2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K06232
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
川越 明史 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (40315396)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 高温超伝導変圧器 / 高温超伝導コイル / 異常監視 / 異常診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,高温超伝導変圧器巻線で発生する異常の程度と本研究課題で提案している測定方法で観測される測定信号の関係を明らかにして,異常の程度を診断できるようにするために,実験と解析を行った。 実験では特に巻線の状態を診断するために,まず,状態の指標として線材の「臨界電流」を推定することにターゲットを絞った。これは,実験的にサンプルの温度を正確に測定することが困難であったためである。また機械的な劣化などの異常にせよ,温度上昇などの異常にせよ,高温超伝導線材の異常は常に臨界電流の低下として現れるので,異常の指標を臨界電流に絞ったことに問題はないと考えている。次に,臨界電流を測定信号から推定する手法を提案し,実際にその手法で臨界電流が推定できるかどうかを,実験的に検証した。ここでは,まず,単純な空芯の1ターンコイルをサンプルコイルとして使用した。冷却するための液体窒素を自然蒸発させ,サンプルの温度を上昇させることによりサンプルコイルに異常を発生(臨界電流を低下)させた。この実験の結果,提案方法により,巻線の臨界電流値をよく推定できることを確かめた。この実験は,Bi-2223テープ線,YBCO線のいずれでも実施し,どちらでも同様の手法で臨界電流を推定できることがわかった。 解析では,テスト用Bi-2223変圧器において観測されている異常時の測定信号と交流損失の関係を調べるために,巻線の電磁界解析を行い,交流損失解析を進めた。巻線に印加される磁界解析まで行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初,巻線の異常を温度で評価するということを計画していた。しかしながらサンプルの温度を正確に測定することが困難であったために,異常の程度を測る指標を,臨界電流とすることにした。これによりやや計画に遅れが生じたものの,以下に示すように,概ね計画を遂行できた。 本システムで特に困難な点は,測定信号の変化から巻線状態の変化のみを推定する点である。これは,交流損失に起因した信号を測定するという本測定法の原理上の要因から,測定信号が巻線の状態と磁界環境の二つのパラメーターに依存して変化することに依る。H28年度は,この課題の解決に特に注力し,磁界環境の変化による測定信号の変化をキャンセルする手法を見出した。さらには,そのキャンセル後の信号から,巻線の臨界電流値を推定する手法を提案し,その有効性を実証している。具体的には,1ターン空芯コイルの実験において,臨界電流の推定が可能なことを,Bi-2223テープ線とYBCO線のどちらでも実験的に示している。このことから,本研究課題における大きな課題を一つクリアしたと考えられる。ピックアップコイルの小型化に関しては,まだ充分な検討を進められていないものの,現在の1ターンコイルを用いた実験と解析を進めることにより,ピックアップコイルのサイズの影響を理論的に評価する手法を開発することが可能であるため,この点はH29年度以降で特に問題ない。 今後は,外部磁界中でも臨界電流推定が可能かどうかについても確かめる予定である。こちらは実験準備段階であるものの,実験準備はほぼ整っており,H29年度前半には外部磁界中での同様の臨界電流推定が可能なことを確かめられる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,まず1ターンの空芯コイルサンプルを外部磁界マグネット内に配置し,外部磁界印加時に同様の手法で臨界電流の推定が可能なことを,実験的に示す。また,現在設置している電界測定用ピックアップコイルとサンプルコイルとの距離を変化させ,本測定システムが巻線からの距離によってどのような影響を受けるかを明らかにする。さらに1ターンコイル内の電流分布を解析し,本測定システムで測定される信号を再現できるようにする。 次に,複数ターンのサンプルコイルを作製し,その異常発生時の測定を行う。また,開発した数値解析コードを用いて,複数ターンコイルの測定結果の解析が可能な解析コードに拡張する。 またその解析コードにより,実験結果を再現できることを確かめる。 さらに,有限要素法解析ソフトを用いて,変圧器巻線に印加される横磁界を詳細に解析し,それを元に交流損失を求める。また変圧器の短絡試験を行い,巻線の交流損失を実測し,予測通りの交流損失が発生していることを確かめる。
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Causes of Carryover |
H28年度は,当初,巻線の異常を温度で評価するということを計画していた。しかしながらサンプルの温度を正確に測定することが困難であることがわかった。このために,実験計画を微修正し,異常の程度を測る指標を,臨界電流とすることにした。このために,H28年度実施予定であった外部磁界印加時の実験まで実施できなかった。具体的には,実験装置の設計変更のために購入部品などの仕様策定まで完了させることができず,購入をH29年度に見送らざるを得なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度前半に,外部磁界印加時の実験準備を完了させる予定である。実験に必要な温度計,抵抗器などの他に,実験用電気部品を購入する。
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Research Products
(3 results)