2017 Fiscal Year Research-status Report
動作中の下肢アライメント評価に基づく動作異常の検出
| Project/Area Number |
16K06204
|
|---|
| Research Institution | Hakodate National College of Technology |
|---|
Principal Investigator |
川上 健作 函館工業高等専門学校, 生産システム工学科, 准教授 (70353216)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
| Keywords | 動作解析 / バイオメカニクス / 膝関節アライメント |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究では，前年度に検討した歩行中における動的下肢荷重線の算出方法を用いて，健常者の歩行解析を行い歩行動作中の下肢アライメントおよび下肢荷重線を算出し，そのデータの歩行中の動的変化とそれぞれの相関性を評価することにより，本方法が膝アライメントの動的評価を行えることの検証を行った．健常者9名における歩行解析から下肢アライメントの指標である前額面における大腿脛骨角度FTAと下肢荷重線と膝関節中心の垂直距離を求め，それぞれの値と下肢荷重線の膝関節面通過位置の内外側位置との相関を検討した．その結果，立脚期における初期接触から荷重応答期にかけての範囲では，スピアマンの順位相関係数においてFTAと下肢荷重線の内外側位置，膝関節中心距離と下肢荷重線の内外側位置にはいずれも有意な負の強い相関が認められた．下肢疾患患者においては，この初期接触から荷重応答期の範囲で異常動作が認められることが知られている．本年度の結果により，本方法でこの範囲の膝関節アライメントを評価することができると思われるため，動作異常による膝アライメント変化を捉えることができると考えられた．さらに，現在，実際に下肢疾患患者の動作異常を検討するため，病院の検査で行われている下肢疾患患者の歩行解析において本方法で患者の下肢荷重線を評価してもらっている．
また，下肢荷重線の解析において，本方法における各関節中心座標と下肢荷重線の膝関節面通過点の算出プログラムを作成した．このプログラムを用いることにより病院においても3次元動作解析システムのデータから簡単に下肢荷重線の解析を行うことができるようになると思われる．このプログラムについても協力いただいている病院にて現在使用していただき，評価をしているところである．
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
整形外科分野の臨床診断やリハビリテーションでは，医師や理学療法士による主観的な動作観察に基づく診断もしくは異常動作の把握が大きな役割を担っている．異常動作を定量化する場合，光学式の皮膚マーカを用いた動作解析が広く行われているが，現在の動作解析システムでは，マーカの移動軌跡を追跡するものであり，関節の運動特性においては詳細に解析されているものの，運動中の動的な下肢のアライメント変化や下肢荷重線など生体力学的な解析はあまり進んでいない．そこで本研究では，歩行動作を対象として運動中においても下肢アライメント変化や下肢荷重線などが動的に解析できる動作解析方法を確立し，その方法により健常者および下肢疾患患者の動的な下肢機能評価を行うことにより動作異常が検出できるかを実験的に検討することを目的としている．
平成28年度はポイントクラスター法を基にして臨床歩行分析研究会の推定方法により股関節中心を推定する方法を用いて下肢荷重線による膝アライメントの動的評価方法を確立した．平成29年度はこの動的下肢荷重線の算出方法を用いて，健常者の歩行解析を行い歩行動作中の下肢アライメントおよび下肢荷重線を算出し，そのデータの歩行中の動的変化とそれぞれの相関性を評価することにより，本方法で膝アライメントの動的評価が可能かの検証を行った．その結果，初期接触から荷重応答期の範囲で膝関節アライメントを評価することができ，動作異常による膝アライメント変化を捉えることができると考えられた．また，下肢荷重線の解析において，本方法における各関節中心座標と下肢荷重線の膝関節面通過点の算出プログラムを作成した．現在，実際に下肢疾患患者の動作異常を検討するため，病院の検査において本方法とプログラムで患者の下肢荷重線を評価してもらっている．
以上の研究状況は，研究計画通りに進んでおり，おおむね順調に進んでいると判断する．
|
| Strategy for Future Research Activity |
平成30年度においては，本方法で評価される膝関節の動的アライメントが実際の膝関節への負荷にどのように関連しているのか更に検討する．そのために，現在のポイントクラスター法を基にして臨床歩行分析研究会の推定方法により股関節中心を推定する方法を用いた下肢荷重線の動的解析の被験者数を増やし健常者における下肢荷重線の動的変化を詳細に検討する．平成29年度は9名の解析となったため，被験者数を最低でも20名となるまで行う予定である．また，歩行解析の結果から逆動力学解析を行い，下肢関節の関節モーメントを算出し，荷重応答期などの歩行フェーズにおける膝関節屈曲角度変化の各ピーク時での膝関節アライメントの検討する．具体的には歩行中の膝屈曲伸展モーメントと下肢荷重線関節面通過点の前後位置，膝内外反モーメントと下肢荷重線関節面通過点の内外側位置の相関性を検討する．これにより，実際に膝に作用する負荷と本方法で評価する動的関節アライメントの関係を明らかにする．さらに，歩行中の膝関節における3次元関節運動と本方法で算出できる下肢荷重線の膝関節面通過位置のそれぞれの関連を検討し，3次元的な膝関節運動と膝関節アライメントの関係を検討する予定である．
また，協力いただいている病院にて実際の膝関節疾患患者の術前術後の歩行解析を行い，健常者のデータと比較することにより，下肢荷重線の解析により実際の疾患に伴う異常動作が解析できるのか，さらに治療による回復が評価できるか検討する予定である．
ビジュアル化については，平成29年度に作成した下肢荷重線関節面通過点算出プログラムを基に，算出された各関節中心と下肢荷重線の表示できるプログラムを作成する予定である．
|
| Causes of Carryover |
歩行解析実験における実験およびデータ解析に2名の人件費を計上していたが，一人の学生が授業カリキュラムの都合により予定していた時間の半分しか従事できず，その分の実験補助の謝金が次年度使用金額として生じた．また，12月に予定していた研究調査が校務の都合が付かず行えなかったこと，さらに3月に1ヶ月弱長期出張となってしまったため，この間の予定していた人件費および研究調査の旅費が次年度使用金額として生じた．
歩行解析実験における実験およびデータ解析に2名以上の学生をアルバイトとして雇い，歩行解析実験およびデータ解析の人数を確保する．また，行えなかった研究調査および成果発表の旅費として使用する予定である．
|
Research Products
(3 results)
