2016 Fiscal Year Research-status Report
燃焼制御最適化のためのエーテル燃料の詳細反応機構構築
Project/Area Number |
16K06112
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
酒井 康行 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (70511088)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 燃焼 / 計算化学 / 内燃機関 / 自着火 / 詳細反応機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
H28年度(初年度)は,量子化学及び反応速度論的手法を用いて反応速度定数を求め,自着火過程を支配する低温酸化反応機構に対してエーテル結合が与える影響を考察した.計算対象とした素反応群は,アルキル型ラジカルのβ分解反応,アルキルペルオキシ型ラジカルの分子内水素移動反応および協奏的HO2脱離反応,ヒドロキシアルキル型ラジカルの環状エーテル生成反応である.エーテル系化合物は分子内水素結合が存在するため,当初,長距離間相互作用を考慮した構造最適化の必要性が予想されたが,いくつかの代表的な素反応の反応速度定数の検証結果,計算精度および計算コスト等を総合的に勘案して,その必要性はないと判断した.量子化学計算はCBSQB3法,反応速度定数計算には遷移状態理論を利用した.文献にあるアルカンの素反応の反応速度定数との比較から,α位が関与する反応にエーテル結合の影響が現れることを明らかにした.つまり,エーテル燃料の詳細反応機構の構築には,α位の関与する反応の反応速度定数が新たに必要であり,それ以外の反応については既に提案されているアルカンの反応速度定数が利用可能であることを示した.一方で,これまでに構築したジエチルエーテルの詳細反応機構を利用して反応経路解析および感度解析を行い,エンジン上死点付近の温度・圧力環境下ではアルキル型ラジカルのβ分解反応が着火遅れ時間の温度依存性に大きく効いていることを明らかにした.初年度に得ることのできたこれらの知見は,次年度以降のエンジン環境下を想定した着火シミュレーションに必要不可欠なものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代のエンジン燃焼技術には,より高効率でクリーンな燃焼,様々な燃料利用に対応できることが求められている.エーテル燃料の混合によるガソリン及び軽油の燃焼制御の可能性について,理論計算から得られた学術的知見を基に考察することが本研究の最終目的である.初年度はエーテル燃料の詳細反応機構の構築に必要な素反応群の反応速度定数を求めた.また,これらを利用してジエチルエーテルの自着火機構の解析を行い,詳細反応機構の精度向上のために再検証が必要な素反応を明らかにした.計画書に記載した初年度の研究項目はほぼ終了している.また,当初の計画を大幅に上回る研究成果は出ていない.したがって,自己評価は「おおむね順調に進展している」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度には,セタン価,オクタン価の実測値があるエーテル燃料の詳細反応機構を構築する.詳細反応機構を利用して0次元の燃焼シミュレーションから着火の発生する限界圧縮比を求め,セタン価,オクタン価の実測値との比較を行い詳細反応機構の妥当性を検証する.この一連の過程の中で,初年度に求めた反応速度定数の再検証を行い,詳細反応機構の精度向上を目指す. H30年度には,燃料の化学構造と着火特性の相関関係を明らかにするために,H29年度に構築した詳細反応機構を利用して0次元反応計算を行い,炭素骨格や官能基の位置に着目して,燃料化学構造と着火遅れ時間の整理を行う.さらに,エーテル燃料の混合によるガソリン及び軽油の着火制御の可能性を検討するために,0次元エンジンモデルを利用した燃焼シミュレーションを実施する.ガソリン及び軽油の詳細反応機構は,文献または研究代表者が構築したものを利用する(H26-30年度,戦略的イノベーション創造プログラム「革新的燃焼技術」).燃料化学構造と着火特性の相関についての知見を基に,エンジン燃焼環境下で着火及び火炎伝播に対する促進または抑制に有効なエーテル燃料を探索する.
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