計測することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の平成29年度の実験計画としては,平成28年度に試作した電位計測装置を使用し,研磨対象材としてはソーダライムガラスと石英ガラスを,研磨材としてはセリウム系研磨材及びペロブスカイト型ナノ複合研磨材を用いて,電位を評価すること。これにより 化学研磨に関与する素反応の挙動及び化学研磨メカニズムを提案することを掲げた。 それに対して,まず電位変化を精度良く計測するための装置改造や工夫をおこなった。モーターからの電気的なノイズや振動による集電制御,さらに印加荷重の変化などについて改良を進めることによって,再現性良く電位変化を捉えることに成功した。さらに,複数のセリウム系研磨材を用いて電位変化を検討することによって,ガラスの水和生成自由エネルギーにほぼ相当すると考えらえる電位を計測できた。さらに,せん断応力を印加した後の電位がステップ状に変化していることから,ガラスの組成より異なる水和生成自由エネルギーを反映した値が得られていることがわかった。 平成29年度については,ペロブスカイト型ナノ複合研磨材を用いた検討結果を得るまでには至らなかったが,電位計測による取り組みにより,組成によりことなる水和生成自由エネルギー変化を研磨過程で捉えることができたことなど,化学研磨メカニズムの解明に大きく寄与する進展も見られた。全体としては,おおむね順調と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度については,これまでのガラスに変わってサファイアを研磨対象材とし,ガラスと同様に水和層生成の有無について検討することを当初の研究計画として掲げていた。しかし,研磨過程で生成する水和層生成エネルギーとガラス組成との関係を定量的に評価できる可能性が高くなってきたことから,ガラスの組成と電位変化との関係について研究を深化することを優先的に取り組む。ガラスの組成,研磨材の組成,水和生成自由エネルギー,それぞれの関係を定量的に捉えられれば,化学研磨のメカニズムの解明に大きく前進すると共に,新規研磨材の設計に大きく役立つ知見が得られる。 平成30年度については,まずはガラスを用いた電位変化の研究を深化させ,平成30年度後半にサファイアを用いた検討を実施したい。
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Causes of Carryover |
電位計測の高精度化に向けた改良に必要な部材の購入に充当する予定であったが,研磨材およびガラス組成による電位変化に関する取り組みを優先したため,本予備部材の購入を先送りにしたため。本改良は平成30年度実施計画のなかに組み込み実施するため,使用計画および実験計画の大幅な変更はありません。
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Research Products
(3 results)