2017 Fiscal Year Research-status Report
粘弾性ナノ流体による抵抗低減流れにおける伝熱促進に関する基礎研究
Project/Area Number |
16K06074
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
本澤 政明 静岡大学, 工学部, 准教授 (50516185)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 粘弾性ナノ流体 / 粘弾性流体 / ナノ流体 / 抵抗低減 / 伝熱促進 |
Outline of Annual Research Achievements |
粘弾性流体とは,粘性に加えて弾性的な性質を併せ持つ流体で,ある種の界面活性剤水溶液や水溶性ポリマー溶液がこれに相当する.粘弾性流体の流れの大きな特徴は乱流下において流れの摩擦抵抗を大幅に低減することが挙げられる.しかしながら,抵抗低減流れでは,乱流拡散の抑制により伝熱が大きく低下してしまう.一方で,粒径がナノオーダーの超微粒子を水等のベース流体に添加した液体はナノ流体と呼ばれ,ナノ粒子添加によりベース流体と比較して熱伝導率の増加が見られ,伝熱促進効果が期待されている.本研究では,先に記した粘弾性流体による抵抗低減流れにおける伝熱低下に対して,粘弾性流体にナノ粒子を添加した流体(本研究では,粘弾性ナノ流体と呼ぶ)により伝熱低下の改善,もしくは伝熱促進を図ることを目的としている.今年度は研究実施2年目にあたり,実施計画に基づき研究を進め,次のような結果が得られている. 本研究では,市販のナノ流体に界面活性剤を溶解することにより,粘弾性ナノ流体を作成した.粒子形状,粒径,熱伝導率が異なる酸化アルミニウム,酸化ケイ素(シリカ),カーボンナノチューブのナノ流体に界面活性剤を種々の濃度で添加して,粘弾性ナノ流体を作成し,抵抗低減率と伝熱特性について調べた.界面活性剤溶液による抵抗低減効果はナノ粒子の添加により弱まる傾向がある一方で,大きな伝熱改善のためには多くのナノ粒子の添加が必要となるというトレードオフの関係が得られ,より大きな効果が得られる濃度条件や粒子を検討した.この結果,現状ではカーボンナノチューブの粘弾性ナノ流体において抵抗低減流れの伝熱抑制に対して,他の粒子と比較して大きな伝熱改善効果が得られる可能性があることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実施計画の29年度以降の計画に記したとおり,実際に3種類のナノ粒子により粘弾性ナノ流体の作成を行い,流動場において抵抗低減効果や伝熱改善効果の測定を行った.ナノ粒子の種類のみならず,粒子濃度,界面活性剤濃度を種々に変化させて実験を実施し,抵抗低減流れの伝熱低下に対するナノ粒子添加による伝熱改善に向けて,今後の研究を進めていくうえで指針となるような濃度条件,粒子条件等を得ることが出来たと考えており,研究は当初の計画以上に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,今年度得られた結果から,ファイバー系のナノ粒子を用いて粘弾性ナノ流体を作成し,基礎物性測定,流動下における抵抗低減と伝熱特性の測定を行う予定である.また,本研究では,粘弾性ナノ流体のレオロジー特性を調べることも重要であり,外注によりレオロジー特性も行うことで,現象の解明に結びつける予定である.また,研究計画に記した層流下における粘弾性ナノ流体の流動特性も興味深い課題であり,超音波流速分布形を用いて,この流動特性も調べる予定である.
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Causes of Carryover |
今年度は,研究費を主に実験装置の補修・ナノ流体の購入・成果発表旅費に使用した.このため,今年度はほぼ当初の予定通りの予算消費が行えたと考えている.しかしながら,昨年度に抑えることが出来た高額なセンサー類や装置作成費について未使用となり,次年度に繰り越すこととした. 次年度の使用計画としては,引き続きナノ流体の購入を予定しており,レオロジー特性を調べたいことから外注のレオロジー測定に当初の計画以上に充てる予定である.また,研究の最終年度であるため,国内外の会議に出席し,成果発表を行い,論文投稿を行う予定で,旅費や論文投稿料として使用する計画である.
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Research Products
(6 results)