2016 Fiscal Year Research-status Report
マルチマイクロプローブ電位差法によるその場損傷評価法および寿命予測法の開発
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16K06052
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中曽根 祐司 東京理科大学, 工学部機械工学科, 教授 (10266918)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 余寿命予測 / 高温低サイクル疲労 / 分布微小き裂 / 非破壊検査 / 直流電位差法 / マルチ・マイクロプローブ / 定常電流解析 / 複数き裂進展シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) マルチマイクロプローブによる新しい電位差法を開発し,微小分布き裂による高温低サイクル疲労劣化・損傷過程を明らかにした. SUS316Lの高温低サイクル疲労中断試験を行い,疲労の各段階における微小分布き裂の表面長,深さの統計的分布を明らかにし,SUS316Lの高温低サイクル疲労破壊は,微小分布き裂の発生・成長・合体によるき裂の急速成長により起こることを明らかにした.また,3次元FEM定常電流解析によるマルチマイクロプローブ直流電位差法による非破壊検査のシミュレーションを行った.その結果,高温低サイクル試験で測定される寿命後期の電位差の急激な上昇は,寿命後期における微小分布き裂同士の合体によって急速に成長するき裂によるものであることが明らかとなった. (2) 分布微小き裂による高温低サイクル疲労の寿命予測法の開発 中断試験によって得られた疲労過程の各段階におけるマルチマイクロプローブの正規化電位差V/V0(未損傷材の電位の平均値V0で正規化)の平均値は1に近い一定値をとったが,そのばらつき(標準偏差σV)は寿命後期で急激に増加した.また,負荷ひずみ幅に関わらず,σVと寿命比N/Nf(N:繰返し数,Nf:破断繰返し数)の関係は一本の曲線で表すことができ,その曲線の急激な上昇の開始点は,ほぼ寿命比N/Nf=0.9となることが明らかとなった.この曲線を使えば10%の疲労余寿命予測が可能となることを示した. (3) SUS316L鋼および316FR鋼のクリープ余寿命予測への適用可能性の検討 当初のSUS316L鋼に加えて,316FR鋼のクリープにおける余寿命評価に対して本法の適用可能性を検討した.その結果,両材料のクリープとも,分布微小き裂は多数発生するが,延性的な変形が支配的になるため,き裂は大きく成長せず,本研究で開発した余寿命予測法の有効性は限定的であることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,本年度の研究計画を遅滞なく遂行できたほか,同温度域・同材のクリープにも本法を適用し,本法の適用可能性を検討するとともに,高温低サイクル疲労とクリープにおける破壊機構の相違を明らかにできたため. また,FEM定常電流解析については,当初計画では2次元モデルによる解析を予定していたが,き裂周りの電流の挙動等がより現実に近い3次元モデルを用いた解析に変更し,シミュレーション解析の高精度化を図ったことも当初の計画以上の成果である. さらに,当初計画していた材料に加えて,316FR鋼のクリープにおける余寿命評価に対して本法の適用可能性も検討し,本研究で開発した新しい直流電位差法がSUS316Lばかりではなく,他のオーステナイト系ステンレス鋼の高温低サイクル疲労に適用可能であることを示した.他方,クリープ破壊の余寿命予測については,本研究で開発した方法の有効性は限定的であることを指摘し,本法の適用範囲とその限界を明らかにするとともに,オーステナイト系ステンレス鋼の高温低サイクル疲労とクリープの破壊機構の違いを明らかにした.以上の成果も当初の計画以上の成果である.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に設定した各研究課題について,平成28年度の研究成果に基づいて各研究課題の高度化を図り,本研究で開発するマルチマイクロプローブ電位差法による劣化・損傷のその場非破壊検出・評価法の実用化の可能性を検討する. (1)「マルチマイクロプローブ電位差法による劣化・損傷のその場非破壊検出・評価法の開発」では,平成28年度で使用した32点マルチマイクロプローブからより多点のマルチマイクロプローブに変更した場合,計測効率や精度の向上が図れるかを,主に有限要素法によるシミュレーションにより検討する.また,有限要素法シミュレーションにより,プローブをフェイズド・アレイ化した場合の効果を調べ,その優劣を明らかにする. (2)「高温低サイクル疲労損傷進展メカニズムの解明」では,平成28年度で採用した環境温度873K以上の温度域での疲労損傷メカニズムを解明する.また,平成28年度の研究テーマとした,改良9Cr-1Moなどの他材料の疲労損傷メカニズムを解明する.さらに,SUS316Lおよび改良9Cr-1Moの溶接材についてもそれらの疲労損傷メカニズムを調べ,各材料の母材との破壊メカニズムおよび分布微小き裂の特性の相違を明らかにする.また,各材料について,高温低サイクル疲労とクリープの劣化・損傷メカニズムとの相違を調べる, (3)「高温低サイクル疲労の寿命予測法の開発」では,平成28年度の研究テーマとした,改良9Cr-1Moなどの他材料への本寿命予測法の適用可能性を継続して検討する.また,316FRおよび改良9Cr-1Moの溶接材に対しても本寿命予測法の適用可能性を検討する.
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Causes of Carryover |
マルチマイクロプローブ直流電位差法を実施するため,電子磁気工業株式会社から同社製のナゲット検査器をレンタルしているが,ナゲット検査器に不具合が出て,2回ほどレンタルできなかったため,2回分のレンタル料金91,699円を次年度に持ち越すことになった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ナゲット検査を借用するために使用する予定.
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