2017 Fiscal Year Research-status Report
モジュラーマルチレベルインバータを用いた永久磁石同期電動機の高速域センサレス制御
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16K06229
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
花本 剛士 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (30228514)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | モジュラーマルチレベルインバータ / 永久磁石同期電動機 / センサレス制御 / オブザーバ / ヒステリシス電流制御器 / FPGA |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請では単相フルブリッジインバータを多段に組み合わせたモジュラーマルチレベルインバータ(MMLI)を永久磁石同期電動機(PMSM)に適用し、センサレス制御を実現することを目的としたもので、平成29年度は以下の成果を得た。 1.表面界磁PMSM(SPMSM)センサレス起動用オブザーバの構築については、回転子初期位置が0~180度か-180~0度かを知ることができれば直流励磁の極性を切り替えることで逆転をすることなしに指令方向へ回転させることができた。今後、初期位置推定に関して、モータが回らない程度、短時間励磁することで、磁束飽和を利用し、測定電流の大きさの差異から位置推定ができる事例を参考に本システムに組込むことで確認する。 2.初年度構築した実験用MMLI駆動装置を用いてモータ駆動を実現した。新たにMMLIの電圧を階調型にすることで、モータ印加電圧の分解能を上げ、電流リプル低減に貢献できることを示した。階調の比率としては1:3または1:3:9を用いることにより各々電圧を9分割又は27分割できることを実験機にて確認した。実用性を考えると1:3分割が適切であるため、今後はこの電圧比でのセンサレス駆動について検討を行う。 3.モータ駆動以外の適用として静止機器である配電用無効電力補償装置(DSTATCOM)にMMLIを適用する場合について検討を行った。ディジタルマルチバンド・ヒステリシス電流制御器(HCC)を提案し、動作解析を行った。結果として、不平衡負荷や、非線形負荷に対して提案手法により応答性の向上が見られた。さらにFPGAを用いてHCCを構築し、単相回路にて実機での動作確認を行った。静止機器に関しても、2.で示した階調型のMMLIを適用しHCCで駆動する回路をFPGAにて構築することで電圧分解能を向上させ電圧・電流に含まれる高調波歪を低減できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請の目的は,MMLIを用いてSPMSMの起動制御,高速度域高性能センサレス制御方法の確立である。2年目は、2種類の実験用MMLI駆動装置の構築を行っている。1つ目は1年目に購入した制御開発装置を用いた実モータ駆動であり、通常のMMLI以外に階調型MMLIの主回路を作成し、階調比率の大きい電源により3段で27階調の電圧出力を得ることができた。また実用的な2段9分割でのモータ駆動を確認した。2つ目は実用面を考えたFPGAによるハードウェア制御であり、この場合についてもシステムを構築することができた。 並行して行っている静止型機器への応用展開については、制御手法としてフィードバック制御器と変調器を統合したHCCをMMLIに適したマルチバンドとして拡張し、その有効性を確認することができた。さらにディジタルハードウェア制御を実現するためにFPGAを用いた制御系を構築することができた。この装置を用いて単相交流配電経路を模擬することで制御性能を確認できている。 さらにMMLIを用いることで配電系統の電力安定化装置の小型化が可能であること示し制御手法にマルチバンドHCCを用いることで非線形負荷に対する応答性の向上が見られることを示した。本手法のPMSMへの適用も可能だと考えられる。 このようにMMLIを用いた制御系の構築を行うことができており、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度はPMSMの制御を中心に、申請した高速度域センサレス制御の実現を目指す。主回路であるインバータ部については、マルチレベルの多段化+階調型としたことで電圧分解能が向上できたので、この場合のセンサレス制御性能の特性を明らかにしていくことが必要となる。特に階調型の場合には軽負荷や低速域では電圧指令値の誤差が小さくなると考えられるため性能向上を期待している。一方で高負荷時においては多段化による電流リプルの低減が期待できるため、トルク脈動低減が実現できると考えている。また従来のVSIに比べて制御周期を長くしても同等の性能が得られるかについても実機にて確認していく。 静止機器への応用として用いたマルチバンドHCCについてはPMSMへの適用が有用であるかの検討を行う。制御特性はまずコンピュータシミュレーションを用いて確認し、FPGAへの実装についても実現を目指していく。実装に当たっては制御機能をFPGAで、主回路をシミュレータで行う手法や、設計した回路をブロック化して汎用性を持たせる手法が開発されており、2年目に静止機器での設計で使用しているため、これらをモータ制御設計にも用いることで開発効率を向上させる。 上述のように進めていくことで研究課題を実現すると共にモータ制御性能の更なる発展を目指していく。
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Causes of Carryover |
モジュラーマルチレベルインバータ製作のため、必要な部品を購入したが、消耗品の一部に残金が生じた。 差額については、引き続き作成、改良する実験用MMLI駆動装置を構築するために必要な部品の購入に使用する。平成30年度分助成金については、MMLIを用いたシステム構築に用いる回路作成費及び研究成果公表用の旅費、学会参加費としての使用を計画している。
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Research Products
(4 results)