2016 Fiscal Year Research-status Report
静電吸着インクジェット法によるCNT-Siヘテロ接合太陽電池のCNT直径分布制御
Project/Area Number |
16K06248
|
Research Institution | Asahikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
中村 基訓 旭川工業高等専門学校, システム制御情報工学科, 准教授 (50435963)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | カーボンナノチューブ / 静電吸着複合法 / インクジェット印刷 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,インクジェット法による金属ナノ粒子の均一塗布を実現するため,CNT成長用触媒金属ナノ粒子とSiO2基板に対して静電吸着複合法の適用可否から検討を開始した.CNT用触媒金属としては,これまで実績のあるCoを選定し,溶媒としては系の複雑化を回避するため,水を溶媒とする金属ナノ粒子分散液を準備した.採用した分散液はその製法上の制約からCoナノ粒子の粒径分布の中心が数10nmであり,CNT成長に最適な粒径(数nm)より若干大きいサイズとなっている.この分散液を用い,ナノ粒子表面にPDDA,PSSといった高分子を吸着させ,粒子表面をプラスもしくはマイナスに帯電させる液相でのプロセスを旭川高専の設備を用いて実現した.SiO2/Si基板表面についても同様のプロセスでナノ粒子と逆極性に帯電させた後,一度基板を乾燥させ,帯電済みのナノ粒子分散インクをインクジェット法にて基板上に塗布した.未処理のサンプルと比較して,静電吸着法により塗布されたナノ粒子では,コーヒーリング現象が低減し,均一に印刷されていることが確認できた.さらに,印刷された触媒ナノ粒子基板をアルコールCVD処理することにより,CNTが生成されていることをラマン分光法および電子顕微鏡の観察により確認した.インクジェット法では,同一箇所に連続して複数回インクを塗布することで,ナノ粒子の印刷領域における密度制御が容易となるが,本実験においても1回から5回まで印刷回数を増やすことで,CVD後のCNT密度が高くなることも確認した.今年度卓上温調ブースを導入したことにより,インクジェット塗布時の周囲環境(温度・湿度)の制御が可能となり,実験の再現性も改善された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CNT触媒用ナノ粒子の電荷付与処理の手法は確立済みであり,基板による静電吸着複合化により,未処理の場合と比較してナノ粒子の均一印刷が可能であることも確認できた.帯電処理に用いているCoナノ粒子水分散液中のナノ粒子の粒径が比較的大きく,CNT成長に適した分布に最適化されていないことから,想定よりも低い粒子密度になっており,結果としてCNTの成長密度も低い.さらに,静電吸着複合プロセス中に,CNT成長に適した小さな粒径のナノ粒子について,若干のロスが生じている可能性があることがわかり,低密度化の一因であると考えている.ただし,インクジェット塗布のメリットの一つでもある複数回の塗布により,ある程度の密度制御(高密度)印刷ができているを確認した. インクジェット塗布の安定性を改善するため,本予算において卓上温調ブースを導入した.これによりインクジェット装置周辺の温度・湿度環境の制御が可能となり,実験室環境によらずインクジェット塗布実験の再現性が改善された. H28年度後半に実施予定であったスペーサナノ粒子を用いた密度制御(低密度化)については,現状の印刷後のナノ粒子密度において不要であることから,スペーサナノ粒子を用いた密度制御プロセスはH29年度以降に実施することとした.現時点では,スペーサナノ粒子としてアルミナ粒子を検討しており,アルミナ粒子に対する静電吸着複合化プロセスはH28年度中に実施・確認済みであり,SiO2/Si基板への均一吸着もできている.
|
Strategy for Future Research Activity |
H28年度の実験結果から,CNT触媒用ナノ粒子の静電吸着複合プロセスにおいて,CNT成長に適した粒径の小さいナノ粒子のロスが生じている可能性があることが判明した.そこで,静電吸着複合プロセスを見直し,最適粒径を持つナノ粒子のロスの低減を目指す.さらにスタートマテリアルであるナノ粒子水分散液についても検討を開始し,金属種や粒子分布の異なる分散液の検討や金属塩水溶液の適用を考慮し,CNTの高密度かつ均一成長を実現する. ナノ粒子の高密度化と並行して,CNT-Siヘテロ接合太陽電池の試作プロセスの検討を進める.具体的には新たにSi基板を用いた複合化プロセスの検証をした後,ナノ粒子のインクジェット塗布およびCNT生成を実施する.電子顕微鏡およびラマン分光法によるCNTの成長状態評価をおこなった後,太陽電池用電極を形成し,太陽電池性能について評価する.粒径分布や金属種の異なる分散液を用いて形成したCNT-Si太陽電池デバイスを試作し,各パラメータに対する発電性能の依存性を見出す. また,粒径分布の異なるデバイスについて,CNTの成長モード(root成長とtip成長)の評価を行い,CNT-Siヘテロ接合状態と太陽電池性能の関係について検討をすすめる. 高密度化プロセスの確立後には,H28年度実施予定であったスペーサナノ粒子を用いた印刷領域における密度制御の実験を開始する.スペーサナノ粒子サイズおよび分散液濃度をパラメータとして,触媒ナノ粒子塗布前に基板に配置し,静電気力による斥力効果を用いて密度制御の範囲について検証する.
|
Causes of Carryover |
H28年度秋に出席を予定していた学会が,学内業務の関係で出席できずその分の予算が残った.また,その他経費の支出がなかったことから8万円程度の残額を次年度に繰り越すこととした.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度は新たに異なる粒径のナノ粒子分散液の購入をしなければならず,分散液の価格が数万円/mlと高額であることもあり,分散液の購入に当てることを検討している.
|
Research Products
(2 results)