2016 Fiscal Year Research-status Report
湿潤汚損面における局部放電の放電形態と発光スペクトルおよび電流との関係
Project/Area Number |
16K06231
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山下 敬彦 長崎大学, 工学研究科, 教授 (50182499)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古里 友宏 長崎大学, 工学研究科, 助教 (70734002)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 汚損沿面放電 / 局部放電 / 発光スペクトル / 放電形態 |
Outline of Annual Research Achievements |
ろ紙に起因する不要なスペクトルを避けるためシリカろ紙に変更し,セラミック板上に1 cmの間隙を空けて対向させて配置し,電解質水溶液で湿潤させ,交流電圧を印加して滞留性局部放電を発生させた。窒素分子の発光スペクトル(336.6 nm)とアークの特徴的なスペクトルである電解質の発光スペクトル(ナトリウム: 589.3 nm,マグネシウム: 518.1 nm,カリウム: 766.8 nm)を観測波長として選んだ。モノクロメータでこれらの波長を選択し,光電子増倍管を用いて電気信号に変換し,電圧・電流波形と同時に観測した。また,カメラで発光の様子を撮影した。 3種類の電解質に対して,直列抵抗を3段階で変化させて観測を行った。測定の結果,次のことを明らかにし,一部を国内外の学会で発表した。 1)パルス状電流が現れるときにはパルス状の発光スペクトルが,連続電流の場合には継続した発光スペクトルが現れた。これらは,発生時刻が一致しており,いずれのスペクトルでも同様であった。 2)放電電流が比較的小さい(直列抵抗が大きい)場合,いずれの電解質でもパルス状電流が支配的であり,電解質に比べて窒素の発光スペクトルが強かった。発光の様子からは,放電の根元で電解質に起因する弱い発光が観測されたが,放電路の大部分は窒素の発光であった。 3)放電電流が大きくなるに従い,電圧の半サイクルの中で継続した電流が現れ,いずれの場合にも電解質の発光スペクトル強度は徐々に大きくなった。一方,窒素の発光スペクトル強度は大きく変化しなかった。発光の様子からは,放電電流が大きくなるに従い放電の根元から中央部に向けて電解質に起因する発光が広がった。 以上のように,放電電流の大きさによってグローの性質を持つパルス状の放電とアークの性質を持つ持続的な放電の割合が時間的にも空間的にも変化することを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3種類の電解質に対して,直列抵抗を3段階で変化させて滞留性局部放電を発生させ,窒素ならびに電解質に起因するスペクトルの時間変化,電圧・電流波形および放電発光の観測を行った。測定の結果,放電電流の大きさによって電流パルスからなるグローの性質を持つ放電とアークの性質を持つ持続的な放電の割合が時間的にも空間的にも変化することを明らかにした。局部放電の特性と関連して,ナノ秒パルス電圧印加の水上沿面放電の回転温度と振動温度の計測を行い,水溶液面で生じる放電の特性を明らかにした。これらの結果の一部を国内外の学会で発表した。 以上のように,当初の計画していた内容をほぼ終了し,成果の公表も行った。そのため,おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の計画通りに研究を進める。平成29年度は次の項目を実施する。 1.スペクトルと電流・電圧波形の評価と追加観測 窒素および電解質に起因するスペクトルの時間変化と電流・電圧波形および放電の発光特性を詳細に検討し,放電形態に関する更なる検討を行う。詳細なデータが必要な場合は追加の実験を行う。得られた結果をまとめて学会での発表の申請を行う。 2.シュリーレン法による密度変化の観測 パルスレーザを用いたシュリーレン法による密度変化の観測を行う。パルスレーザを用いることで,電圧・電流波形の任意の時点における密度変化の観測が可能である。特に,これまでに得られたパルス状の電流ならびに連続電流と同期させて観測することによって放電形態の変化を密度変化の観点から明確にする。装置の製作・組み立てに時間を要すると考えられることから,次年度までずれ込むことも考えられる。そこで,平行して次の実験を進める。 3.電解質水溶液の抵抗率を変化させた場合のスペクトルと電流・電圧波形の観測 電解質水溶液の抵抗率を変化させてスペクトルと電流・電圧波形の観測を行い,放電形態の変化の要因を探る。平成29年度は時間の関係から,放電形態が大きく変化すると考えられる領域に絞り実験を行う。
|
Causes of Carryover |
予定していた物品等の購入費が若干安かったため小額の残高が発生した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品(消耗品)購入に使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)