2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K06059
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
数仲 馬恋典 福岡工業大学, 工学部, 教授 (20412611)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ダンピング / 横懸架装置 / 鉄道車両 / 新幹線車両 / 乗心地評価 / 疑似蛇行動 / ダブル曲線レール / 円錐踏面車輪 |
Outline of Annual Research Achievements |
「主な研究成果」:平成28年4月1日から平成29年3月31日までの研究期間には、研究実施計画通りに新幹線車両用横ヨーコロイダルダンパに関する基礎研究を展開することができた。具体的には、鉄道車両模型を購入し、車両の再設計・改善、そしてヨーダンパの取り付け作業を行った。また、直線・曲線レールを購入し、実験室内に線路を装着した。ダブル曲線レールを走行した鉄道車両模型の疑似蛇行動を発生させ、走行実験で記録された振動スペクトルにおいて単純なモデルに基づいて振動原因を解明した。ISO2631規格の周波数重み関数、および乗客が読み・書きの作業を行う時に適切な周波数重み関数を用いて、車両の乗心地を評価した。 「予算使用状況」:直接経費の執行率は44%となかった。その理由については、12.の「今後の研究の推進方策等、次年度使用額が生じた理由と使用計画」で記載する。 「研究発表状況」:雑誌(査読付)論文:6件、国際学会発表:5件、国内学会発表:7件、学会賞:2件。 2017.1.8-9間にシンガポールで開催された「19th International Conference on Noise and Vibration」国際会議で、「Best Paper Award」賞を受賞、詳細な情報は下記のホームページで掲載されている:http://www.fit.ac.jp/news/archives/2034。 2017.3.30-31間に大阪で開催された「19th International Conference on Mechanical Engineering and Applied Mechanics」国際会議で、「Best Paper Award」賞を受賞、詳細な情報は下記のホームページで掲載されている:http://www.fit.ac.jp/news/archives/2137。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鉄道車両が高速で走行する場合における乗心地を向上させるために、台車の蛇行動によって起きる左右方向の振動の振幅を減少させるべきである。鉄道の乗客がますます使用するノートパソコンやタブレットコンピューターのディスプレーに伝達される左右方向の振動は、乗客が訴えるぼやけた画像、視覚的不快感、頭痛、めまい、吐き気などの原因になるかもしれない。 実際の鉄道車両(例えば、新幹線車両)の場合、蛇行動は本物の車両が直線レールを高速度(例えば、200~300km/h)で走行したときに長い波長(例えば、20~30m)で発生する。室内の走行実験では、十分な速度と長波長が得られないため純粋な蛇行動を発生することが難しい。 そこで、本研究ではダブル曲線レールを採用することによって疑似蛇行動を発生させ、この現象について理論的および実験的な研究を行った。具体的にはダブル曲線レールの幾何学的モデルを提案し、このモデルに基づき、走行中では左右台車と車体枠の絶対回転角度の変化、左右台車と車体枠との相対回転角度の変化、ならびにヨーダンパの作動条件を明らかにした。鉄道車両模型が直線とダブル曲線レールを走行したときに記録された振動スペクトルを提示し、車両の単純な振動モデルに基づいて振動原因を解明した。ISO2631規格で定められた周波数の重み関数、ならびに乗客が読み・書きの作業を行うときに適切である周波数の重み関数を用いて、鉄道車両模型の乗心地を評価した。今年度を行った研究より下記の主な結論・成果が得られた。 1)ヨーダンパのストロークが左右台車の関節点の間距離と、台車の関節点からヨーダンパの中心軸までの距離に比例するが、レールの曲率半径に反比例することが明らかとなり、この結果はヨーコロイダルダンパの適切な設計に役立つ。 2)横方向の振動における乗心地の評価に適した周波数重み関数の見直しを提案した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の研究推進は、来年度の当初の研究実施計画通りに進展したい。 具体的には、鉄道車両用左右動CD(車両①に必要となるダンパ4本)の設計製作を行う。また、必要性に応じてヨーCDを改善し、さらに、車両②に必要となる改善ヨーCDの設計製作を行う。3Dスキャンデータから検査成績表の作成用ソフトウェアを用いて設計手順を支援し、鉄道車両模型の検査成績表作成を行う。ボールねじ加振機では改善ヨーCD、並びに左右動CDの振動実験を行い、得られた実験結果より性能を確認し、ダンパの利点と欠点を検討する。また、ダンパの減衰特性・弾性特性(散逸エネルギ、減衰係数、ばね定数等)と周波数やストロークとの関係を明らかにする。左右動CDが車両に適当に組立てられるように、市販の鉄道車両模型を順応する。改善した模型に改善ヨーCD、並びに左右動CDを装着し、鉄道車両模型(車両①)の走行実験を行い、得られた応答より車両の乗心地を評価する。得られた研究結果を国内学会や国際学会で発表する。 来年度、研究代表者の所属研究機関では「多目的棟」の建築計画があり、多目的棟は主に自動車関連研究のオーペン研究スペースに使用される予定である。そこで、研究代表者はオーペン研究スペース(25平方メートル)に申請し、来年度の後期よりこのスペースの使用が可能となる。平成28年度では、研究スペースの制限で長さ3メートルの直線・曲線レールを使用したが、鉄道車両模型の走行距離が短くて大きな走行速度ができなかった。そこで、来年度は、長い走行距離(15メートル)のレールを装着し、より高速で鉄道車両模型の走行実験を行いたい。
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Causes of Carryover |
理由①:平成27年、平成28年度に福岡工業大学・総合研究機構・エレクトロニクス研究所の所長に勤め、研究所などの運営仕事関係で本研究課題に使用できた研究時間が少なくなってしまった。
理由②:本研究課題に対して本大学より頂いた研究補助費(直接経費の10%(15万円)、申請時の直接経費と実際の直接経費との差額(約55万円)、ならびに学会出張費(約48万円))を先に執行した。そして、本研究課題の研究時間が少なくなったことによって不十分な検討で研究費を使用してしまう状況にならないように執行していなかった予算を来年度の予算に繰り越しを希望している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用計画:来年度の直接経費(1,000,000円)と今年度に執行できなかった直接経費(840,247円)との合計予算(1,840,247円)を平成29年度に使用する計画がある。具体的には、物品費(多目的棟(新棟)のオーペン研究スペースで装着する長い直線・曲線レールの購入と装着工事、高速鉄道車両模型の購入、コロイダルダンパの設計・製作、振動の測定装置・乗心地評価システムの改善など)として1,200,000円、旅費として395,000円、人件費・謝金として125,000円、ならびにその他として120,247円(合計:1,840,247円)を使用する計画がある。
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