2017 Fiscal Year Research-status Report
超強加工と摩擦加工によるバルクナノメタル高機能表層とそのトライボロジー特性
Project/Area Number |
16K06061
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Research Institution | Fukui National College of Technology |
Principal Investigator |
加藤 寛敬 福井工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (30311020)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 超強加工 / バルクナノメタル / 摩擦加工 / 結晶粒微細化 / トライボロジー / 耐摩耗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
極めて大きな塑性ひずみを与えるバルク超強加工により作製可能となったサブミクロン微細結晶粒材料(バルクナノメタル)は、合金元素に頼らずに高強度であるため次世代の構造材料として注目されている。一方、摩擦の影響を受けた金属表面も組織が微細化することが知られており、摩擦加工も超強加工の一種である。本研究では、超強加工と摩擦加工を組み合わせることにより、バルクナノメタルに超々微細組織をもつ摩擦表層を生成させ、耐摩耗性・耐凝着性に優れた金属表層を提案することを目指している。 2年目の平成29年度では、摩擦加工としてバニシング加工に着目し、一般的に用いられるS45C のディスク材料を加工の対象として、工具としてボールを用いて滑りバニシング加工を行い、加工条件(荷重、回転速度、送り速度、加工回数など)がバニシング加工表面の粗さや組織・硬さに及ぼす影響を明らかにすること、また加工面の耐摩耗性を評価することを目的とした。まず、荷重を50N、200N、500N、回転速度を80rpm、300rpm、800rpmと変化させ、ボールに超硬合金及びAl2O3 を用いてバニシング加工を行い、加工面の粗さや組織・硬さに及ぼす影響を調査し、最適な荷重と回転速度を求めた。その際のボール送り速度は0.01mm/rev、加工回数は1 回とした。次に、荷重と回転速度を一定とし、ボール送り速度を0.01~0.05mm/rev、加工回数を1~3 回と変化させて同様の調査を行った。さらに、各条件のバニシング加工面における摩耗試験を行い、耐摩耗性について評価した。摩耗試験は、潤滑油なしの乾燥した大気中で、押し付け荷重49N、摩擦速度0.5m/s、ボール材質はSUJ2で30 分間行い、ディスク及びボール摩耗幅やディスク摩耗深さにより摩耗量の評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目の目標であった、摩擦加工としてバニシング加工に着目し、加工条件(荷重、回転速度、送り速度、加工回数など)がバニシング加工表面の粗さや組織・硬さに及ぼす影響を明らかにすること、また加工面の耐摩耗性を評価することができた。具体的には、Al2O3ボールを用いて回転速度800 rpm、荷重500N、ボール送り速度0.01mm/rev、加工回数1 回でバニシング加工した加工面はRa 0.482μm と、バニシング加工前(旋盤加工面)のRa4.045 μm と比べて表面粗さRa が約10 分の1まで低減することを見出した。また、最表面に厚さ10μm 程度の超微細組織と深い領域までの塑性流動組織が形成されており、表面付近でHV699と極めて硬い値が得られた。最表面では数10nm程度まで結晶粒が微細化しており、この塑性ひずみによる結晶粒微細化により硬さが上昇したと言える。さらに、バニシング加工面の耐摩耗性についは、Al2O3、800rpm、500N、0.01mm/rev、加工回数1回のバニシング加工面は、バニシング未加工面と比べて比摩耗量が約10 分の1となり、飛躍的に耐摩耗性が向上するという研究成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、バルクナノメタルの摩擦加工における摩擦条件(摩擦速度、荷重、相手材、雰囲気、試験時間)が、摩擦表層の金属学的性質(組織、材料組成、結晶粒径、結晶方位、転位密度)と力学的特性(硬さ)に及ぼす影響を明らかにして、バルクナノメタル摩擦表層がさらに微細化するHPT加工/摩擦条件を明確にする。さらに、この組織微細化するメカニズムも明らかにする。また、超々微細組織を持つ摩擦表層の摩擦摩耗特性を評価し、摩擦表層の性質とトライボロジ-特性の関係をHPT加工/摩擦条件にフィードバックして、耐摩耗性に優れた金属表層を開発する。 摩擦加工した試験片は、摩擦方向に垂直および平行な断面で切断し、摩擦表層の金属学的・力学的特性の調査を行う。具体的には、光学顕微鏡、FE-SEM、EBSD、TEM(透過電子像、電子回折像)による結晶粒サイズ・結晶方位関係・転位密度などの微細構造組織観察、および微小硬さ試験やナノインデンテーションテスターによる力学的性質(硬さ・ヤング率)の深さ方向の変化の調査を行い、粒界形成メカニズムや結晶粒超々微細化機構を解明し、摩擦表層が微細化するHPT加工/摩擦条件を明確にする。 生成した摩擦表層のトライボロジー特性は、大気中でも摩耗試験が可能な雰囲気制御ボールオンディスク摩耗試験機を用いて摩耗試験を行い、超々微細組織摩擦表層の耐摩耗性を評価する。
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Causes of Carryover |
使用額差額は284円と極僅かであり、計画通りの状況と言える。
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Research Products
(6 results)