2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K06252
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Research Institution | National Institute of Technology, Toyama College |
Principal Investigator |
水本 巖 富山高等専門学校, 電子情報工学科, 教授 (40239257)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小熊 博 富山高等専門学校, 電子情報工学科, 教授 (40621909)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 鉛蓄電池 / 再生 / ディープサクル / CCA |
Outline of Annual Research Achievements |
エネルギー備蓄用ディープサイクル型鉛蓄電池に対して、放電時間の長短とインピーダンス変化との関係を明らかにした。測定システムは、充電完了電圧、放電電流および放電終了電圧が任意に設定できて、自動的に充放電を繰り返しながらインピーダンス測定ができるシステムを構築した。本システムを用いて、サルフエーション劣化による放電時間の推移とインピーダンス変化の関係を明らかにした。インピーダンス測定回路は、周波数掃引と振幅制御可能な発振器で構成される交流定電流源と電圧差動アンプから成り立っている。交流電圧と定電流の関係(インピーダンス=定電流/印加微小交流電圧)から、インピーダンスを測定する。交流信号を用いているので同期検波回路は、cosΘの位相差がゼロの場合は出力が1となり、位相差が大きくなるに従い出力が小さくなっている。ディープサイクル型鉛蓄電池に対して、放電時間が短くなるにつれてインピーダンスが高くなっていくことが分かった。これはエンジン始動型鉛蓄電池の場合も当てはまるが、ディープサイクル型の場合、通常の充放電の繰り返しだと劣化に至るまで6か月程度要するので、今回は放電後12時放置状態で劣化を促進させて実験を行った。これらは、車載用鉛蓄電池ではライトをつけっ放しでエンジンを切った状態、もしくは長期間乗車せずに自己放電で蓄電池を上げてしまった状況に酷似している。これを数回行うと、蓄電電池の活物質の反応が悪くなりいわゆる”バッテリーあがり”の状態になる。ディープサイクル用の電池においても実験では数回の充放電・放置後で、インピーダンス値は数ミリオームが上がり、劣化の状況が確認できた。一方、本研究で提唱している間断充電方式(定電流+たんパルス放電+インターバル)では、十分劣化が抑えられることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
28年度は、インピーダンスおよび繰り返し充放電自動測定システムの構築を目指しており計測システムは予定通り完成した。また本システムにより実験を行うことにより、精度も十分であり、性能評価的にも優位性を確認した。測定対象の電池もエンジン始動用から、ディープサイクル用電池まで幅広い電池の種類に対応することからも汎用性を確認できた。また再現性は、製造メーカーが同じであり型番が同じであれば誤差範囲内での測定になり、再現性も確認できた。実験結果として、エンジン始動用電池が適応していた放電時間と内部インピーダンスの関係も、ディープサイクル型の蓄電電池にも適用することが確認できた。そのため間断充電による鉛蓄電池再生方法に確信がもてた。あとは、電池容量および電池用途(エンジン始動型かディープサイクル型か)に応じて、定電流電流値、インターバル、一時放電電流値、放電時間の設定パラメーターを最適化すれば、鉛蓄電再生システムの構築に結び付けることができるため、おおむね順調に推移していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は28年度の研究実施計画が順調に推移したので研究計画に基づき、鉛蓄電池再生システムの構築を行う。再生システムは、間断充電による回復システム、定電流充電と定電圧充電を組み合わせた蓄電池充電モード、放電電流、放電終始電圧値が定められる放電モードの3パターンが実施できる装置の開発・運用を行う。なお本装置は、232Cシリアルケ-ブルでパソコンとつなげ遠隔操作が可能な様に開発を行う。そのためインターネットによるリモート蓄電池監視、遠隔地からの操作、設定および制御プログラムの変更が可能な様に開発を行う。 本装置を用いて種々の蓄電池の再生を行い各種電池の最適回復パラメーターを設定する。なお12V電池単体および直列に接続された24V鉛蓄電池群および48V鉛蓄電池群に対しても回復効果を検証する。これら電池内部のインピーダンスを測定して、回復効果の定量的評価、寿命予測の構築などより実用に近い形で評価・運用することを目指す。
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Causes of Carryover |
実験が当初の予定より早く進み基礎データの取得をスムーズに完了させることができたため、時間のかかる鉛蓄電池回復装置の開発に着手した。実際、装置が完成しても有効性を確認するまでには、劣化実験、回復実験、パラメータの最適化と物理的には実験、観測、パラメータのフィードバック修正、最適化と1年ほどの観測時間を要する。そのため装置の完成を早めることにより、先行して実験データを取得し、本来の研究計画を遂行するために前倒し請求を用いて完成させた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実際に通常の家庭もしくは防災時に使うであろう電化製品の使用を前提としたエコハウスで、種々の鉛蓄電池ユニットおよび100V電源供給ユニットを使用し、数か月間使用した場合の劣化度合いを調べて電源使用量と劣化程度の関係を明らかにする。次に開発した装置を用いて回復実験を行う。その際、劣化程度と回復率の関係を明確にするために初期劣化と中程度劣化での回復率を評価する。それぞれの劣化程度の定義は、満充電にした際のインピーダンスの変化である。すなわち、初期インピーダンスからの増加度で1%未満を初期劣化、3%程度を中程度劣化約10%程度を深度劣化と位置づけている。深度劣化は回復がむつかしい場合が多く、回復してもすぐ劣化するため、これらの劣化後の寿命判定も視野に入れた実験を行う予定である。
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