2017 Fiscal Year Research-status Report
微細表面構造を持つパリレン膜流路と操作用磁気プローブを組合わせた流体デバイス
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16K06195
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
今井 郷充 日本大学, 理工学部, 教授 (20369953)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 液滴搬送 / ロータス効果 / リキッドマーブル / 転落角 / 転落加速度 / ころがり特性 / 突起面積比 / μTAS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では化学分析やバイオテクノロジー等で使われる微小液滴の搬送方法に関する基本的な特性を把握することを目的としており,当該年度は以下の方法を検討した. (1) バイオミメティクスを応用したリキッドマーブルによる微小な液滴のころがり搬送 液滴と粒子を分離させるため本研究では撥水性の磁性粒子を用いることを前提とし,磁性粒子がテフロン等の撥水性粒子よりもころがり特性において優れていること,粒径を小さくすることで転がり易くなることなどの基本特性を実験的に明らかにした.粒子に関しては粒径を小さくすることで材質によらず転がり易くなる傾向があり,粒径からころがり搬送のためのリキッドマーブルの最適化の方針を示した.また本研究において行った最小の液量は0.1μl(φ0.6mm)であり,この極微量な液滴も傾斜角20°で容易にころがることが確認できた.また搬送後の粒子の分離が永久磁石の使用により容易に行えることを確認し,この操作を微小な突起面上で行うことにより分離後の液滴は球形を保ち,その後の液滴のみの移動が容易になることも示した. (2)表面微細構造による液滴の搬送性能の基本特性 表面に微細な突起を形成することにより液滴の搬送を容易にするいわゆるロータス効果に関して,突起の面積比をパラメータとして転落角および転落加速度等の基本的な動特性を明らかにした.基板はシリコン(Si),液体は水(液量:5~20μl),突起は直径30μmの円柱とし,ピッチを変えることで面積比を変化させた.突起間に液滴が落ち込まない面積比の範囲において,突起の面積比をできるだけ小さくすることにより転落加速度が向上することを確認した.なお本実験おいて得られた最適な面積比は約1%であった.また転落加速度から液滴の挙動(すべっているか転がっているか)を考察した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)バイオミメティクスを応用したリキッドマーブルによる微小な液滴のころがり搬送 リキッドマーブルのころがり特性から,設計ガイドラインを得ることを目的とし,これを達成することができた.リキッドマーブルのころがり性能は粒子の影響が大きく,材質および粒径をパラメータとして,内部の液体として水を用いた場合の転落角やころがり加速度を調べた.磁性粒子はテフロン(PTFE)に比べて転がり性能はよく,この原因が磁性粒子の方が内部の水の表面張力が大きいことにより形状が球形に近く,転がり時における変形が回復し易いことに影響されることがわかった.磁性粒子を用いる理由は磁石を用いて粒子を分離することが目的であるが,ころがり特性も良いことが確認できた.これらをもとにリキッドマーブルを搬送に用いる場合の粒子や基板の傾斜角についての設計法を示した. (2)表面微細構造による液滴の搬送性能の基本特性 微細突起をもつ傾斜表面において液滴の加速度等の動特性に関する測定はあまり行われておらず,この特性を明らかにした.角柱(15μm×15μm,高さ30μm)の突起を表面に配列させた流路において,ピラーのピッチを変えることで面積比を変え,液滴(水)の転落加速度を測定した.面積比を小さくすることで空気トラップ量が多くなるので転落角が小さくなり,また転落加速度も大きくなった.しかし面積比が約1%になると(液量:5~20μlで測定),表面が水平の場合液滴が突起間に落ち込みロータス効果が発揮できなくなった.傾斜させた場合では面積比が約2%になるとこの現象が発生し,突起間への落ち込みが起こりやすくなることがわかった.また転落加速度は,物体が摩擦なしで滑る場合の加速度(約3500 mm/s^2)よりも大きい場合があり,液滴の変形が加速度に影響していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
液滴の搬送に関しては,使われ方から簡単な構造で,操作が容易かつ使い捨て可ということを考慮してデバイスを開発することを方針とした.大別して液滴のまま搬送する方法としては表面に微細な突起を形成するロータス効果による方法,液滴の形態を変えて搬送し搬送後もとに戻す方法では,リキッドマーブルを用いる方法が上記の条件に適合していると考えられる.リキッドマーブルについては平成29年度の研究により特性や設計法を得ることができ,ほぼ計画を達成できた.今後はロータス効果による方法に関して,より性能を高めるための方法を検討する.液滴に衝撃や振動を与えることが有効と考えられるので,この効果を定量的に把握する.具体的には,突起の面積比をパラメータとして,加振力と転落角や転落加速度の関係,また加振力の方向による効果を検討する.さらに加振力を与えた場合に液滴が滑り始める際の形状や挙動を高精度カメラにより詳細に把握する.これらにより液滴が移動する際のメカニズムを解明し,最適な表面形状を設計するための知見を得る.
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Causes of Carryover |
(1)次年度使用額が生じた理由 加工予定であったものや購入予定であったものが必要なくなり,そのため次年度使用額が生じた.詳細を以下に示す.突起パターンの製作において,加工上の失敗や,設計値を変更する必要が生じた場合のために数回の加工を行う予定であったが,1回で済んだ.また液滴の挙動撮影用に,スームレンズや特殊な照明が必要と考え予算に組み入れていたが,既存のもので対応可能であった. (2)次年度使用額の使用計画 次年度は液滴に加振を与えて性能を向上することを主な目標としており,加振器,加振器用アンプの購入や治具の製作費とする.また液滴が動き始める時の変形や挙動を正確に把握し,突起パターン設計にフィードバックするため,マクロ撮影用レンズや挙動計測用の蛍光試薬などの購入にあてる.
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Research Products
(2 results)