2017 Fiscal Year Research-status Report
湿潤汚損面における局部放電の放電形態と発光スペクトルおよび電流との関係
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16K06231
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山下 敬彦 長崎大学, 工学研究科, 教授 (50182499)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古里 友宏 長崎大学, 工学研究科, 助教 (70734002)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 汚損沿面放電 / 局部放電 / 発光スペクトル / 放電形態 |
Outline of Annual Research Achievements |
3種類の電解質に対して,直列抵抗の値を前年の実験条件に加えてさらに3段階で変化させて観測を行った。合計6段階の直列抵抗の変化に対して,次のことを明らかにし,それらの一部は国内の学会で発表した。また,これまでの成果から,局部放電の電流と放電の形態との関係を明らかにしたので,それらをまとめて学会論文として公表した。得られた主な結果は以下のとおりである。 (1)電流の大きさによって,グローの性質をもつパルス状の放電形態からアークの性質を持つ連続的な放電状態へ変化し,その境界における電流値はおよそ数mAである。電流の値は,一般にドライバンドアークの開始電流として知られている値と同程度であり,ドライバンドアークの開始は連続的な局部放電の開始を意味することを明らかにしたことは極めて意義が大きい。(2)グローの性質をもつパルス状の放電形態からアークの性質を持つ連側的な放電状態への変化の境界の電流値は電解質に依存せずほぼ一定である。(3)電解質に起因する放電の発光スペクトルの強度は電流値の増加とともに増加するが,空気の成分である窒素に起因する放電の発光スペクトルの強度は電流値に依存せずほぼ一定である。(4)電解質に起因する放電の発光スペクトルと空気の成分である窒素に起因する放電の発光スペクトルの電流値に対する変化は電解質によって若干異なる。これらのことは,放電の発光による影響が電流の値によって異なるとともに,電解質の種類にも依存することを示唆している。(5)連続放電の電流値は電解質に依存せず,直列抵抗の増加とともに減少する。一方,パルス状放電の電流は見かけの電流であるために,そのピーク値は意味をもたない。(6)レーザシュリーレン法により局部放電を観測した結果,放電の密度変化を明確に捉えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3種類の電解質に対して,前年に加えて直列抵抗の値をさらに3段階で変化させ,窒素ならびに電解質に起因するスペクトルの時間変化,電圧・電流波形および放電発光の観測を行った。その結果,電流の大きさによって,グローの性質をもつパルス状の放電形態からアークの性質を持つ連側的な放電状態へ変化し,その境界の電流値は電解質によらずほぼ一定であることを明らかにした。また,レーザシュリーレン法により放電部分の密度変化を観測することができた。さらに,これらと関連して,ナノ秒パルス電圧印加時の水上沿面放電の電圧・電流波形のシミュレーションを行い,放電部分と水溶液部分の接触状態のモデル化を含む回路モデルを開発し,国内外の学会で発表した。 以上のように,当初の計画内容をほぼ終了し,成果の公表も行っているので,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
レーザシュリーレン法による観測を継続するとともに,電解質の抵抗率を変化させた検討を行う予定である。加えて,パルス状放電と連続放電の境界となる電流値は電解質に依存しないが,電解に起因する放電の発光スペクトルと空気の成分である窒素に起因する放電の発光スペクトルの電流値に対する変化が電解質によって若干異なることを明らかにしたので,それらをまとめて学会論文として投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
価格変動が主な要因である。次年度,物品費として使用を予定している。特に,YAGレーザは,当初250万円を予定していたが,それよりも十数万円ほど安価に購入することができた。
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