2017 Fiscal Year Research-status Report
マイクロスリットチャネル内でのサブクール沸騰熱伝達促進に関する研究
Project/Area Number |
16K06106
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
鹿野 一郎 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (10282245)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 沸騰熱伝達 / 限界熱流束 / マイクロチャネル / 電気流体力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子機器の発達により高発熱電子機器の冷却が問題になっている。例えば、レーザダイオードを使った業務用プロジェクターの冷却には、省スペース・静音性を考慮して水冷方式が採用されている。最近、プロジェクションマッピングなどの新しい使い方により高輝度なプロジェクターの需要が高まり、さらに性能の良い冷却装置が求められている。そこで、本研究では、水冷式よりもさらに冷却能力の高い沸騰熱伝達を利用した強制対流式マイクロ熱交換器に関する研究を行った。沸騰熱伝達を促進するために、沸騰面上の蒸気泡を強制的に排除できるマイクロスリット電極を提案した。マイクロスリット電極は、スリット幅1000μm、電極幅800μmで厚みが1400μmである。沸騰面は直径15mmの円形とし、無酸素銅である。沸騰面から600μmの高さに電極を設置した。初めに、沸騰面を銅平滑面にした場合と、ダイヤモンド微粒子を電着して表面処理を施した場合の沸騰熱伝達の違いについて調べた。次に、沸騰面とマイクロスリット電極間に電界を印加した場合の熱伝達促進について調べた。さらに、マイクロスリットチャネルに流入させる流量と液温を変化させた場合の熱伝達の変化を調べた。最後に、昨年度構築したモデル式と実験結果を比較し、流量変化と流入液温の変化が及ぼす熱伝達性能について詳細に考察した。以上の結果、電界印加と表面処理により、電界を印加しない場合に比べて、熱伝達性能が8倍を示した。モデル式では、流量の増加及び流入温度低下による沸騰発現の抑制効果が考慮されておらず、実験式との差がみられた。今後、詳細な観察と実験により、沸騰発現抑制効果について調べていく予定である。 以上の結果は、査読付き論文1件、国内会議2件、査読付き国際会議1件で報告された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書(様式D-2-1)に記載した「研究の目的」に対する当該年度の進捗は、問題なく計画通りに進んでいる。昨年度(平成28年度)に新たな課題が2点浮上していた。一点目は熱伝達率の更なる向上、二点目は伝熱面温度の低下である。電子機器部品を冷却する場合、部品内部の最大温度は85℃以下にする必要があるため、部品表面冷却温度を60℃以下にしなければならない。現状の冷却面温度は75℃付近であり、さらに冷却面温度を低くする必要があることが分った。熱伝達率の向上は、従来の計画(マイクロスリット電極による電界印加、ダイヤモンド電着による沸騰熱伝達促進)で解決できることが分ったが、伝熱面温度の低下は冷媒の沸点に依存するため、新たに冷媒の選定が必要になった。冷媒の選定は、既に平成29年度に実験を行い、冷媒の再選定を行った。従って、特に計画が遅れることはなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
沸騰熱伝達は、気泡に働く浮力の影響でマイクロスリットチャネルの姿勢変化により性能が変化することが分っている。従って、平成30年度は姿勢変化による冷却性能の変化を調べる計画である。既に平成29年度に、予備実験を行っており、実験装置の準備や計測に問題はないので、これから詳細に調べていく予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 支出金額にわずかな端数が生じ、43,886円の次年度使用額が生じた。 (使用計画) 計画的に次年度に使用する予定である。
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