2016 Fiscal Year Research-status Report
ナノ秒極性反転パルス沿面放電を用いた排ガス中有機化合物の高効率分解
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16K06227
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
門脇 一則 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (60291506)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾崎 良太郎 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 准教授 (90535361)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 極性反転パルス放電 / エレクトロスプレー / 排ガス処理 / 脱臭処理 / プラズマ / OHラジカル |
Outline of Annual Research Achievements |
希少金属を用いた触媒技術に頼ること無く高電圧パルス放電処理だけで,排ガス中に含まれる有害物質や臭気性物質を高効率分解する技術の確立を目指す。ナノ秒領域で電圧の極性が瞬時に反転するときの放電現象を利用して,加湿下でも,波高値が低く幅の短いパルス電圧で非平衡プラズマを形成することが本研究の要素技術である。実用化に向けて以下の課題を解決する。 (1)パルスの極短化 (2)加湿下(エレクトロスプレー)でのパルス放電の進展特性の理解 (3)湿式放電処理法による難分解性有機化合物の分解 本申請者は,ナノ秒極性反転パルス電圧を用いたバリア放電処理方法を独自に考案し(特許第4355789号),これを用いた排ガス処理に取り組んでいる。ナノ秒極性反転パルス放電の特徴は,放電開始電圧が低いため,消費電力を低減できるという点である。さらにもうひとつの特徴として,負から正へと急峻な立ち上がりで反転するパルスを印加すれば,水分を多く含む雰囲気中でも放電の進展能力が低下しないという点が挙げられる。ナノ秒極性反転パルスのこの特徴を生かせば,水分を多く含んだ空間での非平衡プラズマ形成により多量のOHラジカルを発生させ,その結果,酸化促進作用を発現させることができるのではないかと考えている。この考えに基づく放電処理装置を構築するまえに,2016年度は,1本の針電極(注射針)で,エレクトロスプレー法による気液混相領域の形成と放電プラズマ進展の両立を実現するための電圧印加方法について検討した。高速度カメラを用いた霧滴の拡散分布観察と暗室下での放電光観察を様々な電圧印加条件下で実施し,気液混相領域と放電プラズマ進展領域を一致させる条件を探した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
静電噴霧処理と極性反転パルス放電処理の両方が可能なプラズマ反応器を製作した。バリアの背面に接地電極としての金属膜を形成するため,さらに比較実験において反応器内に封入する誘電体ビーズ表面に銀をコーティングすることを目的として真空蒸着装置を購入した。プラズマ反応器内に注射針電極1本を配置して,純水を送り込みながら,電圧を印加したときの気液混合領域の広がり方を高速撮影モード (1200 fps)を有するデジタルカメラ (CASIO COMPUTER CO., LTD.,EX-F1)で撮影した,さらに放電光の広がり方をデジタルカメラ(株 Nikon,D-90)による長時間露光撮影により観察した。直流,矩形波交流(立ち上がり時間1 ms,50 Hz),ナノ秒極性反転パルス(立ち上がり時間50ナノ秒)の3 種類のいずれかの電圧を電極間に印加した。 ギャップ長10 mmの電極間に,直流電圧±5 kV を印加したところ,放電光の広がりだけでなく,気液混合領域の広がりにおいても顕著な極性効果が認められた。正針の場合,水の粒径が細かくなり針先から広角で気液混合領域が形成されている。これに対して負針の場合,静電気力により水の微粒子が形成される確率は非常に小さく,比較的大きな水滴が垂直に落下するだけであった。一方,電圧をさらに上昇させると針先からストリーマ状のコロナ放電が観測された。ここで注目すべき点は,放電光が進展すると,キャピラリー先端の局所高電場が弱められるため,静電噴霧効果が失われ,気液混合領域の形成が阻害されているという事実である。すなわち,直流電圧の単独印加では,気液混合領域と放電進展領域を時空的に一致させることは困難であることが明らかとなった。現在引き続き,直流にパルスを重畳することにより,気液混合領域と放電進展領域の時空的な一致を目指して検討を続けている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)直流重畳型ナノ秒パルス電源の設計と製作: パルスの立ち上がり時間を10ナノ秒,半値幅を25ナノ秒以下に抑えることを目標として,これを実現するためのスイッチングデバイスを選定し,パルス形成線路を設計・製作する。半導体スイッチだけでなく,高耐圧水銀リレーやリードリレーの適用も検討する。これだけ急峻で幅の短い高電圧パルスを計測するには,市販の高電圧プローブの周波数特性では不十分であることが予想されるので,線路に計測用の容量分圧回路をあらかじめ組み込んでおくなどの工夫を施す。 (2)エレクトロスプレー法とパルス放電処理法の併用条件の最適化: 注射針電極に直流重畳型ナノ秒パルスを印加することにより,気液混合領域と放電進展領域を時空的に一致させる。これにより新しい湿式放電処理技術を確立する。 (3)湿式放電処理による排ガス処理: (1)と(2)での検討結果を踏まえて,湿式放電処理によるトルエン分解処理実験をおこなう。この方法はオゾンレスの脱臭処理技術としても期待できることから,脱臭能力についても定量的に評価する。本手法の脱臭処理能力と,誘電体ビーズ充填下での乾式放電処理における脱臭処理能力とを比較する。
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Research Products
(2 results)