2016 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ・ナノスケール繰り返し往復すべりの摩擦・磨耗特性
Project/Area Number |
16K06057
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
遠藤 正浩 福岡大学, 工学部, 教授 (30168835)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳瀬 圭児 福岡大学, 工学部, 准教授 (20580187)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 繰り返し往復すべり / 摩擦 / 磨耗 / 試験方法 / 試験装置 |
Outline of Annual Research Achievements |
有効な実験方法がなく実現できていなかった「マイクロ・ナノスケール」のすべり量で「平方ミリスケール」の接触面が往復で繰返しすべる現象の研究を行うために、2円筒を突き合わせて軸ねじり疲労試験機を用いて繰返し相対的に回転させる革新的な試験方法を確立することが主目的である.初年度の目標とその研究実績について以下にまとめる. 1.接触面が無損傷の初期状態から均一に接触させ実験を開始する技術の確立:不均一な接触によって発生する試験片の曲げを数値で把握しながら、接触面に圧力センターフィルムを挿入して視覚的も片当りを確認した.試験片軸の調整は精細な軸心調整装置を新しく設計した.最終的には,ひずみゲージを使わず圧力センターフィルムだけで均一接触状態を試験開始前に実現できるようになった. 2.ナノスケールの相対すべりおよび極微小荷重を高精度に制御する技術の確立:比較的剛性が高い鋼構造体の内部に低容量の2分力計(軸力とトルク測定用)と軸芯調整装置を備え付けて試験片を締結し,この鋼構造体を軸ねじり疲労試験機に取付て実験する.すなわち荷重制御の一般的な試験機の中に変位制御の試験装置を2重構造で構築することで,ナノスケールの実験を可能にする.軸変位とねじり変位を適切な大きさにするため、鋼構造体は,FEMによって変形量を確認しながら試行錯誤的に適切な寸法と形状を決定した. 3.マイクロスケールの領域の往復繰り返しすべり接触現象の解明:SCM435(Cr-Mo鋼)とSUJ2(軸受鋼)についてドライ環境で実験を行い,接触面の接線力(摩擦力)と相対すべり量の時間変化を精密ににモニターできるように計測技術を見直した.摩擦係数を相対すべり量,面圧,周波数,繰返し数を関数として測定できた.また,接触面の磨耗過程についても観察を行った.得られた結果は論文にまとめ国際会議と雑誌で公表した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採択前までの予備的研究においては、2つの円筒試験片を均一に接触させて実験を開始するために,試験前に試験片を試験機に取り付けたあと擦り合わせを行っていた.そして多くの系統的な実験結果をすでに得ていた.しかし,初年度の研究で接触面が無損傷の初期状態から均一に接触させ実験を開始する技術を確立したので、この条件で実験を行い従来の結果と比較を行ったところ,擦り合わせの影響が想像していた以上に大きいことが判明した。そのため、改良された方法を用いて全ての実験データを取り直すことになって予想外に多くの時間を要した.この一時的な後退も一つの研究成果であり,さらに接触表面状態が大きく影響すると予想される次年度のナノスケールすべり接触の研究を円滑に進めるためには不可欠であった.ただし,このためにナノスケールの実験のための実験補助装置(鋼構造体)の試作と調整できていない.しかし,すでに設計は完了しているので,この遅れは実質的には無視できる範囲と考えている.現時点ではそれ以外に特に大きな障害もなく,研究の成果も定期的に論文の雑誌投稿や国内外の学会講演会で公表できているので,順調に進展していると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
まず,2017年8月末までには遅れていたナノスケールの実験のための実験補助装置(鋼構造体)の製作と調整を完了させる.ここに大きな障害はなく,遅れは取り戻せると考えている.この新しく設計した装置によって,さらにスケールが小さなすべり量と面圧でドライ環境中で次の研究を行う.時間的な余裕があれば,潤滑剤等を用いてドライ環境以外でも研究を行う. 1.摩擦係数の測定 相対すべり量:100 nm~10 μm,面圧:0.001~1 MPaの範囲で摩擦係数を計測して,初年度で得られたマイクロスケールの結果と比較しながら評価する.レーザー変位計では100 nm近傍のすべり量の測定精度が悪い恐れがあるので,静電気容量変位計(新規購入)を用いる方法を並行して研究する. 2.接触面の損傷機構および摩擦現象の解明 接触表面近傍(面間,表面,表面下)の現象を,繰返し数の関数として観察する.材料組織の変化は硬さ測定と金属顕微鏡,SEMの微視的観察で行い,適宜EBSD(電子線後方散乱回折法)によって結晶構造の変化についても明らかにする.摩耗量の測定や摩耗粉等の分析も行う.磨耗過程の観察は,接触した状態を保持したままで試験片全体を外部から接着剤等で堅固に固定した後に取り外し,断面を切断して微視的に観察することを計画している.ただし機械研磨が接触面の状態に影響を与えて情報を見誤ることを危惧している.簡便で安価なマイルドな研磨方法の検討をまずは行うが,最終手段としてイオンミリングやFIB(収束イオンビーム)技術を併用すれば,研磨による損傷がない断面を採取できると考えている.
|
Research Products
(5 results)