2017 Fiscal Year Research-status Report
機能性プラスチック導入による高温超伝導コイル耐クエンチ性向上と巻線部高電流密度化
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16K06238
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
高尾 智明 上智大学, 理工学部, 教授 (30245790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮城 大輔 東北大学, 工学研究科, 准教授 (10346413)
塚本 修巳 上智大学, 理工学部, 客員教授 (30017975)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | クエンチ保護 / 超伝導コイル / 熱的安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では熱伝導率が従来のコイル構成材であるガラス繊維強化プラスチック(GFRP)に比べ1桁以上高く,また低温で負の熱膨張係数を持つプラスチックなどの機能性プラスチックを高温超伝導コイルの巻線構造に導入した。 熱的安定化の向上に関しては,構造材が膨張してコイル巻線との接触が良好になり構造材への伝熱が増加するため,安定性向策として有効であることを評価した。まず極低温領域にて熱伝導率を実測すると数W/mKであり,これはGFRPの熱伝導率よりも20倍以上高い。次に機能性プラスチックを室温から液体窒素温度まで冷却させた際の熱膨張係数を実測すると,4,000με近く膨張する結果が得られた。同条件でGFRPの熱膨張係数も測定したが2,000με近い収縮であった。そして,コイル巻線構造を模擬した試験装置により伝熱特性を評価し,これをモデル化して3D有限要素法を用いて伝熱を数値的にシミュレーションした結果,構造材である機能性プラスチックとコイル巻線との接触面圧が増加するため,両者の接触熱抵抗が約35~40%低減することが示された。これらの結果より,この機能性プラスチックの使用はクエンチ保護策として有効であると考えられる。 クエンチ保護に関しては,Bi2223超伝導線を用いたエポキシ含浸コイルを作成し,コイル巻線部のホットスポット温度とクエンチ保護の関係を実験を中心に検討した。その結果,実験条件によって差異があるものの約500Kまでホットスポット温度が上昇するとコイルに劣化が生じた。その理由として,巻線部における局所的な温度上昇により超伝導線が伸びようとして,周囲に拘束されているため局所的な曲げが発生する。それにより機械的なダメージを受けてコイル性能が低下すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
機能性プラスチックの負膨張係数および熱伝導率を極低温において系統的に評価でき,さらにコイル巻線の一部を用いた試験装置により,実際に高温超伝導線との接触における伝熱特性を定量的に評価できているため。 またコイル保護の実験により,500K付近でのコイル焼損試験を行うことにより,温度上昇の上限を見つけ出すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
コイル導体の大電流容量化および巻線部高電流密度化に向けて,引き続きコイルの安定性向上の検討を行う。機能性プラスチックとコイル巻線部との接触面圧を変えながら安定性評価試験を行い,機能性プラスチックの有用性と適用限界などを実験的に明らかにする。
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Causes of Carryover |
作業が効率的に済んだため,学生バイトの雇用が計画より少なかったことが一つの理由である。また,計画していた学会参加を見合わせたため,旅費の執行が計画より少なかったことも理由である。 次年度は,得られた研究成果を積極的に公表する予定であり,学会参加等を行う。
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Research Products
(4 results)