2017 Fiscal Year Research-status Report
粒子衝突によるマグネシウム合金への樹脂ー金属交互積層厚膜形成とその接合性評価
Project/Area Number |
16K06017
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
原田 泰典 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (30218656)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
布引 雅之 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (50244687)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 表面処理 / 接合性 / 耐腐食性 / ショットピーニング / マグネシウム合金 / 樹脂 / 耐摩耗性 / 塑性変形 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではマグネシウム合金の表面特性向上のため、ショットピーニングのような粒子衝突を用いた樹脂含有金属薄板の接合を試みた。昨年度に引き続いて、樹脂ー金属交互積層膜の良好な接合性が得られる加工条件について調べた。ます、昨年度の結果より、加工条件の一つである加工温度の制御が試作した加熱装置では困難であることがわかった。具体的には、厚さ20ミクロンのポリエステル樹脂が被覆された厚さ25ミクロンの純アルミニウム箔の二層薄板で行った結果、投射速度60m/sの場合、異種材料である2層薄板は加工温度100度から130度の範囲で接合することが観察された。しかしながら、光学顕微鏡による表面近傍の断面観察により、部分的に基材であるマグネシウム合金と接合していない領域が存在していることがわかった。加工温度が低い状態では2層薄板が基材であるマグネシウム合金と接合が困難のため、150度以上の温間で加工する必要があることがわかった。しかし、それ以上の加熱では用いているポリエステル系樹脂が変質することや試作した加熱装置の温度制御が安定しないことがわかった。そこで、今年度はまず安定した加工温度が得られる加熱装置の改良を行った。室温付近から数百度の温度範囲の温度制御を安定させるため、加熱ヒータの位置を変更させた加熱装置を新たに設計し作製した。次に、ポリエステル系樹脂よりも耐熱性のあるシリコン系樹脂を用いた純アルミ箔や純アルミニウム薄板でサンドイッチした純アルミクラッド薄板の作製を試みた。樹脂は耐熱性のあるシリコン系で約300度程度まで耐える樹脂である。薄板の総板厚は100ミクロン以上として行った。現在、これらの耐熱性樹脂を用いた純アルミクラッド薄板の単板および複数板の接合性についてそれぞれ調べている。今後、高耐熱性のフッ素系や高強度のポリカーボネイト系の樹脂シートの検討も行う計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基材であるマグネシウム合金AZ31系への異種接合薄板として樹脂を含有する純アルミニウム薄板の耐熱性について調べた結果、当初用いたポリエステル系樹脂は約100度付近で変質することがわかった。また、変質しない低い温度での接合性は低く、マグネシウム合金基材との十分な接合性を得る接合温度は200度以上は必要であることがわかった。そのため、耐熱性を示す樹脂を選択するため、10ミクロンから100ミクロンの厚さであり、300度までの耐熱性を持つ入手可能な樹脂を選定することを行った。その結果、耐熱性のある樹脂としてシリコン系やフッ素系の樹脂が適用できることがわかった。そこで、純アルミ箔や純アルミニウム薄板に対して耐熱性樹脂を用いた異種材薄板の作製を行った。その結果、約300度付近での耐熱性のある異種材薄板の利用が可能であることを見いだした。一方、基材と接合する金属薄板を加熱するために試作した装置において、室温から300度までの温度範囲では安定した保持温度が保てないことがわかった。このため、温間での一定した温度を保持できる加熱装置とそれを制御するデジタル温度測定器一式を準備し、再度、基材への接合性について調べている状況である。また、接合性に及ぼす基材材質の影響も調べるため、AZ80系マグネシウム合金の準備を行っている。以上、現在、耐熱性であるシリコン系やフッ素系の樹脂を用いた異種材薄板の接合性について調べている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、引き続き基本とするマグネシウム合金AZ31合金基材への耐熱性樹脂を含む純アルミクラッド薄板の接合を行い、最適な接合性が得られる加工条件の検討を行う計画である。具体的には、被覆する異種材料の構成や板厚などの条件に対する加工温度や投射条件などの加工条件の影響について調べる計画である。また、複数の皮膜構造を有する複層皮膜の形成も行う計画である。層の厚さや樹脂の種類を変化させた組み合わせも試みる計画である。一方、当初の計画にはなかったが、樹脂のほかに耐摩耗性も考慮した硬質粉末の混入した樹脂を接合させる皮膜形成を試みる計画である。樹脂および硬質粉末を純アルミニウム薄板と強固に接合させることを試みる。具体的には、耐熱製樹脂中に硬質粉末混入を行う被覆薄板の作製を行う。予備試験的ではあるが、現在、樹脂への硬質皮膜混入は可能であることがわかっている。しかし、現段階では接合性に及ぼす硬質粉末の粒径サイズの影響が不明であり、現在、皮膜厚さとともに硬質粉末粒子サイズの検討を行っている。また、樹脂と純アルミニウム薄板の接合性を高めるため、樹脂中に純アルミニウム粉末を混合させる方法で接合を試みている。また、マグネシウム合金AZ31の他合金として、AZ61やAZ80の合金に対する接合性についても調べる計画である。また、最近、カルシウムを添加して耐熱性を改善したAZX系合金に対しても接合性について、今後の研究でも進める計画である。
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Causes of Carryover |
次年度に使用が生じた理由は、購入予定であった物品の見積の結果、年度内の予算では購入できないことがわかり、次年度の使用額と合わせて購入することになったためである。次年度の使用には本研究で必要な試験片組織観察用機器に関連する物品を購入する計画である。
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Research Products
(5 results)