2017 Fiscal Year Research-status Report
蛍光法による界面活性剤抵抗低減流れにおけるミセル組織構造の空間分布の解明
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16K06090
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
脇本 辰郎 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (10254385)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 抵抗低減 / 界面活性剤 / ミセル / 蛍光測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度までに,界面活性剤水溶液の円管内流れの抵抗係数の測定と蛍光プローブ法によるSISの局所検出をレイノルズ数Re=100~100000の範囲で行い,Reの増加に伴うSISの形成・崩壊と抵抗低減効果の発生・消失に相関があることを明らかにしていた.平成29年度は,平成28年度に製作した高空間分解能の蛍光測定の光学系(測定体積0.2mm立法程度)を用い,特に壁面近傍のSISの形成状態について詳しく調べた.前述の通り,SISはある一定のReを超えると形成され,さらに高いReで崩壊する性質を有するが,形成・崩壊するReは半径位置に依存する.半径位置を細かくトラバースして計測し,抵抗係数の結果と比較した結果,壁指標y+ = 15の位置でSISが形成されると抵抗が減少し,崩壊し始めると,乱流遷移が生じて抵抗低減効果が消えることがわかった. 上記の結果をふまえて,抵抗係数や蛍光の測定とともに,レーザードップラー流速計(以後,LDVと表記)による管軸方向速度の測定を行った.SIS形成前のRe=1400の層流流れの平均速度分布は放物型速度分布と一致するが,抵抗低減時のRe=14000の平均速度分布は放物型と1/7乗則型の中間的な分布を示した.また,Re=14000の活性剤溶液の乱れ強度は,溶媒のそれと比較して,壁付近で大きく低減される分布となった.速度と測定位置を壁指標で整理して溶液と溶媒の速度を比較すると,溶液の平均速度はy+<15では溶媒のそれと概ね一致するが,y+≧15では大きくなる傾向が見られた.また乱れの強度分布のピーク位置が,溶媒の場合y+ = 10付近であるのに対し,溶液ではy+ = 20となりピーク位置が壁面から離れる結果となった.以上の結果から,SISがバッファー層の比較的壁に近い領域(y+=10付近)における乱れの生成を抑制していることが推察できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に製作した蛍光測定の光学系を用いて,高い空間分解能で蛍光のトラバース測定を行い,SISの形成・消失場所の詳しい調査を行うとともに,今年度,新たにレーザー流速計(LDV)により管軸方向速度の計測を行った.トレーサーが抵抗低減効果に影響を与える可能性も考えられたが,トレーサー添加による乱流遷移レイノルズ数等の変化は現れず,抵抗低減流れにおける速度場をLDVで測定することができた.当初は2次元測定を予定していたが,予定機材が故障等の理由で使用できなかったため,代替の1次元のLDVで管軸方向のみの計測を行った.管軸方向のみの測定であっても,活性剤添加による平均速度分布や乱れ強度分布の変化は顕著に現れており,一軸方向の速度成分のみの計測であっても,SIS形成による乱流抑制効果について考察できるものと考えている.ただし,現在のLDVの光学系の配置では測定体積が大きい(0.5mm立方程度).レーザーや受光光学系の改修を行ってこれを小さくする必要がある. また,当初の計画では蛍光プローブとしてピレンカルボキシアルデヒド(以下PCA)の他にジフェニルヘキサトリエン(以下DPH)を用いる予定であった.PCAはミセルに取り込まれると蛍光が減衰するので,ミセルが大量に発生する高溶液濃度の場合には,ミセルへの取り込みで蛍光が強くなるDPHを使用する必要があるが,現状行っている400ppm以下の濃度ではPCAで十分計測できている.当面は,LDVの改修を優先させることとして,PCAのみで計測を行う.
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」で記述しているように,現状ではLDVの測定体積が蛍光測定装置の測定体積より大きくなっており,乱れの空間構造の詳細が分からない.また,壁面でのレーザー光の反射等の影響によりy+≦8の領域についても測定できていない.平成30年度はLDVの光学系を見直して,測定体積を小さくするとともに,壁近くが測定できるようにする.この改修を行った上で,蛍光および速度を管断面方向に細かくトラバース測定し,乱れの構造とSIS形成との関係について詳しく調べる.また,当初計画通り,高感度カメラを用いた蛍光の2次元計測(画像計画)も試みる予定とする.
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Causes of Carryover |
H29年度にレーザー流速計による流速測定を行ったが,機器の調整に予定外に時間を費やした.そのため,まずは早期の計測の実現を優先し,流速測定のための光学系やトラバーサーを簡易なものとした.「今後の研究の推進方策」で記述したLDV測定の測定体積の問題はこれに起因している.当初より簡易な構造としたため,支出が計画より少なくなっている.今年度は,未使用分の予算を用いて光学系やトラバーサーの改修に必要な部品を調達し,当初予定の完全なものとする予定である.
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Research Products
(4 results)