2016 Fiscal Year Research-status Report
切削工具に特化した摩擦試験法の開発と新しい仕上げ面評価法による検証
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16K06044
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
田中 隆太郎 広島大学, 工学研究院, 准教授 (60361979)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 摩擦温度 / 温度履歴 |
Outline of Annual Research Achievements |
切削工具(12.7×12.7×4.76mm厚,コーナーR0.8mm)および同形状の被削材サンプルの厚さ方向の辺にはRホーニングが施されている.Rが付けられた辺の部分を円筒の一部と想定する.この円筒が互いに直行するように配置し,上下方向に荷重を与えた状態で,主軸は回転させず円弧補間により100mm/minで半径1.8mmの相対円運動を与える.工具は,メッキなし,Sn(融点231.9℃)もしくはZn(融点419.5℃)をメッキして実験に供した.接点はジュール熱加熱した.移動熱源を用いた摩擦温度の予測モデルでは,半無限体状を帯状熱源が移動するモデルを考え,接点での発熱量をq,被削材側へ流入する熱の割合をR,被削材側へRq,工具側へ(1-R)qの熱量が流入し熱源と接している部分の温度は等しいとした.算出された温度履歴は,相対運等の間,摩擦温度は変化を続け,vy,vxいずれかの速度が0に近いときに温度が高くなった.熱伝導率が低いサンプル(今回は工具)上を移動する熱源の速度が最小になるときに最高温度となる. 摩擦試験後のメッキなしの超硬K15工具では,20Aのときほとんど凝着は見られない.電流が大きくなると擦過痕の両端に被削材の凝着が見られた.融点が231.9℃であるSnの場合,40Aで中央部と両端が,60Aで全域にわたり接触部近傍に小さな球状の付着物が観察され,このとき231.9℃より高かったと推察される.球状の付着物が観察されたとき摩擦温度がメッキされた金属の融点に達したと判断すると,摩擦温度は40Aのときの最高温度が60Aのとき最低温度が239.1℃以上であったと考えられる.また,融点が419.5℃であるZnの場合,60Aで擦過痕の両端近傍に小さな球状の付着物が観察されることから,摩擦温度が高いところでは419.5℃以上となっていたことが伺える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
摩擦温度の履歴を移動熱源理論を用いて予測を行い,その傾向についてサンプルの表面にメッキした低融点金属の溶融状況の観察から確認を行いおおむね予想通りの結論が得られた.熱電対を挿入したサンプルを用いた温度計測については,サンプルや熱電対の入手までは完了しており次年度開始に伴い実施する予定である.いくつかの工具と被削材で摩擦試験を行う予定であったが摩擦温度を正確に把握したのち試験条件を設定する方がよいとの判断から見合わせている.摩擦温度の測定が完了次第,随時実行に移す.
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Strategy for Future Research Activity |
現在は摩擦温度のおおまかな温度範囲を把握した段階であるのでより詳細な摩擦温度を知るためにサンプルの中に極細熱電対を埋め込み直接接点近傍の温度を計測することに取り組む.また,摩擦試験に用いるサンプルの材種を増やしこれまで得られた傾向が普遍的なものであるかの確認も行う. “マシニングセンタを利用した摩擦試験から得た摩擦温度と摩擦特性値の関係”と“切削実験から得た切削温度と工具形状転写誤差の関係”を比較および転写誤差と高い相関を持つ摩擦特性値の探索を予定している.工具転写誤差と高い相関を持つ摩擦特性を示すパラメータを見出す.その候補のひとつとしてデータ全体から計算する平均摩擦係数を考えているが,平均摩擦力あるいは摩擦力の変動幅なども考えている.また,これらを算出するデータの範囲を全体ではなく特定の区間とするなどの工夫も考えられる.
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Causes of Carryover |
正確な摩擦温度の測定に至らなかったため,複数の工具-被削材の組み合わせで摩擦試験を実施しなかったため試料素材の購入および制作に関する費用を支出しなかったため差額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
正確な摩擦温度の測定ができたと判断できたのち,複数の工具-被削材の組み合わせで摩擦試験を実施するための試料素材の購入および制作に要する費用としてこの差額を支出する予定である.
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Research Products
(1 results)