2016 Fiscal Year Research-status Report
衛星画像情報を考慮したアンサンブル学習による日射予測手法の開発
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16K06217
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加藤 丈佳 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (90283465)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真鍋 勇介 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 寄附研究部門助教 (30751143) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 太陽光発電 / 日射 / 予測 / 数値気象予報モデル / 機械学習 / 衛星画像 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、太陽光発電事業者が電力スポット市場に提出する翌日30分単位の発電計画値の策定の基礎となる日射量の前日予測手法を開発する。大気現象を支配する物理法則に関する数値気象予報(NWP)モデル、精度向上のための機械学習をそれぞれ2種類以上組み合わせて複数の予測手法を開発し、これらを組み合わせて100km四方単位の空間平均日射量の30分値に関する予測手法を開発する。さらに、衛星画像に基づき算定する日本付近のメソスケールの気象場情報を考慮して予測精度の向上を図るとともに、NWPモデルの各種気象予報値のばらつきおよび画像情報の空間分布に関するベータ回帰分析に基づき、予測の信頼度別の誤差範囲(信頼区間)を予測する手法を開発する。 平成28年度は、(1)WRF実行環境の構築、(2)複数の日射予測手法の構築、(3)4種類の日射予測手法の予測誤差の分析を計画した。 (1)に関して、米国大気研究センターが開発したWeather Research and Forecasting (WRF)の実行環境を構築し、WRF内の物理スキーム、ネスティング方法などを調整した。しかし、調整に予想以上の時間を要し、(2)を実施するのに十分な精度が得られず、当初計画を延長してWRFの予測精度向上に取り組んでいる。 (2)に関して、サポートベクター回帰(SVR)の実行環境を統計解析ソフト「R」にて構築中である。しかし、WRFの精度が十分でないため、SVRは未適用である。このため、(3)も未着手である。ただし、予備的検討として予測対象日までの過去数十日の実測値を教師データとする線形回帰によってWRFの予測値を補正した。その結果、予測精度が十分に改善されず、SVR等による補正の必要性を確認できた。一方で、当初の計画を前倒して、衛星画像情報の有効な利用方法の検討に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
WRFを用いた日射予測に関する先行研究を参考に、WRFで用いる物理スキーム、ネスティングの大きさなどを調整したが、先行研究と比較して予測精度が低い結果となった。その理由として、一部の物理スキームに関してWRFが適切に実行できないことが理由と考えられる。そこで、WRFを用いた日射予測に関する実績のある研究機関に指導を仰ぎWRF実行環境の調整を行うとともに、初期条件・境界条件として用いるデータの変更などを行い、予測精度の改善に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、H28年度の未達分を実施する。物理スキームの調整等により、単地点日射量の前日予測に関して、平均絶対誤差(MAE)を25~30%まで向上させる。次に、H28年度に未実施のSVRによるWRF予測値の補正を行い、MAEを20~25%まで向上させる。そして、研究代表者らがこれまでに構築した気象庁のメソスケール格子点値(MSM-GPV)を用いた予測値と比較し、MSM-GPVを用いた予測において精度が低い日に関して、WRFの予測精度を向上するように物理スキーム等を見直す。そして、WRFによる予測値とMSM-GPVによる予測値とを組み合わせ、20%以下のMAEを目指す。 次に、平成29年度の当初計画分として、(4)過去の誤差傾向に基づく加重平均によるアンサンブル予測、(5)気象衛星可視画像・赤外画像に基づく気象場情報の適用を実施する。(4)に関しては、NWPモデルの雲量等の予測値を説明変数として、過去数十日間から予測対象日の類似日を抽出し、類似日全体における各手法における平均予測誤差の逆数を重みとし、各手法の予測値をアンサンブル平均することで、対象日についての予測値を算定する。(5)に関しては、研究代表者らが開発中の気象衛星の可視画像・赤外画像に基づき、数時間先の空間平均日射強度を予測する手法を利用し、衛星画像情報の観点からNWPモデルの予測誤差の傾向を評価する。この情報を(4)における類似日抽出および各予測手法の重みの算定に用いることで、予測精度の向上を図る。感度解析として、衛星画像から算定する雲量等のうちで類似日抽出等に用いる情報の選択、選択された情報の空間分布の評価指標など変化させ、予測精度向上の観点から、衛星画像情報の利用方法を決定する。
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Causes of Carryover |
WRF実行環境構築のため、計画通り計算機サーバを購入した。しかし、WRFによる予測精度向上のための物理スキームの選定等に時間を要し、他のNWPモデルによる予測結果との比較やそれらを統合した予測手法の開発は十分な検討が行えていない。このため、複数のNWPモデルに基づく予測手法開発のための計算機の購入を先送りしている。また、当初の使用計画では、WRFによる数年分の予測結果を保存するためファイルサーバを購入予定であったが、WRFによる計算が調整段階のため、ファイルサーバの購入を先送りした。一方で、WRF実行環境の構築のため、WRFの使用実績のある研究機関を複数回訪問し、WRF実行環境構築についてアドバイスを受けたことにより、旅費が当初よりも増加した。これらを差し引いた結果として、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
WRFによる単地点日射量の前日予測の平均絶対誤差(MAE)を25~30%まで向上できる目途がつき次第、複数のNWPモデルに基づく予測手法開発のための計算機を購入する。また、H28年度の旅費の増加を補うため、H29年度に追加購入する計算機のハードディスク容量を増加し、ファイルサーバを兼ねることとする。
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Research Products
(5 results)