2016 Fiscal Year Research-status Report
固有直交分解を用いた遷音速多段軸流圧縮機の高精度乱流解析手法の開発
Project/Area Number |
16K06087
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山田 和豊 九州大学, 工学研究院, 助教 (00344622)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大規模数値解析 / 遷音速多段軸流圧縮機 / ガスタービン / 流動損失 / LES |
Outline of Annual Research Achievements |
先進的な高効率ガスタービンには遷音速軸流圧縮機が採用される.遷音速軸流圧縮機は,試作実験によりその内部流れ場を正確に把握すること自体が困難であるため,数値シミュレーションによる内部流れ場の高精度予測が重要な設計技術となる.多段軸流圧縮機の全段・全周計算は大規模な計算資源を要求し,稠密格子による高精度な数値予測が困難となっている.本研究では,位相遅れ境界による単流路多段解析に固有直交分解を導入し,稠密な計算格子を用いた大規模LES(Large Eddy Simulation)解析を実現する.本手法によるガスタービン用遷音速多段軸流圧縮機の解析を通して,損失モデル構築のための流動メカニズム解明および圧縮機空力設計技術の高度化に資する流動損失の定量評価を実施する. 初年度は,大規模計算においては計算コードの並列化は必須であるため,固有直交分解を用いた位相遅れ境界の実装方法に関して検討を行った.これに伴い,関連する文献について再度調査を実施した.また,LES解析の比較検証のための計算を実施した.解析対象とする遷音速軸流圧縮機に関して,全段・全周の大規模計算を実施した.この計算では,翼間流路当たりの格子数が比較的少なくなるため,DES(Detached Eddy Simulation)を適用した.さらに,mixing plane法を用いた単流路RANS(Reynolds Averaged Navier-Stokes)解析についても実施した.DES解析およびRANS解析の結果に関して,知的可視化を用いた流動解析を実施し,流動損失の比較およびその発生メカニズムを調査した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
稠密格子を必要とするLES解析では計算は大規模となり,本研究の場合,翼間当たり数億セルの計算格子,計算領域全体では数十億格子の大規模計算を企図している.そのような大規模計算では並列計算は必須となる.位相遅れ境界を導入する計算コードの並列化は既に完了しており実績もあるが,導入する位相遅れ境界について並列化が必要となる.位相遅れ境界として導入予定である固有直交分解を用いる方法では,境界面全体に関してデータ圧縮を行うため,領域分割による並列化においてはその実装方法に注意が必要である.そこで,位相遅れ境界について再度文献調査および検討を実施した. 上記の検討の一方で,LES解析の比較検証に必要となる計算を実施した.解析対象とする遷音速軸流圧縮機に関して,全段・全周の大規模DES計算およびmixing plane法を用いた単流路RANS解析を実施した.LESによる流動解析に先立ち,これらの計算結果に関して,流動損失の比較およびその発生メカニズムを解析するとともに,翼列干渉に伴う非定常効果について調査した.
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Strategy for Future Research Activity |
固有直交分解を用いた位相遅れ境界については,並列化による領域分割の影響を調査する必要がある.これは実装時の問題であり本質的な問題ではなく,研究計画の見直しが必要となる問題でもないが,調査の必要があり時間を要する.本研究の最終目的は,稠密格子を用いた高精度乱流解析により,知的可視化を適用した流動メカニズムを明らかにし,損失モデルを構築することにある.そこで,固有直交分解を用いた位相遅れ境界の並列化における領域分割の調査と並行して,実装において並列化に影響されない別の位相遅れ境界の適用を実施することにする.この位相遅れ境界に関して,簡単な計算で検証を実施した後,遷音速軸流圧縮機に適用し実施でき得る大規模LES解析を実施していく.
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