2016 Fiscal Year Research-status Report
経鼻呼出療法のComputer-Aided Medicationに関する研究
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16K06098
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Research Institution | Gifu National College of Technology |
Principal Investigator |
山本 高久 岐阜工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (10345960)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 数値流体力学解析 / エアロゾル / 経鼻呼出療法 / ドラッグデリバリー |
Outline of Annual Research Achievements |
経鼻呼出療法は,難病指定を受ける好酸球性副鼻腔炎の有効な治療方法として注目を集めている。本治療ではエアロゾル化したステロイド薬剤を口から一旦吸入し,その後,経鼻呼出することにより,篩骨洞副鼻腔などの鼻腔深部に薬剤を送達させる。すなわち外鼻孔から薬剤を投入するネビュライザ治療とは,薬剤の輸送経路が真逆になっている。このような人為的な呼出により薬剤を輸送するため,個人差(ある人は強く呼出し,ある人は弱く呼出するなど)が現れやすい。事実,臨床的にも治療効果が顕著に現れる症例とそうでない症例とが確認されている。そこで本研究では工学的な見地から呼出条件と薬剤の輸送特性との相関を明らかにするとともに,個々の患者に対して,より治療効果が得られるであろう呼出条件を探索することを目的としている。 本年度は好酸球性副鼻腔炎の10症例に対してスパイロ計測を行い,呼出条件と治療効果発現との相関を調査した。その結果,呼出流量15L/min前後(平静時の呼出条件に相当)で治療効果が得られている症例が多いことを発見した。 この知見をもとに,好酸球性副鼻腔炎エアロゾル輸送の数値流体力学解析を行った。解析モデルにはオイラー・ラグランジェ法を用い,連続相にはLESモデルを適用した。呼出流量は15L/min(平静時の呼出条件), 90L/min(高負荷時の呼出条件)の2条件を検討した。その結果,呼出流量の増加に伴い鼻咽頭領域でのエアロゾル粒子の慣性衝突が顕著となることが明らかになった。本結果は大きな呼出流量では,ターゲットとしている鼻腔深部への薬剤の送達を妨げている可能性があると考えられる。また,粒子沈着の非定常特性に着目すると,経鼻呼出開始直後に沈着量が不安定な時間帯があることが明らかになった。このような呼出流量の影響,沈着特性の非定常性が経鼻呼出療法の治療効果発現に影響を及ぼすものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
連携研究先の関西医科大学との協力体制が確立しており,症例データの収集・集積,その評価・分析を円滑に進めることができている。特に呼出条件と治療効果発現との相関を明らかにできており,本研究成果は好酸球性副鼻腔炎治療における臨床学的貢献は極めて大きいものと考える。 また,数値流体力学解析においては,経鼻呼出療法の解析・評価には非定常特性を考慮する必要があることを明らかにした。既往の鼻咽頭領域の数値流体力学解析の研究ではそのほとんどが定常解析で行われている。本解析結果は,経鼻呼出療法の研究を進める上では既往の手法をそのまま用いることはできず,非定常性に着目した解析・評価を行う必要があることを示唆するものと考えられる。 以上のこれまでに得られた知見を鑑み,本研究はおおむね順調に進捗しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は上述の通り臨床データの収集・集積ならびに数値流体力学解析による経鼻呼出療法時のエアロゾルの輸送特性の解明に注力してきた。今後は以下の点について研究を推進していく: 1)経鼻呼出時の臨床データ(呼出された粒子量など)の計測を行い,粒子沈着がどの程度行われているのか,また,呼出条件が沈着に及ぼす影響を,臨床的・実験的に明らかにする。 2)様々な症例について2相流LES解析を行い,経鼻呼出条件とエアロゾルの輸送特性との相関をより詳細に明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究計画では生体模型の製作を今年度,臨床データ(呼出時のエアロゾルの鼻咽頭内沈着量)の計測実験を次年度行う予定でいたが,協力医療機関の都合を鑑み,後者の一部を本年度先行して実施したことにより,次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には,当初予定していた生体模型の製作ならびに生体模型を用いた鼻咽頭内の呼出流れの可視化実験を実施する予定であり,発生した次年度使用額はこれにあてる予定でいる。
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Research Products
(5 results)