2017 Fiscal Year Research-status Report
次世代高電圧直流送電を可能にする液中アークプラズマを用いた新しい遮断器の基礎研究
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16K06243
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
新海 健 東京工科大学, 工学部, 教授 (00758295)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 液体アーク / アーク抵抗 / 導電率 / 圧力上昇 / 直流遮断 |
Outline of Annual Research Achievements |
高電圧直流送電(多端子送電網)の主回路遮断器への適用を目指し、密閉容器の液体中アークの高いアーク抵抗を活用した限流コンポーネントの基礎研究を実施している。従来の交流用高電圧ガス遮断器のアーク抵抗のmΩオーダーに対し、直流限流には100Ω近いアーク抵抗が必要である。 1.アーク近傍を安定化チューブで取り囲んだ閉鎖系の液体中アークプラズマ実験を行い、電流と熱流体的な物理特性及び電気的な物理特性の詳細把握を行った。コンデンサバンクのパルス電流により直流状過渡アークを発生させ、半導体トランスデューサ―により内部圧力上昇を測定した。その結果、安定化チューブ内ではアークにより発生した圧力波が伝搬し35MPa以上の圧力となっていることがわかった。しかし、この圧力は一時的なもので、チューブ外に伝搬することで低下した。圧力が極めて高い期間はアークが絞られアーク抵抗の上昇がみられることから、容器を完全密閉化し、高圧力を維持できれば直流限流に必要な100Ωの抵抗が得られる可能性がある。 2.実験で測定した電流とアーク電界特性から数学的なアークモデリングを行い、ハイブリッド型遮断器の数値シミュレーションを実施した。液体中アークプラズマによる限流装置と真空遮断器を直列に接続し、直流送電系統で地絡事故が発生した場合の遮断現象シミュレーションを実施した。その結果、実験値をベースにした液体中アークプラズマの抵抗では、限流効果が十分でなく、真空遮断器での遮断が難しいことがわかった。アークプラズマ抵抗を10倍程度とすると、75ms程度で限流遮断が可能となることが分かった。 以上の結果から、完全密閉化により高圧力を維持し、現状の10倍程度のアーク抵抗を得ることで、限流遮断を実現できると考えられる。ただし、遮断時間は75msよりさらに短くする必要があり、安定的に高いアーク抵抗を得られる条件調査を進める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画では、平成29年度に、光ファイバーを用いた発光分光分析によるアーク温度測定を予定していた。実施したものの、分光装置の時間分解能が不十分で、過渡的である液体中アークの温度時間変化を取得することができなかった。時間分解能の高い分光装置を準備し、平成30年度に再度実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
時間分解能の高い分光装置を用いることで、液体中アークの温度時間変化を測定する。この結果と、平成29年度までの物理特性の取得データ、シミュレーション結果を基に、限流ユニットの設計・製作を行う。真空遮断器との組み合わせで、基礎的な遮断検証試験を行う。電源は750Vのコンデンサバンクと20kVのコンデンサバンクを組み合わせた合成試験回路による。また、80kVの高電圧発生回路も用いて、遮断後に電圧を印加することで、遮断性能検証を実施する。
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Causes of Carryover |
平成28年度の未使用額215,537円は、平成29年度に実験回数を増やし、そのためのハイドロフルオロエーテルの追加購入にあてる予定であったが、実験において分光器の時間分解能が不十分であることが判明したため、実験回数の増加を取りやめた。未使用分の213,483円と、平成30年度予算とを合算して、時間分解能が高い分光装置の購入にあてる計画である。
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