2017 Fiscal Year Research-status Report
切削工具に特化した摩擦試験法の開発と新しい仕上げ面評価法による検証
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16K06044
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
田中 隆太郎 広島大学, 工学研究科, 准教授 (60361979)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 仕上げ面あらさ |
Outline of Annual Research Achievements |
スローアウェイ工具とそれと同形状の被削材サンプルを用いたマシニングセンタ上における摩擦試験における摩擦温度に関する調査を行った.被削材サンプル(SUS304)に直径0.5mmの小孔を摩擦面に垂直に明け外径0.5mmのシース熱電対を挿入し隙間をはんだで埋めた.サンプル間に電流を流した状態で相対円運動させながら工具の回転中心を1回転するごとに被削材の稜線方向へわずかに移動させることを繰り返した.最高温度は35Aで550℃,60Aでは600℃に達した. 仕上げ面生成領域の温度を推測するために,ノーズRを持つ工具を用いた長手旋削で切り取り断面内の最大切り取り厚さを,仕上げ面生成領域内の最大切り取り厚さと同程度となるような切削条件を選び,工具切れ刃から輻射された赤外線を被削材の内部に埋め込んだ光ファイバで受光し受光感度の異なる積層した赤外線検出素子へ伝送する方法で刃先温度を測定した.切削速度100m/minでは,最大切り取り厚さが100μmにおいて約400℃であるのに対し,最大切り取り厚さが20μmにおいては約200℃であった.これは切れ刃に沿う方向の熱の伝達がないとの仮定の上では,切り取り断面内で温度分布が存在し,最も厚い切りくずが生成される部分と仕上げ面が生成される部分では数百℃の温度差があることを意味する. したがって,切れ刃に沿う方向に熱の伝達が多少あるにせよ仕上げ面を想定した摩擦試験を行う際の摩擦温度に関しては200~300℃を実現できればよいと考えられ,現状の装置でも十分に実現可能と思われる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
摩擦試験に関しては摩擦領域が幅約0.1mmと小さいため熱電対を挿入する穴位置のわずかな違いにより測定温度が大きく変わることが分かった.正確な摩擦温度の測定については今後も新たな方法を模索するが,仕上げ面生成領域に近い温度は十分に実現できていると判断できるためサンプルの損傷を抑制できる最小限の通電で実験を実施したい. また,切れ刃輪郭形状の転写誤差について切り取り厚さによって弾性変形量が異なるため切れ刃丸みに対する仕上げ面生成領域の切り取り厚さの影響を考慮する必要があることが分かってきた.
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Strategy for Future Research Activity |
仕上げ面生成領域の温度測定を前年度より広げた切削条件で調べる. 切れ刃形状の転写性については,転写誤差の数値だけでなく仕上げ面プロファイル,表面写真などのデータもあわせ切削条件による良否を整理する.切れ刃輪郭形状の転写誤差について切り取り厚さによって弾性変形量を転写性の算出において補正する手法について検討する. 工具形状の転写性と高い相関を持つ摩擦特性を示すパラメータを見出す.その候補のひとつとしてデータ全体から計算する平均摩擦係数を考えているが,平均摩擦力あるいは摩擦力の変動幅なども考えている.また,これらを算出するデータの範囲を全体ではなく特定の区間とするなどの工夫も考えられる. 時間が許せば水溶性切削油剤の濃度の影響,MQLで用いられる各種油剤の摩擦特性の違いについても調査を進めたい.
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Causes of Carryover |
消耗品等の購入が予定よりも少なく済んだため.次年度使用額は,国内学会や国際会議で研究成果を公表する費用として活用する.
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Research Products
(1 results)