2016 Fiscal Year Research-status Report
冷凍サイクルにおけるナノオイルの適用に関する基礎研究
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16K06116
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
福田 充宏 静岡大学, 工学部, 教授 (70199222)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本澤 政明 静岡大学, 工学部, 助教 (50516185)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 冷凍サイクル / ナノ粒子 / 潤滑油 / ナノオイル / 凝集 / 閉塞 |
Outline of Annual Research Achievements |
冷凍空調サイクルにおいて,ナノ粒子をサイクルに混入することにより性能が向上するといった報告がなされているが,ナノ粒子の添加の影響と効果については不明な点も多く,実用化はされていない.本研究では,ナノ粒子を含んだ冷凍機油(以下,ナノオイル)におけるナノ粒子の分散や物性値について検討し,また,ナノオイルの微小な隙間における流動状態や潤滑状態を調査することにより,冷凍空調サイクルにおけるナノオイルの実用化に向けた基礎データの蓄積を目的としている. まずナノ粒子を冷凍機油中に分散させる処理方法と添加剤の影響について検討したところ,R410A冷媒に対して良く用いられるPVE(ポリビニルエーテル)油とCuOまたはAlO3の組合せでは,分散剤を用いても長期にわたって安定した分散を得ることはできなかった.しかし,分散剤を用いない場合でも凝集したナノ粒子の平均粒子径は約200nmであり,機械的な撹拌を行うことで安定した物性値も得られたことから,ナノ粒子のサイクルへの混入に対して,粒子の凝集自体はそれほど問題にならないと考えられる. 熱伝導率,粘度,比誘電率いずれの物性値もナノ粒子の混合により増加したが,ナノオイル/冷媒混合物については,粒子の混合により,冷媒溶解度の減少が見られ,ナノ粒子添加による物性値の増加率はナノオイル単体の時と比較して小さくなった. 一方,隙間高さが10~100umの微小隙間にナノオイルを流し,その流動特性を調査したところ,粒子の質量流束がある特定の範囲において流路入口部で閉塞が生じた.これは,粒子間の分子間力や流速差による粒子の凝集と,流れによる凝集の阻害もしくは凝集体の破壊が相互に作用した結果であると考えられる.また,流路高さが10uの隙間内におけるナノオイルの流動では,粒子の体積濃度が小さいほど流動抵抗が大きくなるという特徴的な結果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に予定していた,ナノ粒子を冷凍機油中に分散させる処理方法と,分散に対する添加剤の影響については,良い結果が得られたとは言いがたいが,結果としてはナノ粒子が潤滑油中で凝集している状態であっても,冷凍サイクル内での潤滑油としての使用に対しては問題がないと考えられる.今後も継続して,動的光散乱法による粒径分布測定を行うことにより,分散に関する基本的な知見を得ていく必要があるが,物性値の測定と合わせ,およそ計画通りに進んでいる.一方,微小隙間におけるナノオイルの流動状態に関しては,平成29年度に検討する予定であったものを,前倒しにして検討することができたが,隙間が10umの場合に,粒子の体積濃度が小さいほど流動抵抗が大きくなるという特徴的な結果等については,その原因およびそれを支配するパラメータなどが未解明であり,平成29年度も継続して試験を行う必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
ナノオイルの基本的な処理および特性に関しては,平成28年度の研究を引き続き行い,ナノ粒子の凝集度についてさらに詳細に検討するとともに,ナノ粒子の凝集が微小な隙間における流動に与える影響について検討を進める.冷凍空調サイクルにおいてナノオイルの適用が認められていない大きな原因は,キャピラリーチューブ等の膨張装置においてつまりが発生しないかといった不安が払拭できないためであり,キャピラリーチューブにおける七オイルを含む流体の流動に関しては,ナノ粒子の堆積具合を評価することにより,ナノオイルにおけるナノ粒子の限界濃度等の基準について検討する. また,ナノオイルの特徴である潤滑性能の向上に関しては,実際の圧縮機内のしゅう動状態を模擬したモデル実験装置を構築し,ナノ粒子によるベアリング効果を検証する予定である. 平成30年度はこれらの研究をさらに進めていくとともに,実用研究に向けた準備として,粒子濃度の計測法の開発を試みる.冷媒にナノ粒子を混入させることにより,熱交換器における伝熱特性を向上させる研究がいくつか行われているが,冷凍サイクル中においてナノ粒子は冷凍機油中に存在しており,圧縮機内で微小なミストとなった冷凍機油が冷媒とともにサイクルに排出されたとき,その油に含まれるナノ粒子量が伝熱現象や膨張装置のつまりに関与することとなる.しかし圧縮機から吐き出される油に含まれるナノ粒子量についてはこれまで検討された例がなく,まずは粒子濃度の計測法の確率が求められている. 一方,ナノ流体の一種である磁性流体または磁性粒子を潤滑油に混入したナノオイルは,その流動を磁場の印加によって制御することができ,磁性粒子を混合したナノオイルの流動制御とその応用に関しても検討をしていく.
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Causes of Carryover |
恒温槽循環装置を購入予定であったが,研究室所有の恒温槽循環装置を使用したため,その分次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は簡易クリーンブースを購入予定であり,その費用に充てる.
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] ナノオイルの物性計測2016
Author(s)
牧田 尚樹,本澤 政明,福田 充宏
Organizer
2016年度日本冷凍空調学会年次大会
Place of Presentation
兵庫県神戸市 神戸大学六甲台第2キャンパス
Year and Date
2016-09-07